研究課題/領域番号 |
19K09574
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
辻井 雅也 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (40444442)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | デュピュイトラン拘縮 / マイクロRNA / 筋線維芽細胞 / マイクロリボ核酸 / 線維化 / 手外科 / デュプイトラン拘縮 |
研究開始時の研究の概要 |
最初の2年間は切除したデュピュイトラン拘縮索でのmiRNAの評価と、in vitroにて予備実験で見出した標的miRNAのマイクロリボ核酸治療の効果検討を並行して行う予定である。実験は加藤大学院生と飯野実験助手と行う。また3年目には、デュピュイトラン拘縮の新規動物モデルの確立を目指して動物実験を行う。ヌードラットにデュピュイトラン拘縮索由来の細胞を接種することから開始するが、上手く作成できない場合にはコラーゲンスポンジに三次元培養後に移植することや成長因子を付加することを考えている。またモデル確立後にはin vivoでのマイクロリボ核酸治療の効果を検討する。
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研究実績の概要 |
デュピュイトラン拘縮(DD)は手掌腱膜の肥厚と短縮により手指屈曲位を呈する原因不明の疾患である。治療は肥厚した腱膜の外科的切除か、コラゲナーゼ注射による酵素溶解療法がある。しかしいずれの治療法でも、比較的高い再発率が報告されており、実際に注射後5年で47%の再発が報告され、再発の克服はDD治療の次の課題である。 DDの病態は拘縮索に認める特殊な線維芽細胞である筋線維芽細胞(myofibroblast: MF)が主因と考えられており、本研究の目的はこのMF分化を抑制する新たな治療方法を検討することである。MFは拘縮索の中でも結節部に多く存在するが、その起源は束部にもあると考えている。その理由として手術では結節部は必ず切除するため、再発には切除腱膜の断端で線維芽細胞の活性と分化が必要と考えるからである。先行実験で線維化促進因子であるthrombinが結節部だけでなく束部由来再細胞でもMF分化の促進を認め、また遊走能やROS産生も増大させることも示した。そこで治療標的の一つとしてthrombinの抑制に関して実験を行った。 また先行実験で遺伝子調節に重要なmicro RNA (miRNA)に対してarray解析をDD拘縮索の結節部と束部、また正常コントロールの3群で行い、miR-204とmiR-21の2遺伝子を同定した。この2遺伝子のうち、miR-21は一般のmiRNAとは異なり、高発現で疾患を促進する特殊なmiRNAでantagomir(拮抗遺伝子)の投与での間質の線維化抑制や心機能改善が報告されている。miR-21のDD拘縮索での発現を評価し、miR-21のantagomir投与でのMF分化抑制効果について実験を行ってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitroの実験をDupuytren拘縮(DD)索の結節部と束部由来細胞を用いて行った。Thrombin 1U/mlを添加して、Western blottingでα-SMA発現が束部由来の細胞では約3倍に増加した。これがargatroban投与により有意に抑制された。またscratch assayでの遊走能やDCF-DA assayでROS産生の増加を抑制することも示し、thrombin阻害が再発予防や病態進行を抑制する可能性を示した。またthrombinの起源は外科的治療や注射治療後では出血に伴うと考えられるが、慢性期では手掌に繰り返される慢性刺激による組織因子(tissue factor: TF)の関与を考えた。TFは腱膜など結合組織での発現は乏しいと報告される。5例の切除標本で免疫組織化学的評価を行い、4例(80%)で結節部の血管周囲や間質での発現を確認できた。 miRNAの解析はmiR-21の発現と局在をin situ hybridization(IHS)にて評価した。miR-21は主に結節部の細胞で発現しており、細胞数をカウントしたところ81.3%の細胞で発現していた。また束部でも15.9%に陽性細胞を認めた。miRNAのオンラインデータベースではTGF-betaのtarget scoreは98/100で、TGF-betaに関連した作用が考えられる。In vitroにてDD拘縮細胞にTGF-beta投与を行い(n=5)、24時間でα-SMA発現をWestern blottingで確認したところ、束部由来細胞では約11倍、結節部由来細胞でも約8倍と有意に増大した。miR-21のantagomir(拮抗遺伝子)導入により、α-SMA発現は結節部でコントロールの約6倍、束部では約5倍まで有意に抑制した。
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今後の研究の推進方策 |
一昨年はmiR-21のantagomir(拮抗遺伝子)の導入が困難であったが、昨年は手技の向上もあり、安定した実験が可能であった。当初はmiR-21 antagomirの効果をWestern blottingによるα-SMA発現の評価だけでなく、MTS assay、scratch assayも評価する予定としていたが、筋線維芽細胞に特異的なα-SMA発現の有意な抑制を示すことができたため、miR-21 antagomirの購入資金のこともあり、本年は今回の結果までで論文化を開始する。 また細胞レベルでのthrombin単独での病態への影響と、thrombin阻害剤であるargatrobanの筋線維芽細胞(MF)への効果、切除標本でのthrombin発現に関しては結果をまとめて引き続き論文等での公表を継続していく。
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