研究課題/領域番号 |
19K09627
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大月 孝志 岡山大学, 保健学研究科, 客員研究員 (10534802)
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研究分担者 |
古松 毅之 岡山大学, 大学病院, 講師 (20432651)
西田 圭一郎 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (80284058)
廣畑 聡 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (90332791)
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研究期間 (年度) |
2022-11-15 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | がん / エクソソーム / EMT / CAF / メカノセンサー / マトリックス / 軟骨細胞 / miRNA / 変形性関節症 / 細胞外小胞 / 炎症性サイトカイン / 軟骨 / メカニカルストレス / 細胞外マトリックス |
研究開始時の研究の概要 |
変形性関節症では関節軟骨が損傷し、痛みが生じ生活の質が低下する。 強いメカニカルストレス(MS)は関節軟骨の成分を分解する酵素を誘導する。これらの酵素が軟骨を分解し変形性関節症を発症・進展させると考えられてきた。 しかし、我々はMSは条件によっては軟骨を保護する方向に働くことを見いだしている。この作用はメカノセンサーを介した直接効果だけではなく、MSがもたらす細胞間の情報伝達機能を担うエクソソーム(EVs)という小胞の変化による可能性が考えられる。サイトカインで誘導された軟骨破壊性EVsから軟骨保護性EVsへの変化をmiRNAやmRNAあるいはタンパク解析によって行う。
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研究実績の概要 |
大腸がんの悪性に関わる因子の探索を実施した。これまでの当該分野での研究でTumor buddingやpoorly differentiated clustersなどの形態学的特徴とがん悪性度が相関していることが明らかになっている。また、Cancer associated fibroblast(CAF)もまたがん悪性度と関連があることが多数報告されている。残念なことに恐らくは結果であって原因ではない。悪性度を示す要因、メカニズムを解明する必要がある。そこで形態学的に予想される悪性度の低い方からA、B、Cにグレード分けし、それぞれのCAFの性質を解析することとした。CAFにはがん細胞に対して作用することが報告されておりCAF CはCA Aと比較して強いがん細胞の増殖能を有する。この作用として増殖因子などの液性因子の関与も考えられるが、CAFの産生するエクソソームのがん細胞に及ぼす作用を検討した。CAFの培養上清からエクソソームを回収する方法を改良し、がん細胞に比べて産生するエクソソーム量の少ないCAFからもエクソソームが安定して回収できるようにしました。CAF A、CAF Cから回収したエクソソームをがん細胞に添加し、それらの上皮間葉転換能(EMT)について検討した。CAF Aエクソソームは大腸がん細胞に対して上皮マーカーであるE-cadherinの発現を誘導、間葉系マーカーであるZEB1、Snail1、Vimentinの発現を抑制した。その一方でCAF CエクソソームはSnail1、Vimentinの発現上昇させた。つまり、CAF AはEMTを抑制、CAF Cは促進することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英国より帰国し所属が防衛大学外科学講座に変わったため、テーマをがん研究にそったものとした。測定機器、ガラス機器、試薬と多岐に渡り不足していて研究環境を整えることに多くの時間、労力を要することとなった。変更したテーマ遂行に必要な機器をできるだけ学内で利用できるよう協力を依頼し、学内に存在しないものに関しては代用品、プロトコールを改良することでテーマの遂行にあたった。大腸がんの悪性度については形態学的な情報であるTumor buddingやpoorly differentiated clustersなどががん悪性度が相関していることが明らかになっている。分子レベルでの悪性度の解析として悪性度を示す領域のマトリックス成分の分析(組織染色、免疫染色、プロテオーム解析、空間トランスクリプトーム)等が考えられたが前述したとおり設備、機器、試薬の制限があり、CAFの産生するエクソソームのがん細胞に対する影響を解析した。エクソソームの解析では性状分析(粒子径分、電子顕微鏡観察、ウエスタン分析等)、細胞への添加試験が予定され、安定した結果を得るためにまとまった量の培養上清のロットからエクソソームを回収、小分けした小ロット保存が必須である。残念ながら、防衛医科大学の科研費に関する事務処理は甚だ時間を要し、試薬調達に時間を要したためポリマー法でのエクソソーム回収が実施できなかった。このため超遠心により個別での実施となり、サンプル間の比較には細胞培養から再度同試験をくりかえす必要があり研究遂行には当初の予定より多くの時間を要することとなったがほぼ設定した項目の検討を行えた。
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今後の研究の推進方策 |
大腸がんの悪性度についての形態学的な情報であるTumor buddingやpoorly differentiated clustersなどから分子レベルでの悪性度の解析する為にCAFの産生するエクソソームのがん細胞に対する影響を解析することとした。エクソソームの解析では性状分析(粒子径分、電子顕微鏡観察、ウエスタン分析等)、更には細胞への添加試験が予定され、信頼しうる安定した結果を得るためにまとまった量の培養上清のロットからエクソソームを回収、小分けした小ロット保存サンプルを用いた試験が必須である。超遠心法による培養上清からのエクソソーム回収では最終的にPBSにエクソソームを懸濁する為、長期保存、サンプル比較(特に生物活性試験)には用いることができない。このような理由からポリマー法による回収方法の方が適している。今後のエクソソームの回収には超遠心法ではなく、ポリマー法での調製を行う。CAF A 、CAF Cの培養上清からポリマー法で調製したエクソソームを用いて粒子径分布測定(NanoSight)、電子顕微鏡観察、がん細胞に対する生物活性(EMT誘導能、migration活性)の検討を行う。また、EVの含有するmiRNA、ncRNA、mRNA等を次世代シーケンシングで明らかにし悪性度を規定する分子メカニズムを明らかにする。
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