研究課題/領域番号 |
19K09646
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松下 雅樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (60721115)
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研究分担者 |
鬼頭 浩史 あいち小児保健医療総合センター(臨床研究室), 臨床研究室, 副センター長 (40291174)
三島 健一 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (40646519)
長田 侃 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (80815324)
神谷 庸成 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (50845542)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | メクロジン / 軟骨無形成症 / FGFR3 / 低身長 |
研究開始時の研究の概要 |
メクロジンは軟骨細胞においてFGFR3シグナルを抑制し、ACHマウスモデルへの経口投与により骨伸長促進効果が認められている。本研究では、メクロジンによるACHの根本的治療開発に向けて、FGFR3シグナルにおけるメクロジンの作用機序を検討する。FGFR3シグナルのMAPK経路のうちERKの上流に位置するMEKやRAF、さらにSTAT経路に与える効果や生体内にユビキタスに発現しているERKのリン酸化に与える影響を検討する。また、ACHマウスモデルに各種濃度のメクロジンを投与して副作用が少なく最大限効果を発揮できる用量やACH以外のFGFR3シグナルが関連した疾患動物モデルにおける効果を検討する。
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研究実績の概要 |
乗り物酔い防止薬の成分であるメクロジンは軟骨細胞において線維芽細胞増殖因子受容体3(fibroblast growth factor receptor 3 : FGFR3) シグナルを抑制し、軟骨無形成症(achondroplasia:ACH)マウスモデルへの経口投与により骨伸長促進効果が認められている。メクロジンはFGFR3下流のERKのリン酸化を抑制することはこれまでの研究で分かっているが、本研究では胎生期マウス脛骨の軟骨を用いた検討を行い、メクロジンはMAPK経路のうちERK経路およびp38経路に属する一部の遺伝子発現をメクロジンは抑制するというデータを得た。 これまでの研究で、7日齢のACHマウスモデル(Achマウス)に10日間メクロジンを投与したところ、1および2 mg/kg/dayで濃度依存性に骨伸長を促進した。令和元年度は、各種用量を投与し骨長を評価したところ、本プロトコールにおいてはメクロジン2 mg/kg/dayが、副作用が少なく最大限骨伸長効果を発揮できる用量と考えた。令和2年度以降は、メクロジン2 mg/kg/dayの有効性を検証するためにHypマウスの骨のosteoid volume/bone volume (OV/BV) を定量した。メクロジン2 mg/kg/dayはHypマウスのOV/BVを有意に減少させたことに加え、成長軟骨の構造を改善させることが判明した。しかし、メクロジン2 mg/kg/dayの投与によりHypマウスの血清カルシウムおよびリン値の上昇や、骨伸長促進効果は限定的であった。令和4年度には、マウスの骨髄間質細胞(bone marrow stromal cells:BMSCs)を採取してメクロジンを投与するとアリザリンレッド染色性が著名に向上したことから、メクロジンに骨石灰化能改善を認めることをex-vivoでも示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、Achマウスにおいて2 mg/kg/dayがメクロジンの骨伸長効果を発揮する最も有効な投与量であることを示すことができた。令和2年度以降は、2mg/kg/dayのメクロジンを7日齢のHypマウスに同様のプロトコールで投与し、Hypマウスで増加しているosteoid volume/bone volume (OV/BV)や肥大軟骨細胞層の肥厚は減少したというデータを得た。一方、メクロジンはHypマウスで上昇しているFGF23はさらに上昇させ、マイクロCTによる各種海綿骨や皮質骨のパラメータはメクロジンの投与により変化しなかった。サンプルサイズを増やして検討を行ったところ、メクロジン投与によるOV/BVの減少や肥大軟骨細胞層の厚みの減少は再現性が確認されたが、Hypマウスの血清カルシウムおよびリン値の上昇や骨伸長促進効果は限定的であった。令和4年度には、マウスの骨髄間質細胞(bone marrow stromal cells:BMSCs)を採取してメクロジンを投与するとアリザリンレッド染色性が著しく向上したことからメクリジンは骨石灰化能を促進することをex-vivoでも示すことができた。 令和元年度に行ったcell freeキナーゼアッセイによりメクロジンはMAPK経路においてMAP3K3のリン酸化を抑制することが示唆された。令和2年度以降に胎生期マウス脛骨の軟骨を用いてRNAseqを行ったところ、メクロジンはFGF2により上昇した一部のMAPKファミリーカスケードに属する遺伝子発現を抑制したことと、MAPK経路のうちERK経路およびp38経路に属する一部の遺伝子発現を抑制したことを示した。しかし、cell freeキナーゼアッセイと軟骨を用いたRNAseqの結果に一部解離が認められる状態であることから、追加精査が必要な状態である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究よりメクロジンはMAPK経路においてMEK1/2のリン酸化を抑制することが予想されていた。しかし、令和元年度に施行したキナーゼアッセイでは、メクロジンはMEK1/2のリン酸化抑制効果は軽度だったのに対し、さらに上流のMAP3K3のリン酸化を抑制することが示唆された。令和2年度以降は、胎児マウスの軟骨を用いてRNAseqを行ったところFGFR3シグナル亢進によって上昇した複数のMAPKファミリーカスケードに属する遺伝子をメクロジンが抑制することを示した。また、MAPKのうちERKおよびp38経路に属する遺伝子発現はメクロジン投与により変動したが、JNKは変化しなかった。cell freeキナーゼアッセイと軟骨を用いたRNAseqの結果に一部解離が認められる状態であることから追加精査が必要な状態である。今後は、Rat chondrosarcoma(RCS)細胞にメクロジンを添加した後にFGF2を加えFGFR3シグナルが活性化した一定時間後にMAP3K3やMAP2K6のリン酸化抑制効果の評価に加え、ERK、p38、JNK経路における効果をウエスタンブロッティング法による検討を行う。 Achマウスで最も効果を発揮するメクロジン2 mg/kg/dayは、Hypマウスにおいて骨石灰化を有意に促進したが、骨伸長に対する効果や血清カルシウム値やリン値の変動には有意差を認めなかった。一方、マウスの骨髄間質細胞(bone marrow stromal cells:BMSCs)を用いたex-vivoでメクロジンの骨石灰化能促進効果を示すことができた。令和5年度には、BMSCsに発現しているERKにメクロジンの効果を検討していく。
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