研究課題
基盤研究(C)
癌細胞では、好気的環境下でも解糖系によるエネルギー産生が優位となるグルコース代謝のシフト(ワールブルグ効果)が生じている。解糖系の制御の標的として、ピルピン酸からアセチルCoAへの反応を抑制して解糖系を亢進するピルビン酸脱水素酵素キナーゼ4(PDK4)に着目した。本申請では、このPDK4を分子標的とする新しい低分子化合物を用いて、ワールブルグ効果を抑制することによる抗腫瘍活性および転移浸潤抑制活性をヒト膀胱癌のin vitro培養細胞系 およびin vivoのマウス腫瘍モデル実験系を用いて解析し、既存の抗がん剤と異なる代謝を標的とした薬剤による新たな膀胱癌治療法を開発する。
癌細胞では、好気的環境下でも解糖系によるエネルギー産生が優位となるグルコース代謝にシフト(ワールブルグ効果)が生じており、悪性化に寄与している。我々は、ピルビン酸からアセチルCoAへの反応を抑制し解糖系を亢進するピルビン酸脱水素酵素キナーゼ4(PDK4)に着目し、中医学で利用される丹参の薬効成分クリプトタンシノン(CPT)が低濃度でPDK4を抑制し、膀胱癌細胞株で三次元スフェロイド形成能、上皮間葉転換(EMT)を抑えることを見いだした。また、この活性にはβカテニン/Nカドヘリン経路が関与することを明らかにした。CPTが、難治性膀胱癌治療の新しい治療アプローチにつながる可能性が示唆した。
膀胱癌は、10番目に発生が多い癌であり、浸潤性膀胱癌となった場合には、抗癌剤による治療と根治的膀胱全摘除術による標準治療を行っても満足できる治療結果は得られていない。また、一旦転移癌になると5年生存率は5%以下で、ここ30年間治療結果の改善が見られていない難治性の癌である。今回治療の新しいアプローチとして、癌細胞のエネルギー代謝に注目し、解糖系を抑えることにより癌の上皮間葉転換を抑え、細胞浸潤能を抑制できることを示した。用いた薬剤も漢方の有効成分であるクリプトタンシノンであり、癌治療の新しいアプローチの可能性を示すことができたと考えている。
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