研究課題
基盤研究(C)
唾液腺癌の中でも発生頻度の高い腺様嚢胞癌に対する根治治療は外科的切除のみであるが,神経周囲に浸潤して再発を来す例も多く,また切除不能例,遠隔転移例に対しては,エビデンスのある薬物治療が存在しない。近年癌微小環境における癌細胞と神経細胞の相互作用が癌の進展や薬剤耐性に関連することが明らかになってきた。本研究では,3次元培養技術を唾液腺腺様嚢胞癌において確立し,唾液腺腺様嚢胞癌細胞と神経細胞のエクソソームを介した相互作用を明らかにすると同時に,こうした癌微小環境を標的とした新しい治療法の開発を目的とする。
我々は世界で初めて唾液腺腺様嚢胞癌を始めとする唾液腺癌の患者由来組織からPDXマウス,癌オルガノイド,PDX由来癌オルガノイドの作製に成功した。また,それらが元の組織と組織学的・分子病理学的に類似し,薬効評価の前臨床モデルとして利用可能であることを証明した。さらに,臨床検体を用いた解析では,唾液腺癌の組織中で交感神経および副交感神経線維数が増加している症例が予後不良であることを見出した。これらの結果から唾液腺腺様嚢胞癌を始めとする唾液腺癌において,癌関連神経を標的とした治療が有望である可能性が示唆され,腫瘍神経学の発展の大きな一歩となった。
本研究では,従来成功していなかった唾液腺癌の患者由来異種移植モデルや唾液腺癌オルガノイド培養技術を唾液腺腺様嚢胞癌を初めとする多様な組織型の唾液腺癌において確立し,薬効評価に有用であることを示した。こうしたモデルは癌微小環境を標的とした新しい治療法の開発を可能とする。本研究は唾液腺癌の昨今の新規治療の開発を理論的に支持しつつ,新たな有望な薬剤をスクリーニングし,臨床試験への橋渡しをするトランスレーショナルな役割も担う重要な研究であった。
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