研究課題
基盤研究(C)
歯の痛みは強烈であるにも関わらず、どこの歯が痛いのか自分ではわかりにくいことが多い。過去の研究から、実際に上下顎の臼歯刺激に応答する領域の大半は重複することがわかっており、個々のニューロン活動が上下の区別をしていると考えられるが、その分布や活動様式については不明である。本研究では、上下顎臼歯刺激に応答するニューロンを立体に時間軸を加えた4次元(XYZ軸および時間軸)で解析し、その3次元的な分布を明らかにすことで、口腔内情報を処理する大脳皮質の基盤を解明し、感覚異常に対する治療ターゲット発見に繋げたい。
動物の歯根膜に刺激を行うと、島皮質と二次体性感覚野の境界領域が強く応答し、上顎臼歯、下顎臼歯を刺激した時の応答領域は大半がオーバーラップしている。本研究では、2光子励起顕微鏡によるカルシウムイメージングを用いて、この領域に存在する個々の神経細胞が、上顎、下顎の刺激に対してどのように応答するのかを検討した。その結果、上顎、下顎のどちらの方に、より優位に応答するかという違いはあったものの、どちらかだけに応答するという神経細胞は少数であった。これらの結果から、島皮質と二次体性感覚野の境界領域の大半の神経細胞は上顎、下顎のどちらからも情報を受け取る機構になっている可能性が示唆された。
しばしば、歯科臨床において、痛みの原因が上顎か下顎か、患者自身では区別できないことがある。島皮質と二次体性感覚野の境界領域は歯を刺激した時に強く応答する場所で、歯の感覚情報を処理する重要な脳領域と考えられている。今回の研究では、この領域で歯根膜刺激に応答する神経細胞は、優位性があるものの上顎と下顎の両方に応答するものが大半であることが示された。もし、この領域に存在する神経細胞の興奮の度合いで上顎下顎を分別しているのであれば、強い刺激が入力された時や情報処理に関わる神経ネットワークに変化などが生じた時に、上下顎を区別するのに影響する可能性が考えられた。
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