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イオン液体含有歯科用スマートセメントの耐水性向上

研究課題

研究課題/領域番号 19K10184
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分57040:口腔再生医学および歯科医用工学関連
研究機関徳島大学

研究代表者

浜田 賢一  徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (00301317)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
研究課題ステータス 交付 (2019年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワードスマートセメント / イオン液体 / スマート材料 / 電気伝導性 / 接着強度 / 剥離 / 荷電密度 / 歯科用セメント
研究開始時の研究の概要

歯科治療では修復物等と歯質を強固に接着することが求められ,歯科用セメントの高性能化が進んだ。その結果,接着した修復物等の除去が必要な局面で,歯質の損傷が懸念されるようになった。この矛盾を解決するには,使用時は強固に接着し,必要に応じて接着強度を低下できるスマートなセメントが必要である。我々は,市販の歯科用セメントにイオン液体を混合して導電性を持たせ,金属製被着物-セメント間に通電すると接着強度が大きく低下することを見出した。しかし,口腔内ではイオンが溶出して導電性が低下し,接着強度を低下できない可能性がある。そこで本研究では,イオンの溶出挙動を明らかにし,その抑制法を開発する。

研究実績の概要

初年度は,イオン液体を添加したレジン添加型グラスアイオノマーセメント(以下,試作セメント)を蒸留水の浸漬した際の,電気伝導性の経時変化と,通電後の接着強度の低下幅の経時変化を調べた。コントロールとして,イオン液体を添加しないレジン添加型グラスアイオノマーセメント(以下,GIC)の評価も行った。
試作セメントを1日浸漬したところ,電気伝導性が向上した。これは,セメントのポリアクリル酸マトリックスが親水性であるため,マトリックス中に水が拡散し,イオンの可動性が増加した結果と考えられた。通電後の接着強度の低下幅は,浸漬しない試作セメントよりも大きく,荷電密度の増加に対応していると考えられた。7日,14日浸漬した試作セメントの電気伝導性は,1日浸漬した試料より低下したが,浸漬しない試作セメントよりは大きかった。電気伝導性の低下は,セメント中のイオンが溶出したためと考えられた。通電後の接着強度の低下幅は,1日浸漬後の試作セメントよりは小さく,荷電密度の変化と一致していたが,浸漬しない試料よりは大きかった。14日浸漬でも接着強度が低下したことから,イオンの溶出速度は高くはなく,口腔内でもある程度の期間,機能を維持すると期待された。
一方,1日浸漬したGICでは,電気伝導性が向上し,通電後に接着強度が低下するようになった。これは,硬化時の酸-塩基反応後も消費されなかったイオンがマトリックス中に残留していたところに水が拡散した結果,イオンの可動性が増加した結果と考えられた。7日,14日浸漬後は電気伝導性が低下し,接着強度の低下幅も減少した。
以上から,GICはイオン液体を添加しなくても通電により接着強度が低下するスマートセメントと考えることができるが,イオン液体の添加は接着強度低下に有効であると結論した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

試作セメントとGICを蒸留水に浸漬し,電気伝導性と接着強度の低下幅を評価した結果,セメントからのイオンの溶出に加えて,セメントへの水の拡散が影響することを見出した。今後の実験において,セメントと外界との間に生じる,イオンと水の2つの物質の出入りを考察する必要が明らかとなった。従来は,セメントからのイオンの溶出防止のみを検討対象としてきたが,イオンが溶出しないセメント表面は水も透過しにくいと考えられ,電気伝導性の確保の観点からは,異なる対策も検討する必要性が示された。
GICを水に浸漬すると電気伝導性が増加し,イオン液体を添加していなくても通電により接着強度が低下する点は想定外の新発見であり,今後のスマートセメント開発で機能発現手法の一つとして考慮に値する。また,この事実は,口腔内でGICで接着した金属製修復物が,ガルバニック電流で外れやすくなる危険性を示唆しており,臨床的にも意味のある発見と考えられる。
初年度の実験では,浸漬期間2週間までしか評価できなかったが,臨床応用を視野に入れると更に長期間の評価が必要である。初期評価では浸漬液として蒸留水を用いたが,口腔内のセメントが蒸留水のようにイオン濃度の低い液体に暴露される機会はむしろ少なく,各種飲料やスープのように様々な種類,濃度の電解液にさらされることを考えると,実際のイオン溶出速度はさらに低い可能性もあり,初期評価としては十分な浸漬期間であったと考えている。

今後の研究の推進方策

初年度の蒸留水浸漬による評価に続き,2年度は実際の口腔内環境を模擬した液体への浸漬実験を行う。口腔内にもっとも長時間存在する液体は唾液だが,唾液に含まれるイオン種は多く,また,分泌直後から乾燥が進むにつれイオン濃度が変化することから,完全な模擬実験は煩雑である。そこで,代表的なイオン種としてNaClを用いる。分泌直後の唾液の総イオン濃度が概ね0.3%とされるので,これより高濃度側のNaCl水溶液中に浸漬して評価を行う。口腔内に存在する電解液としては,炭酸飲料のような酸性飲料や,各種のスープなどが挙げられるが,摂取に適切なNaCl濃度は概ね10%以下とされるので,これを上限として濃度を変化させる。
上記評価に基づき,セメントへの水とイオンの拡散,あるいはセメントからのイオンの溶出挙動に対する,表面処理の影響を調べる。当初の研究計画にある通り,光照射によりセメント表面のレジンの硬化を促進させることにより,電気伝導性の経時変化に差が生じるか,そして接着強度の低下幅の経時変化に差が生じるかを明らかにする。光照射により硬化したレジンはポリHEMA(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)であり,親水性が高いことから水の拡散を完全に遮断することはないと推測している。また,水の拡散とともにイオンも拡散することが予想され,光照射によってセメントと浸漬液との間の物質移動を完全に遮断することはないと推測している。しかし,物質移動の速度を低下させる効果は十分に期待され,試作セメントの接着強度低下機能の長期的維持への有効性を評価する。

報告書

(1件)
  • 2019 実施状況報告書

研究成果

(2件)

すべて 2019

すべて 学会発表

  • [学会発表] 水に浸けたグラスアイオノマーセメントの通電特性2019

    • 著者名/発表者名
      藤田創詩,佐藤博子,宇山恵美,浜田賢一
    • 学会等名
      四国歯学会第55回例会
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [学会発表] 通電するとグラスアイオノマーセメントの接着強度は低下する2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤博子,松木佑太,梶本昇,武川恵美,堀内信也,関根一光,田中栄二,浜田賢一
    • 学会等名
      四国歯学会第55回例会
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書

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公開日: 2019-04-18   更新日: 2021-01-27  

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