研究実績の概要 |
顎骨再建・顎骨増生において, 多くの骨伝導能を有する材料が使われている. しかし骨誘導能を有し, かつ副作用のない材料は少ない. 本研究では骨が必要な場所へ積極的に骨形成を誘導するために, 時間経過とともに適量の骨誘導因子をcontrolled releaseするscaffoldを開発し, その放出局所濃度を評価した. 【対象・方法】 Scaffoldとして生体吸収性の PLGAを用いた. 骨誘導因子の含有を可能とするために, solvent-casting and particulate leaching 法によりPLGA内部に多孔質構造を付与した. 骨誘導因子としてデキサメタゾン(Dex), アスコルビン酸(AsAc), ベータグリセロリン酸(bGP)を含む生理食塩水を, 真空ポンプでPLGAに侵入させた. 測定用の生食水入りアンプルに移し, 時間経過とともにPLGA から放出される骨誘導因子をHPLCで測定した. 【結果】Dexは3時間まで放出が確認され, その平均濃度は53.1 nMであった. AsAcは3時間(0.23 mM), 12時間(0.04 mM), 24時間(0.01mM)ともに放出が確認され, 時間依存的に濃度は低下した. bGPは, 3時間(3.9 mM), 12時間(0.6 mM), 24時間(0.1 mM)ともに放出が確認され, 時間依存的に濃度は低下した. 【結論】未分化細胞は骨誘導因子のDex(10-1000 nM), AsAc(0.1-0.5 mM), bGP(1-10 mM)のもとで効率的に骨芽細胞へ分化し増殖する. 本研究により, PLGAから3種類の骨誘導因子が, 未分化細胞から骨芽細胞の分化・増殖に理想的な濃度で3時間放出させることが可能となった.
|