研究課題
基盤研究(C)
これまでの癌研究では、腫瘍を構成する実質と間質とが各々個別に検討されてきたが、 一方のみを標的とする試みだけでは十分な抗腫瘍効果をあげられない場合がある。臨床において固形癌の周囲に触れる硬結が癌の進行を促進する可能性について報告されているが、その分子基盤は不明である。本研究では、機械受容器であるTRPV4が腫瘍間質の硬結を感知することによって腫瘍実質の増殖に与える影響を明らかにする。また、研究分担者らは腫瘍実質における新規癌遺伝子を見出している。本研究では、腫瘍間質からと腫瘍実質を併せて標的とする、これまでにない抗腫瘍効果を目指した癌治療法の開発を企図している。
本研究は、口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるTransient receptor potential vanilloid 4(TRPV4)の発現と機能を検討し、その分子基盤を明らかにすることを目的とした。本研究の結果から、TRPV4は口腔癌病理標本において腫瘍部に高発現し、また、OSCC細胞株に発現しており、TRPV4を介したCa2+細胞内流入がCaMKIIの活性化を介してAKTシグナル伝達を活性化することで、OSCCの細胞増殖が促進されることが示唆された。このことは、細胞外環境をOSCCの腫瘍細胞が認識し、細胞増殖を制御する機構の一端を見出したと考えられた。
本研究は、OSCC におけるTRPV4の発現制御機構、およびTRPV4の活性化メカニズムを明らかにすることを企図したものである。特に、TRPV4の発現制御機構について、OSCC患者から得られた同一組織標本内における腫瘍部と非腫瘍部を比較し、腫瘍部においてTRPV4が高発現していることを見出したことは、学術的な意義が高い。加えて、TRPV4/CAMKII/AKTシグナル伝達を標的とした、抗腫瘍療法の開発につながる可能性があり、社会的意義も大きい。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Lab Invest.
巻: 100(2) 号: 2 ページ: 311-323
10.1038/s41374-019-0357-z
120006938538
http://www.dent.kyushu-u.ac.jp/about/field/field4/field4_01/