研究課題
基盤研究(C)
本研究は,口腔扁平上皮癌細胞に選択的オートファジーのアダプター分子であるp62発現を誘導することにより,インテグリンαvの分解を亢進し,扁平上皮癌細胞のインテグリンαv発現を低下させ,口腔癌の増殖や浸潤・転移を阻止する新しい口腔癌治療法を開発することを目的としている.そのために,インテグリンαv分解とp62を介する選択的オートファジーとの関連を検討するために,インテグリンαvとp62の複合体形成について解析する.さらに遺伝子導入によるp62発現誘導が,口腔扁平上皮癌細胞のインテグリンαv発現に与える影響を検討するとともに,増殖能,浸潤能や転移能に対する影響について解析することを計画している.
扁平上皮癌細胞では単量体のインテグリンαvサブユニットは,p62と結合し複合体を形成した後,選択的オートファジーにより分解されることがわかった.これに対し,インテグリンβ3,β5,β6あるいはβ8サブユニットと二量体を形成したαvはオートファジーによる分解から保護され,αvβ3,αvβ5,αvβ6またはαvβ6として安定発現し,細胞の機能を調整していると推測された.扁平上皮癌細胞の造腫瘍能に対しαvβ5は抑制的に,αvβ1,αvβ3及びαvβ6は促進的に作用することが示され,これらのインテグリンαvファミリーを分子標的とする新しい口腔癌を含む扁平上皮癌治療の開発の可能性が示唆された.
本研究で明らかになった選択的オートファジーによるインテグリンαv分子の分解機構の解明は,組織分化や器官発生のメカニズム,細胞の癌化や癌の進展機構を理解する上で重要な知見をもたらすだけではなく,従来の癌治療にかわる新しい口腔癌治療法開発の一助になることが期待される.さらに,上記に示されたオートーファジー系による蛋白翻訳後修飾や分解機構は,異常タンパク質の細胞内への蓄積を特徴とするアルツハイマー病,パーキンソン病,ポリグルタミン病,筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患の病態解明や治療法開発に関する研究を行う上で有用な知見となるものと期待できる.
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
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