研究実績の概要 |
歯科矯正治療の診断に用いられるセファログラムの頭蓋顎顔面領域の骨, 歯および側貌等の軟組織の画像は,構造の解剖学的な特徴を代表するポイントを使って計測点群を図形的に捉えることができる。また, 矯正治療では, 顔面骨格の似たパターンでは, 同じような治療方針を取ることが多く, 初診時の顎顔面パターンを図形として認識し, 図形の情報に診断や治療方針を紐づけすれば, 診断をある程度自動化できる. 目的: 本研究は,少数の長期経過観察中の骨格性下顎前突患者を対象に,機械学習による分類で顎顔面形態パターンを生成する. 方法: 機械学習データは, 上顎前方牽引装置除去後7年間経過観察した患者のセファロ測定点からなる. これらのセファログラムのDICOM画像を用いて, 頭蓋顎顔面領域の73点の測定点をデジタル化した. これらの点のx-y値は, 頭蓋底のS点を原点として数学的に変換した. 0.1mmステップごとに120の仮想症例の座標値のベクトルデータを11セット作成した. これを機械学習(SOM)で5万回学習させ, 地図の単位(3×3)上に顎顔面パターンを生成した. これらの仮想パターンを用いて, 120個のベクトルをマップ上で分類した. 結果: SOMにより, すべてのデータセットについて, マップ上に重みベクトルが生成された. 各セットからマップへの割り当ては, 0から50の範囲であった. しかし, いくつかのユニットでは, 不均一な仮想ケースの分布があった. E0.8セットでは, 最も均等な分布であった. E0.8セットのSOM結果の重ね合わせでは, 9ユニット中8ユニットで下顎前突の顎顔面形態が視覚的に確認された. 結論: 以上の結果から,測定点に±0.8mmの乱数を付加した仮想症例を生成することが,長期治療例などのセファログラムの機械学習に有用であることが示唆された.
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