研究課題/領域番号 |
19K10569
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
|
研究機関 | 群馬県衛生環境研究所 |
研究代表者 |
荒木 和浩 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (80406470)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 慢性炎症 / がん薬物療法 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 免疫応答 / 栄養障害 / 宿主 / 腫瘍微小環境 / 高齢者医療 / がん治療 / 炎症性サイトカイン / 患者報告アウトカム / コミュニケーションツール |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、がん薬物療法中における、高齢者機能評価と患者の直接評価による副作用評価が、炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1、TNF-α、アディポカイン)の変動と相関するかを探索することである。 患者中心のチーム医療において、患者本人と医療者のみの主観的評価だけでは、その信頼性や妥当性・重篤度を、客観的かつ正確に評価することは困難である。多職種の医療者による主観的評価のみならず、炎症性サイトカインの数値をアルゴリズム化して客観的指標を可能にすれば、妥当な治療方針の決定・副作用のモニタリングとマネジメント・予後予測を客観的かつ包括的に評価できると考える。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的はがん薬物療法における包括的なコミュニケーションツールとしてのリキッドバイオプシーの妥当性を探索的に研究することである。具体的にはがん薬物療法中の副作用評価が、炎症性サイトカインの変動に相関するのかを探索することであった。その一例として、乳がんに対して薬物療法中に血管炎症候群を生じた患者に焦点をあてた。投与した顆粒球刺激因子(G-CSF)も含めて、様々な臨床情報と血管炎症候群との相関を検討した。その結果、G-CSFとの明確な相関を明らかにすることはできなかった。しかしながら合併症である肥満症による慢性炎症にともなう非感染性疾患に加えて、感染性疾患、ならびにヒト白血球型抗原(HLA)の遺伝子多型が血管炎症候群の発症に関与していることが示唆された。一方で血液検体採取と保存ならびにその評価手法の困難さを実感する結果も得た。核酸ワクチンを接種した集団での抗体価測定を行い、その経時的推移を評価した。抗体価の測定方法を樹立することが困難であったため、血液検体のみを保存し、測定を他施設に依頼した。そのため、抗体価やサイトカインの測定を別の手法へ変更した。臨床情報から得られる血液検体の情報に注目し、研究対象症例を乳がん症例に限らず、免疫療法を行った353症例を対象として臨床データの収集を後方視的に行った。免疫チェックポイント阻害薬を単独で投与した症例を集積し、その中から組織検体が研究代表者の施設内バイオバンクに保管されている50検体で全エキソームシーケンスを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
353症例に免疫チェックポイント阻害薬が使用されていたが、その他の化学療法との併用療法あるいは化学放射線療法後の維持療法、さらには1サイクルのみ投与した症例を省き、251例を対象とした。年齢中央値は69(19-88)歳、男性が75%近くを占めた。ニボルマブが約6割,ペムブロリズマブが約3割であった。肺癌および消化器癌がそれぞれ3割、腎泌尿器癌が2割、頭頸部癌が1割を占めた。免疫チェックポイント阻害薬の投与期間中央値は105(15-1667)日、同様に生存期間中央値は365(29日-2115日)であった。免疫チェックポイント阻害薬による治療期間もしくは生存期間に影響を与える因子として、以下の項目を列挙した。低体重であること、血小板数高値、白血球数の増加、炎症性タンパク値の高値ならびに乳酸脱水素酵素の増加は悪影響を及ぼしていた。一方、ヘモグロビン濃度やリンパ球数の増加は期間の延長を示していた。慢性炎症性疾患のひとつである悪性腫瘍においても、炎症に関連する何らかの因子が、免疫チェックポイント阻害薬の治療期間や生存においても悪影響を及ぼす可能性が示唆された。それに加えて宿主側の栄養障害もそれらの期間を左右する可能性があった。免疫応答に関連する因子や栄養状態の評価が免疫チェックポイントの治療期間や生存に影響を及ぼしていると考えられたため、組織検体が保管されている50検体を抽出し、全エキソームシーケンスを行った。50検体のリードデータはFASTQであり、今後はマッピングを行い、臨床データと併せて検討を行う。
|
今後の研究の推進方策 |
がん薬物療法における包括的なコミュニケーションツールとしてのリキッドバイオプシーの妥当性を探索的に研究することであった。そのため、免疫チェックポイント阻害薬による治療を行った251症例を対象として血液生化学検査から得られたデータと臨床情報を用いたの臨床データを総括して発表を行う。結果の報告に際しては、以下の2点を中心に報告する。慢性炎症性疾患のひとつである悪性腫瘍においても、炎症に関連する何らかの因子が、免疫チェックポイント阻害薬の治療期間や生存においても悪影響を及ぼす可能性が示唆されること。それに加えて宿主側の栄養障害も治療期間を左右する可能性があることの2つである。 これらに加えて、免疫チェックポイント阻害薬を左右する生物学的因子を探索するために、ゲノム解析との関連性を確認する。全エキソームシーケンスを行った50例に絞ったゲノム解析では、FASTQをbwaでマッピングを行い、sam形式のファイルに整え、IGVで可視化する。同定可能であった生物学的因子と251症例での結果で認められた臨床的因子を加味して、免疫チェックポイント阻害薬を用いる際に、宿主側の効果の指標となる要因を探索する。
|