研究課題/領域番号 |
19K10570
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
平上 二九三 吉備国際大学, 保健福祉研究所, 準研究員 (60278976)
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研究分担者 |
齋藤 圭介 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (20325913)
井上 茂樹 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (40531447)
原田 和宏 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (80449892)
井上 優 吉備国際大学, 保健福祉研究所, 準研究員 (90726697)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | リハビリテーション教育 / 卒前卒後教育 / 職場内教育 / 技能育成 / 教育モデル / 学習方法 / 教育評価 / コンピテンシー / リハビリテーション医療 / 理論的なモデル / 知識・技能・態度 / シミュレーション教育 / 学際的なチーム / 物語に基づく医療 / 共同意志決定 / リハビリテーション専門職 / リハビリテーション技能 / 臨床実践教育 / 人材育成 / 理学療法士 / 臨床実習教育 / 自己評価チェックリスト / 学生の成長実感 / 学修成果の可視化 / リハビリテーション / 専門職 / 技能 / 評価方法 / 成長プロセス |
研究開始時の研究の概要 |
リハビリテーション(以下リハ)専門職の役割は、障害を抱える者の自立支援と生活の再建を担うことである。その役割が地域包括ケアで求められ、人材育成が急務となっている。今こそ臨床教育の刷新のため、リハ技能の視覚化が必要である。本研究では「リハ技能とはどのようなものなのか?」を課題とし、リハ技能の評価観点を明らかにし、リハ技能をきめ細かく捉え、リハ専門職を目指す者一人ひとりを成長へと導く評価ツールの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
卒前教育で覚えている・知っている・分かっている,といった知識レベルと卒後の臨床実践で患者の課題を見つけるための知識との違いが,職場内リハビリテーション(以下リハ)教育で問題となっている.本研究の目的は,リハ医療を担う療法士の実践に必要な知識の育成に役立つ教育モデルを開発することである. これまでに,症例検討で必要な知識を見出す学習モデルを提案してきた.(1)疾病と病態などを知る「臨床像」,(2)患者理解を深める「心理面」,(3)生活背景を確認する「環境面」,(4)障害の回復を見極める「障害像」,この4つの特徴から患者の全体像を俯瞰し,今ここで何をすべきか?という介入ポイントを特定する評価ツールである.膨大な診療「データ」から,特有の患者「情報」を理解し,臨床現場で行動できる「知識」から,ノウハウやコツを体得し「知恵」に昇華させる学習モデルである. 一方,リハ医療に特化した概念枠組みに関する先行研究が乏しいことから,広く教育研究を渉猟し,学習理論や人材育成のモデルを調査した.その結果,学習モデルと双璧になるのが,日本独自の知のピラミッドであった.これは,日本企業にみられる知識創造の過程から,知的能力を強化するモデルとして提唱されていた.欧米のDIKWモデルといわれるデータ・情報・知識・知恵の上に置かれた「知心」は,わが国独自の医療制度である回復期リハ病棟における専門職としての態度であるリハマインドに通じる.本来のリハ医療は,心身を癒し,人格や自信などの尊厳を取り戻す全人的医療であることから,「生きがい」や「おもてなし」といった日本文化のユニークな概念を職業意識として学ぶ場でもある. 学習モデルと知のピラミッドが,海外の医学教育誌の査読者に評価され現在,論文Ⅰの「職場内リハ教育のスキル開発:Ⅰ」は再査読中である.これらのモデルは他の国にも適応できるはずである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅れている理由は,1本目の論文が査読に予想外の時間を要した結果,研究期間延長に至ったからである.査読期間が8ヵ月,再投稿して2ヵ月,現在も査読中である.ただし,この間に2本目の論文を執筆しており,その研究概要は以下のとおりである. 卒前教育と卒後教育をつなぐ概念の一つに,医療職として仕事が任せられる(EPA)の考え方が,医学教育分野で注目されるようになり,その学習方法が求められている.本研究の目的は,先の論文Ⅰで紹介した教育モデルに続いて,知識・技能・態度の3要素を統合した教育モデルを開発し,広く先行の学習関連モデルを調査し類型化することである. ここで提案する教育モデルは,リハの実践を段階的に7つのステップを踏むプロセスモデルといえる.知識は4つで(1)臨床像・(2)心理面・(3)環境面・(4)障害像,技能は2つで(5)今ここで何をすべきかの介入ポイントの特定・(6)実現可能な目標設定,態度は(7)方針や道筋を患者と家族および他職種に伝え共有,以上の7つの手続きを取る.これをリハの実践過程とし,学習の3要素を一体化したフレームワークを開発した. この研究の焦点は,知識・技能・態度を統合し,学習者と指導者が一緒にすり合わせができるように,ブルームが述べた「指導と評価の一体化」にすることである.そこで,個々の技能の高度化と深化のため,互いに説明し合う類型論を想定した.ブルームの教育目標の分類学でいう認知領域は知のピラミッドの5層,精神運動領域はシンプソンの7層,情意領域はブルームの5層とした.加えて上記のプロセスモデルの7層,およびドレイファスモデルの技能レベルの7層を結集した.以上の5類型論の統合は,7層の同等性が担保されると有用な教育評価ツールになる. この研究成果は,2本目の論文「職場内リハ教育のスキル開発:Ⅱ」とし,1本目と同じ国際教育誌に投稿する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画した目標の3編の査読付き国際学術誌への公表を達成するため,理論編の論文Ⅰ・Ⅱに続いて実践編の論文を纏めており,研究概要を以下に示す. 卒後教育と卒前教育を一貫性のあるシームレスにするという議論では,コンピテンシーという概念が中心になっている.世界理学療法士連盟によると,教育の枠組みの開発で育成と評価は,コンピテンシーの概念で行われるべきであると明確に述べられている. そこで,本研究のコンピテンシーは松下の定義に依拠する.リハ専門職のコンピテンシーは,「要求と課題に対して,知識・技能・態度を統合させつつ,対象世界や他者・自己と関わりながら,行為し省察する能力」と定義する.先の論文Ⅱのプロセスモデルでは,(1)臨床像,(2)心理面,(3)環境面,(4)障害像,(5)課題抽出,(6)目標設定,(7)文章化,としている.この(1)~(4)を知識,(4)と(5)を技能,(7)を態度にしているが,定義のなかで「行為し省察する」という能力が新たな要素に加わる. この内省的実践は,経験と学習が行動に変換され,個人の考え方を変える重要なスキルになる.このことから,(4)と(5)の技能にショーンの用語である「行為の中の省察」と「行為についての省察」を組み込むことにする.療法士の学習には,行動のなかでの気づきや調整と,行動した後に振り返って最善策を練り上げる2つの省察が必要になる.この位置づけが学習者と指導者にとって,考え方・進め方・関わり方・伝え方のすり合わせになる.リハニーズと課題を患者・家族・他職種にいかに伝えていくかが,(7)の態度につながる.学習者と指導者が一緒になって症例シナリオを作成することは,効果的で効率的な職場内リハ教育のスキル開発になると考えた. この研究成果は,現在3本目を執筆中で,総括論文としてよりインパクトファクターの高い国際臨床教育誌へ投稿する予定である.
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