研究課題
基盤研究(C)
約1400人の患者コホートである小児インスリン治療研究会の登録患者・保護者を対象に自己管理能力と血糖コントロール状況や糖尿病療養環境、QOLに関してのアンケート調査を1年毎に行う。本研究の結果と小児インスリン治療研究会の臨床データを統合することで自己管理能力と血糖コントロール状況や糖尿病療養環境、QOLの横断的評価および患者毎の縦断的評価を行い、それぞれの関連性について検討する。また小児科発症1型糖尿病患者における成人医療へのトランジションの目安となる療養行動のマイルストーンを作成する。
本研究では1型糖尿病を持つことで子どもの学校での生活の質は悪化していたが、血糖管理が良いほど悪く、カーボカウント施行者で悪いこと、インスリンポンプ使用者で良いことが判明した。学校での療養行動の場所は教室が4割、他の部屋が6割であったが、ポンプ使用者では教室の割合が高く、ペン使用者でトイレの割合が高かった。また、インスリンポンプ使用者ではインスリン自己注射や血糖自己測定の手技獲得までの期間が伸びていた。インスリンポンプは学校での生活の質や療養行動の場所だけでなく、自己管理能力に影響を与えるていた。さらに摂食障害に関する調査では血糖管理不良者において摂食障害併発のリスクが高いことも示唆された。
本研究により、1型糖尿病が学校生活の質を低下させること、血糖管理が良い者をほど低下していること、インスリンポンプの使用によって学校生活の質の改善だけでなく、学校での療養行動自体に影響を与えること、療養行動の場所により血糖管理状況に影響を与えることが明らかとなった。これらから1型糖尿病を持つ小児の生活の質や血糖管理の改善のため、デバイスの有効活用を行った上での学校環境の整備が必要であることが示された。一方、インスリンポンプ使用によりペン注射など必要な手技獲得までの期間の遅延を認めており、デバイス使用時の適切な指導の必要性も示された。糖尿病診療における心の健康への対策の重要性が示された。
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