研究課題/領域番号 |
19K10648
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58030:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含まない
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研究機関 | 東京都立大学 (2020-2023) 新潟県立大学 (2019) |
研究代表者 |
勝又 陽太郎 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (30624936)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 自殺予防 / 慢性自殺傾向 / 自殺の対人関係理論 / 地域精神保健 / 支援モデル / リスクアセスメント / 自殺ハイリスク者 / 慢性の自殺傾向 |
研究開始時の研究の概要 |
わが国の自殺予防対策は、自殺ハイリスク者を早期に発見して専門的支援につなぐ「入口の支援」から、リスクの高い人を継続的に支援する対策へと重心を移す必要がある。 本研究は、慢性の自殺傾向を抱えた自殺ハイリスク事例に対して、地域保健現場で長期間にわたって継続的に支援していくための方法の確立を目指す基礎的研究である。 本研究は大きく2つの要素で構成される。一つは、長期的支援で課題となる、自殺リスクのアセスメント精度向上を目指した、自殺生起メカニズムの理論的精緻化である。もう一方は、自殺ハイリスク者の地域支援に携わる支援者が、プロセス評価を用いて支援の質の改善を行えるよう、支援モデルを構築することである。
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研究実績の概要 |
令和5年度研究では,昨年度までと同様に,引き続き地域保健の現場で自殺ハイリスク者の個別支援に当たっている行政の保健師に,オンライン会議システムを用いた自殺予防の専門家によるコンサルテーションを自身の担当するケース支援のために利用してもらう中で,オンライン・コンサルテーションのニーズやオンライン・コンサルテーションを提供する際の課題,およびオンライン・コンサルテーションの効果測定に使用することが可能な指標の候補を探索することを目的として,質問紙と参与観察のフィールドノーツを用いてデータ収集を行った。令和5年度は,令和3年度から継続して研究協力が得られたA市において,自殺ハイリスク者の地域支援業務に従事している8名の保健師に1回ずつ質問紙調査に回答してもらった。また,2023年4月~2024年3月までの間に,必要に応じて研究代表者によるオンライン・コンサルテーションを利用してもらい,当該コンサルテーションへのフィードバックを行ってもらうとともに,研究者側のフィールドノーツをデータとして収集した。 さらに,令和5年度研究では,自殺生起メカニズムの理論的精緻化に関連した研究部分に関して,2度のオンライン調査を行った。具体的には,思春期・青年期における親の非機能的なペアレンティング(養育態度)を測定するための新たな尺度を開発したうえで,思春期・青年期における親の非機能的なペアレンティング(養育態度)が制御焦点を介して所属感の減弱(孤独感の増加)や自殺念慮に影響を与えるというモデルの検証を行った。分析の結果,当初想定したモデル全体の適合度が不十分であったため,グラフィカルモデリングを用いて探索的なモデル検討を行ったところ,10代の子どもに対する母親の非機能的なペアレンティングの中でも「子どものアンビバレンスへの不耐性」因子と孤独感が有意に関連していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の遅れが生じている背景にはいくつかの要因があるが,その中でも最も大きな遅れの理由は,新型コロナウイルス感染症の影響である。研究開始して間もなく,本研究の研究対象としている地域保健部局の様々なリソースが感染症対策に大きく配分されてしまったため,各自治体の自殺ハイリスク者対策の優先順位が相対的に低下してしまっていた。また,研究協力を得ている自治体の地域保健部局で組織改編や人事異動があり,自殺対策に従事する保健師の数が減ってしまったこともデータ収集を困難にした。加えて,わが国では新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って,特に2020年から2021年にかけて若年者や女性の自殺死亡率が急激に増加したことが報告されているが,こうした現象は他の国ではいまだ観察されておらず,このような特殊な状況下で収集した自殺リスクに関するデータがどの程度まで一般化できるのか不明瞭であり,自殺生起メカニズムの理論的精緻化に関する研究部分については,当初の計画を大幅に変更せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
予定されていた研究期間を1年間延長し,すでに収集されたデータの分析と公表を進めるとともに,必要に応じて追加のデータ収集を行う。具体的には,まず,自殺ハイリスク者の地域支援モデルの構築及び評価の研究部分については,すでに令和5年度まででデータ収集が完了しているため,得られたデータの分析を行い,結果をまとめて公表する準備を進める。また,自殺生起モデルの理論的精緻化に関する研究部分に関しても,令和5年度研究で収集したデータの再分析と研究結果の公表を進めるとともに,必要に応じて文献レビューやオンライン調査を追加し,研究結果の補強を図る予定である。
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