研究課題
基盤研究(C)
妊娠・出産は,女性にとって人生における喜ばしいライフイベントの1つであるが,産科合併症の増加や子育てのしにくさや抑うつ傾向を示す母親が増加している.国内においては,産後うつ病自己評価票を用いた早期スクリーニングが標準化した一方で,早期発見だけでは対応にも限界がある.わが国の産後ケアの特徴として,産後48時間以内に退院する諸外国と比較すれば長い入院期間がある.この時間的な利点を活かし,周産期ケアのあり方と産後の母親の身体的回復が母親役割の自信や育児ストレスにどのように関連しているのかについて検討し,具体的な産後の母親の役割適応を促進する助産実践につながる重要なエビデンスを提示したい.
研究目的は、産後の母親の身体的回復が母親役割の自信にどのように関連しているのか検討し、産後の母親の役割適応を促進する具体的な助産実践を提示することである。研究対象となった女性は184名(初産婦92名、経産婦92名)、平均年齢は31.5±4.5歳であった。母親役割の自信は、産後5日目から産後1か月にかけて高まった。母親役割の自信の高さには、経産婦であること、会陰切開を施行していないこと、産後1か月の栄養方法が母乳のみであること、会陰部痛による日常生活への支障がないことが関連していた。助産師は、母親となる女性が心身ともに健康的な産後の生活および母親役割への適応が円滑に進むよう支援する必要がある。
本研究では、育児不安や抑うつの予防に寄与しうる母親役割の自信に着目し、母親役割の自信と、助産師が分娩時や産後の入院中に介入可能な日常生活への支障との関連を明らかにした。したがって、日常生活への支障に関連する会陰損傷予防、会陰部痛軽減のケアを行うと共に、産後の女性が、会陰部痛や日常生活への支障を抱えながらも、育児がスタートする時期を順調に過ごせるよう環境を整えていくことが、母親役割の自信の向上につながり、ひいては、育児不安や産後うつ予防に寄与する可能性を示唆できた。
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