研究課題
基盤研究(C)
出産後から職場復帰前の育児休職中の母親に焦点をあて,母親自身の健康向上と円滑な職場復帰,良好な家庭生活を目的とした包括的支援プログラムの開発と効果検証を目的とする。なお、支援プログラムは保健師,助産師,臨床心理士等が多職種連携で実施する。第一段階として文献検討,アンケート調査,ヒアリング調査を実施する。第二段階でこれらの調査結果を参考に,産後の母親の健康向上支援プログラムおよび職場復帰準備&両立支援プログラムを作成する。第三段階として,2つのプログラムを提供する介入群と1つのプログラムのみを提供する対象群について,アンケート調査を実施して支援効果を検証する。
本研究では育児休業中の母親を対象として,産後の身体的回復および職場への円滑な復帰支援と良好な家庭生活を目的とした包括的支援プログラムを開発し、その効果検証を目的とした。まず文献検討にて先行知見を整理した。次に、A市が主催する妊娠期の共働き夫婦を対象とした教室の女性参加者249名を対象として、復職後の母乳栄養意向と就労状況、職場環境等を尋ねる自記式アンケートを実施した。その結果、母乳栄養希望者は85%で職場内に育児関連の相談相手の存在、年齢が低いことが母乳育児希望と関連することが明らかとなった。次に東海2県における複数の自治体の子育て支援課等を通じて,育児休業中の女性を対象にwebアンケートへの協力を依頼した。1年間で369名から回答を得、うち326名を分析対象とした。回答者の平均年齢は32.5±4.3歳、育児休業取得は1年から1年半が47.2%、復職後は同じ職場で働き方を変えて働くが51.5%と最多であった。職場復帰自己肯定感の平均値は47.6±27.8点,職場復帰意図は47.7±32.5点であった。調査に用いた就業キャリアに関する不安などを含む「産後不安尺度(永田)」の育児休業中の母親への適用可能性について、妥当性および信頼性を検討した。その結果,28項目総点での使用は可能なものの因子構造が不安定なため、育児休業中の母親向けにはさらなる検討の必要性が示唆された。最後にE-learning用の動画コンテンツ8本を作成した。うち母親の健康や子育て関連の5本を対照群に、ワークライフバランスとキャリア、行政における復帰に向けた支援制度、職場における復帰に向けた支援制度を追加した8本を介入群に提供するRCTを行った。上記の回答者のうち58名がRCTに登録し、動画視聴後のwebアンケートには30名から回答が得られ、産後からの経過時期により有用な内容は異なることが示唆された。
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母性衛生
巻: 63 ページ: 832-839