研究課題/領域番号 |
19K11361
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 立命館大学 (2022) 国立研究開発法人理化学研究所 (2019-2021) |
研究代表者 |
仲泊 聡 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (40237318)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 視線 / リハビリテーション / 視覚障害 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、全盲かそれに近い重度の視覚障害者の見た目の視線を、ビデオベースの視線計測器を用いて測定し、この位置のフィードバックにより、彼らの内的視線による空間定位の精度を向上させるシステムを開発する。先行研究により明らかになった課題の一つである全盲者の見た目の視線の大きなズレと不安定さに注目し、これを矯正し安定化させる訓練システムの開発を研究の中心に据えた。これまで、重度視覚障害者の視線についての研究は、皆無に等しい。ともすれば、全盲の本人たちにとっては無用の長物とさえ考えることのある自らの眼球を、意義深い行動支援に用いるということが、彼らの精神的安寧にも繋がると期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、全盲かそれに近い重度の視覚障害者の見た目の視線を、ビデオベースの視線計測器を用いて測定し、この位置のフィードバックにより、彼らの内的視線による空間定位の精度を向上させるシステムを開発する。先行研究により明らかになった課題の一つである全盲者の見た目の視線の大きなズレと不安定さに注目し、これを矯正し安定化させる訓練システムの開発を研究の中心に据えた。これまで、重度視覚障害者の視線についての研究は、皆無に等しい。ともすれば、全盲の本人達にとっては無用の長物と考えることさえある自らの眼球を、意義深い行動支援に用いるということが、彼らの精神的安寧にも繋がると期待される。 初年度では、被験者の正中正面に対し、見た目の視線が近づくと音響によるフィードバックがかかるシステムを開発した。非接触型視線計測器(EyeLink社製、理化学研究所保有)で、正面においたモニター上の視標と見た目の視線が合うと音声でフィードバックする仕組みを整えた。また、同時にHMD型の簡易視線計測装置(Fove0、先行研究で購入済)でも同様の実験とさらに画面中央から左右に見た目の視線が離れると断続的なビープ音の間隔が早まるようなシステムを用意した。第二年度および第三年度では、COVID-19の影響で実験ができず、解析ソフトの修正を行なった。第四年度となる本年度は、研究代表者の移籍に伴い、データ取得場所となる病院と解析を行う機関との共同研究契約を交わす必要が生じたが、滞りなくその移行ができた。さらに、社会状況としては実験の見通しが立ったため、倫理審査委員会へ実験の申請を行い、承認され、若干名ではあるがデータが取得できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
倫理審査は、COVID-19の影響で足踏みしている間に基準がより厳しくなったこともあり、4月に申請して通過したのが翌年2月であった。その間は文献研究と測定用ソフトウェアの調整を行なった。従来の測定用ソフトウェアを改善し、設定した位置と見た目の視線の距離に応じて、左右にブレた場合は音量を下げ、上下にブレた場合は音程を下げるという方法で視線位置をフィードバックし、斜め方向も認識可能なシステムとし、視覚障害者に対する予定通りの実験(後述のテーマB)が可能な形となった。これまでに健常被験者としては1名(後述のテーマA)、視覚障害者としては2名の被験者でのデータを取得した。健常者に対しては、主にシステム動作の確認を行った。テーマBでは、全盲の視覚障害者であっても、本システムでフィードバックすると、見た目の視線が矯正され、ほぼ中央に向くことが確認された。また、フィードバック後もその視線をある程度維持できていることが確認できた。まだ少数例での結果であるが、症例を重ねることでその実用性について検討できる見通しが立ち、これを本年度に継続することで本研究の目的に近づけると確信した。また実験不能時期に行った文献研究をもとに、雑誌「視覚の科学」に総説「Video-oculographyの視野計への応用」として投稿した。2023年6月に掲載が予定されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、以下の3つの大きなテーマを有している。より効率的に目的に近づくために、テーマBの視標提示をまずは正面方向のみに絞り、テーマAをそのテーマBのコントロールに徹するように改変した。現状では、テーマAとBが実行可能であり、本年度はこれらを同時進行する予定である。なお、テーマCについては、Bの結果が得られてから実施予定とする。 テーマA: 被験者の正中正面に対し、見た目の視線が近づくと音響によるフィードバックがかかるシステムを開発し、まず健常者に対して、システム動作の確認を行う。暗黒条件で正中正面と思われるところを凝視した場合の視線を計測し、次に、視線に対する音響フィードバックシステムによりトレーニングを行い、再度、音響なしで正中正面での計測を行う。 テーマB: テーマAと同じ計測系で、重度視覚障害者についても、正中正面と思われるところを内的視線で凝視した場合の見た目の視線を計測し、健常者データとの比較を行うことで、その視線安定性の評価を行う。それと同時に音響フィードバックを用いたトレーニングを行い、このトレーニングの前後での見た目の視線の安定性の変化について評価する(ここまで倫理審査承認済み)。そして、この方法が確立した上で、以下についても検討する。その左右・上下方向及び固定した斜め方向への任意の角度に対して音響フィードバックを行うシステムにより各方向の視線矯正訓練を行う。訓練についても同じ非接触型視線計測器を用いた実験系での測定を行う。ここで試行実験を繰り返し、効果的な訓練プログラムを作成する。訓練前後に、視線の安定性の評価を行うことにより、視線矯正訓練による内的視線制御の安定化が可能であるかについて検討する。 テーマC: 先行研究で成し得なかった全盲者の視線の遠隔ガイドシステムについて、装着型の視線計測器(Nac社製EMR9)を用い再検討を行う。
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