研究課題/領域番号 |
19K11370
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
森 大志 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (50301726)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 大脳皮質 / 経頭蓋磁気刺激 / 運動誘発電位 / 運動の要素 / 運動野 / 歩行 / 磁気刺激 / 神経制御 / 脳梁 / 歩行運動 |
研究開始時の研究の概要 |
私たちは当たり前のように二足歩行できる.すなわち二足歩行はヒトにとって最も基本的な運動と言える.一方で,この障害はヒトの尊厳にも関わる大きな問題である.しかし,二足歩行が中枢神経系(脳)によってどのように制御されているのか,その詳細は未だ明らかではない.本研究は,その制御メカニズムの解明に迫るもので,障害後の歩行機能の再獲得リハビリテーション方法の立案やそれに向けた機器の開発を提案する上でも有益である.
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研究実績の概要 |
運動時には大脳皮質運動野(運動野)の活動性が増加することが脳機能画像研究で示されている.この活動性の増加は上肢運動のみならず歩行の際の下肢運動時でも観察される.一方,関節固定に伴う無動では固定部位を支配する運動野の活動性が低下する.これらの結果は同部の活動性増加は主として感覚入力の増加に伴う現象と考えることができる.一方,能動運動と受動運動との違いを検証した研究では両者で運動野の活動性が増加することが示された.そこで本研究では,上肢運動および下肢運動時に観察される運動野の活動性の増加がどのような「要素」に依存するのかを検証し,運動野の活動性と相互半球間の活動性調節の実態について考察する.運動の要素として,前年度は「難度」に着目したが,今年度は「頻度」と「負荷」に着目した.運動に伴う運動手支配側運動野の活動性増加により運動手と同側の運動野の活動性は低下することを仮説とした(半球間抑制).運動課題は拇指屈曲運動で,運動頻度と重錘負荷の有無の組合せで運動野の活動性を計測した.脳活動は磁気刺激によって刺激側とは反対側の筋から誘発される運動誘発電位(MEP)の振幅値から評価した.最初に頭皮上の最適刺激部位と閾値を同定し,閾値の120%を刺激強度と設定した.各運動課題を実施する前と運動直後に120%刺激強度で誘発されるMEPを計測した.その結果,運動後の運動手と同側の活動性は運動前に比べて変化しないまたは軽度増加する例が現状では多く,この傾向は運動頻度が多いほど強い.また,負荷の有無では変化しない例が多数を占めている.この結果は,単純な手指運動でも運動頻度に応じて同側の活動性が増加する可能性があることを示し,左右半球間の活動性の調節は半球間抑制以外のものがあることを示唆すると考える.今後は対象数を増やすとともに下肢運動でも検証する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,ヒトとの接触を避けて実施することが困難である.また,令和4年度は感染者数増加に伴う大型の流行が2回あり,これまで以上に慎重に実験を計画・実施せざるを得なかった.さらに研究機器の予期せぬ故障と修理のための研究休止期間があった.そのため,現状の研究成果は当初目標と比べ満足できるものではなく,令和5年度も本研究を継続して実施したい.また,上肢運動については令和4年度に追加した評価項目についても評価を進めることができているが,下肢運動については十分な結果を得られていない.故障した機器の修理は完了し,現在問題なく使用できていることから本年度に当初目標を達成できるよう努める.
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今後の研究の推進方策 |
今後実施すべき実験項目は,(1)一側手運動の頻度と負荷の有無が同側運動野の活動性に与える影響の検証,(2)一側足運動時の同側運動野の活動性に与える影響の検証,と考えている.(1)の課題では同側運動野の活動性が頻度によって増加するケースがみられた.したがって,次年度も引き続き本項目についての実験を継続実施する.(2)については手運動以上に運動時に特定の刺激点を維持して磁気刺激することが難しい技術的な問題があった.そのため,足関節を背屈または底屈させる静止足姿勢での運動野の活動性評価を行う.これまで本研究を実施してきた中で解決しなければならない問題はいくつかあったが,他の研究者,技術者への問い合わせなどして解決してきた.(1)と(2)の項目を達成することで上下肢支配運動野の活動性の増加が同様に発現しているのかを考察することが可能であり,歩行時の脳活動についてもこれまでとは異なる視点で考察できると考える.次年度は,さらに多くの研究協力者からのデータ収集を測り,研究成果を公表したい.
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