研究課題/領域番号 |
19K11379
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
森 禎章 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 名誉教授 (70268192)
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研究分担者 |
山路 純子 (田代純子) 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 教授 (40340559)
廣島 玲子 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 准教授 (40404777)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | ミオシン重鎖タイプI / CGRP / cAMP / PKA / CREB / Epac / C2C12細胞 / サルコペニア / ミオシン重鎖 / カルシトニン遺伝子関連ペプチド / インスリン様成長因子-1 |
研究開始時の研究の概要 |
加齢により発症する一次性サルコペニアでは、骨格筋収縮タンパクのうちミオシン重鎖タイプIIb線維が低下することが知られているが、その発症メカニズムは解明されておらず、治療法・予防法も確立されていない。したがって、サルコペニア予防を行うためには、タイプIIb線維を増加させるメカニズムを同定し、タイプIIb線維の減少を防ぐ方策を開発することが必要である。そこで、本研究では運動神経などの末梢神経終末から放出され、骨格筋細胞に受容体が発現しているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に着目し、培養骨格筋細胞およびラットを用いてタイプIIb線維を増加させる方策を分子生物学的手法により検討する
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研究実績の概要 |
本研究では、骨格筋細胞に受容体が発現することが確認されているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に着目し、CGRP刺激によって活性化されるcAMPを介した細胞内シグナル伝達経路について検討を加えた。C2C12細胞を用いて、ミオシン重鎖タイプI(MyHC I)およびIL-6 mRNA発現量の変化をリアルタイム定量PCR法により観察し、細胞内cAMP産生量の増加や、cAMPにより活性化するタンパクリン酸化酵素であるPKA(protein kinase A)ならびに転写因子であるCREB(cAMP-responsive element binding protein)の作用について検討してきた。この結果、アデニル酸シクラーゼ活性化剤の投与により細胞内cAMP産生量を増加させると、MyHC IのmRNA発現量は有意に増加するが、IL-6のmRNA発現量は殆ど変化しない事、またアデニル酸シクラーゼ活性化剤とPKA阻害剤を同時投与すると、アデニル酸シクラーゼ活性化剤単独投与に比べMyHC I mRNA発現量が有意に抑制されることから、この過程の一部にはPKA活性化が関与している事が明らかとなった。また、CREB阻害剤投与ではMyHC I mRNA発現量がむしろ増加する事から、CREBの活性化によりMyHC I mRNA発現を抑制するメカニズムの存在が示唆された。さらに、本年度の検討ではcAMPにより直接活性化される交換タンパク質であるEpac(exchange protein directly activated by cAMP)を介する経路がMyHC I mRNA発現量の増加に関与しているかを検討した。この結果、Epac2阻害剤の投与によりMyHC I mRNA発現量が若干低下することから、この過程がMyHC I mRNAの発現に直接関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の到達目標は、C2C12細胞においてカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)やβ刺激剤投与等による細胞内cAMP産生量の増加が、PKA(protein kinase A)活性化以外の経路を介してミオシン重鎖タイプI(MyHC I) mRNA発現量を増加させるかを検討することであった。細胞内でのcAMP産生量増加により活性化されるPKA以外の細胞内シグナル伝達経路については、cAMPそのものがPKAを介さず直接転写因子であるCREB(cAMP-responsive element binding protein)を活性化する経路、あるいは交換タンパク質である Epac(exchange protein directly activated by cAMP)の活性化を介する経路が想定されるため、昨年度はCREBについての検討を行い、CREBの活性化はむしろMyHC I mRNA発現を抑制する傾向であることが明らかとなった。本年度はEpacの活性化を介する経路について検討を加えたが、申請者の職種が変更となったため業務量が増加し研究時間が減少したため、その一部を検討するのみに留まった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討では、cAMPが直接活性化する交換タンパク質であるEpac(exchange protein directly activated by cAMP)がミオシン重鎖タイプI(MyHC I) mRNA発現量増加に関与しているかを、その下流のシグナル伝達経路を含めて検討する予定であった。しかしながら、本年度はEpacの2つのサブタイプのうちEpac2についてのみ検討を加えるに留まり、アデニル酸シクラーゼ活性化剤によりcAMP産生を増加させた状態でEpac2阻害剤を投与すると、cAMP産生量増加により上昇したMyHC I mRNA発現量が若干減少することが明らかとなった。したがって、次年度はEpac2に加えてEpac1の活性化がMyHC I mRNAの発現に関与しているかを検討するとともに、Epacの活性化がどのような細胞内シグナル伝達経路を介してMyHC I mRNAの発現に関与しているかについても検討する。具体的には、Epac1阻害剤ならびにEpac選択的cAMPアナログの投与によるMyHC I mRNA発現量の変化を観察するとともに、Epac の下流標的分子であるGTPアーゼの活性変化やEpac以外のGTPアーゼの活性化因子、さらに下流の細胞内シグナル伝達経路についても検討を加える予定である。
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