研究課題
基盤研究(C)
国は「健康づくりのための身体活動基準2013」を示し、科学的根拠に基づく情報を国民の自主的な取り組みに対して支援できるよう提供している。一方で、基準策定にあたっては日本人のエビデンスが少ないという課題が残されている。本研究は、体力データと健診データから疾病発症との関連を調査し、基準値の妥当性の検証や日本人のエビデンスを蓄積するための研究を実施する。さらに、全身持久力以外の体力と疾病発症との関連を調査し、新規予防法開発に向けたコホート研究を実施する。また、体力測定結果を健康リスクの早期発見ツールとして活用するためのフィードバック方法の開発を試みる。
全身持久力・筋力・柔軟性は体力の主要な構成要素である。全身持久力や筋力は、健康関連体力として重要視され、これまでに多くの先行研究によって疾病発症との関連が報告されている。一方で、柔軟性については、全身持久力や筋力といった体力ほど重要視されてこなかった。柔軟性の向上に資する運動であるストレッチングにより動脈スティフネスや高血圧発症リスクとの関係を調査した結果をまとめた。柔軟性の加齢変化と性差をみると、加齢に伴う柔軟性の低下は40~50歳代から、いくつかの関節において低下が見られ、特に体幹と肩の柔軟性が最も加齢の影響を受けることが報告されていた。性差については、幼少期から高齢期に至るまで、女性の方が男性よりも高い値を示す傾向にあった。動脈スティフネスの加齢変化と性差をみると、柔軟性の変化と似た傾向を示し、動脈スティフネスの上昇は中年期以降に加速し、性差については女性の方が男性よりも低い、つまり動脈壁の柔軟性が高い傾向を示すことが報告されていた。身体の柔軟性に関連するメカニズムとしては、神経系(随意収縮や反射によるコントロール)、筋の特性、関節や皮膚組織の特性が関連すると考えられた。これまでに我々が実施した研究は観察研究であるため、柔軟性と動脈スティフネスや高血圧発症との間に因果関係があるのかどうかを判断するためには、関連の可逆性(柔軟性が向上すると動脈スティフネスや高血圧は改善するのか)や生物学的妥当性(柔軟性と動脈スティフネスの関連を支持する機序が存在するのか)を検討する必要がある。疫学的アプローチや生理学的アプローチからの研究や柔軟性の測定方法や定義などについては課題が残されており、効果的なストレッチングのプログラムを考えるためには、これらの課題についても引き続き検討していく必要がある。
3: やや遅れている
昨年度までに、全身持久力以外の健康関連体力である柔軟性と疾病発症との関連を調査し、新規予防法開発に向けたコホート研究を実施した。柔軟性と高血圧罹患との間には有意な負の関連があることを報告している。また、柔軟性の向上に資する運動であるストレッチングの効果についての文献レビューや、ストレッチングの有用性についてシンポジウムを行った。コロナ禍の影響により研究成果について海外での発表を見送り、文献レビューの範囲を拡大して実施している。
今後も引き続き文献レビューの範囲を拡大し、健康関連体力と健康リスクとの関係をまとめる。柔軟性の向上に資する運動であるストレッチングや柔軟性の評価方法や定義における課題も整理する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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