研究課題/領域番号 |
19K11609
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59030:体育および身体教育学関連
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研究機関 | 大阪商業大学 |
研究代表者 |
迫 俊道 大阪商業大学, 公共学部, 教授 (40423967)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 身体教育 / なぞり / さぐり / 同調 |
研究開始時の研究の概要 |
伝統芸能の継承活動では、学習者が指導者の手本を模倣する「なぞり」の行為がある。指導者にも学習者の動きを「なぞる」行為が見られる。さらに指導者は学習者が抱える躓きの原因を探る行為(「さぐり」)を行うことが考えられる。 本研究では伝統芸能の伝承者(指導者、学習者)の間で展開される相互作用、その中でも「なぞり」と「さぐり」に関する記述を文献資料から析出し、その内容を精査する。さらに参与観察から伝承者の具体的な言動を映像記録し、インタビュー調査(再生刺激法)等を行い、伝統芸能の身体教育における「なぞり」と「さぐり」の構造とその意義を考察する。
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研究実績の概要 |
2022年度に実施した意見交換で採録された音声データのトランスクリプトの作成を行った。石内神楽団の参与観察を2023年5月13日から開始し、第2回目を5月27日に実施した。第3回目以降も継続する予定であったが、調査者の実母が他界したために中断した。 これまでは神楽の指導者と学習者の相互作用に関して、全体的な模様を映像収録してきた。2022年度に実施した意見交換において、指導者の視点から学習者を撮影する必要性が指摘された。2023年度は、指導者の位置から学習者を撮影、観察することを試みた。 その結果、学習者が指導者に対して行う微細な行為、その実態を観察することが出来た。身体所作の「なぞり」の出来栄えに不安を感じる、舞の手順を覚えていない学習者は、指導者に視線を送る。学習者は指導者に視線を向けることによって神楽舞の動きの成否を確認しているようだった。 指導者は、太鼓などの神楽囃子を担当しながら、学習者の神楽舞の習得状況を確認し、手順が逆であれば「逆」と声を出す。学習者の動きに間違いがあれば、太鼓の音やリズムが崩れる。指導者は頭の中で神楽を舞い、眼前の学習者の動きが正しいかどうか(「さぐり」ながら)検証している。指導者の視点から、学習者が指導者の身体所作を「なぞろう」とする行為を観察することによって、指導者と学習者で展開される相互作用の具体層の一部が明らかとなった。 本研究の現代的意義を検証するために、論文、論説、新聞などの内容を確認し、身体教育(「なぞり」「さぐり」)に関連する資料の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度にスポーツ、情報教育、フロー理論、武道などに精通している研究者と本研究の中核に位置づく「身体教育」に付随する事項について意見交換を実施した。2023年度に採録された音声データのトランスクリプトを作成した。トランスクリプト作成後、本研究と関連性の深い「なぞり」「さぐり」に関連する記述の抽出、およびその部分とICレコーダーに収録された音声データの照合作業は実施できなかった。 2022年度に実施した参与観察では、指導者が学習者に身体所作の指導を行う場面に焦点を合わせて、その「全体的な模様」を収録する撮影を行った。参与観察の際に記録したメモをもとにして、「なぞり」「さぐり」の具体的行為が見られる部分を析出する作業を行った。 2023年度は、「指導者の視点」から学習者の身体所作の習得状況を捉える映像を収録した。しかし、参与観察を二度ほど行った時点で、調査者の親族に不幸があり、参与観察を中断せざるを得なくなった。2024年度も参与観察の実施を検討する必要が出てきた。指導者に対するインタビュー調査は、参与観察の際に教え方に関する簡潔な質問を指導者に行い、回答を得ることが出来た。 これまでに収集された、伝統芸能の指導学習プロセス、稽古における技と心に関する資料を確認した。研究資料の収集は今後も継続して行う必要がある。 研究成果について、スポーツ科学(身体)の研究者と意見交換を行う予定であったが、参与観察が十分に実施できなかったこともあり、実施を見送った。以上から、補助事業期間を再延長するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に意見交換のトランスクリプトの作成を行った。本研究と関連の深い部分を析出する作業を行う。抽出されたトランスクリプトの内容について音声データとの照合作業を行う。 伝統芸能の練習場面で指導者が学習者にかける言葉は、その瞬間でしか意味をなさないものがある。その場で生まれてその場で消える「言葉」や「身振り手振り」で指導者と学習者は教え学んでいる。研究の過程で収録された映像や音声を分析する際には、そのコンテクストや状況の描出もあわせて行う必要がある。 石内神楽団の参与観察を2024年5月中に実施する。今年度の活動内容、役職の確認を行う。指導・学習の様子をデジタルビデオカメラで撮影する。指導者と学習者の様子を観察しながら、具体的出来事をフィールドノートとして記録する。 これまでに文献研究として、収集した論文、論説、新聞記事などを精査しながら、伝統芸能の身体教育の意義に関連する資料収集を継続する。 2020年度までに実施した再生刺激法をともなうインタビュー調査、2021年度、2022年度に実施した意見交換(オンラインなど)、収集された研究資料など、過去5年間に行ってきた研究成果の整理を行う。トランクリプト、参与観察で得られた映像、文献研究、インタビュー調査の結果を総合的に整理し、伝統芸能の身体教育における「なぞり」と「さぐり」の構造を分析し、本研究の現代的意義を検証する。必要に応じて身体教育に精通する研究者との意見交換、国立国会図書館で身体論、身体教育論、コーチングに関する研究資料の収集を行う。
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