研究課題/領域番号 |
19K11633
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59030:体育および身体教育学関連
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
徳永 隆治 安田女子大学, 教育学部, 教授 (60310843)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 体育科授業 / 伝える活動 / クローズド・スキル / 集団思考場面 / 問いかけ / 児童相互の伝え合い / 学習過程における集団思考場面 / 観察視点の絞り込み / 教師の問いかけ / 児童の自己課題 / 伝える力 / 教師活動 / 考える学習場面の設定 / 発問・助言 / 他者に広げる学習活動 / 学習課題のイメージ化 / 育成すべき資質・能力 / 授業分析 / ボールゲーム / 児童の表現力 / 小学校体育科授業 / 思考・判断・表現 |
研究開始時の研究の概要 |
小学校学習指導要領(平成29 年版)に示された育成すべき資質・能力のうち,特に体育科における「伝える力」を育成するのための知見を得る。授業観察・収録をもとに,児童が教師及び他者に何をどのように伝えようとしているかの実態を把握し,体育科授業において「伝える」ことが本人及び他の児童の学習にどのように影響するかを追究すると共に,教師の児童に対する働きかけを把握することにより,教師活動が児童相互の伝え合いや,伝える内容にどのように影響を及ぼしているかを分析し,その在り方を追究する。
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研究実績の概要 |
研究期間の延長を承認されて最終年度となった2022年度も新型コロナウィルス感染症対策のため小学校での体育科授業の参観及びその収録を実施することができなかった。そのため本年度は過年度に観察・収録した授業を対象に分析を進めた。2021年度までの事例的研究によって見出された児童の「伝える」活動と、それを引き出す教師活動の要点は、ゲーム及びボール運動領域の授業の分析によるものであった。オープン・スキルを主とした学習内容であり、分析の結果に偏りが考えられることから、本年度はクローズド・スキルの授業分析に焦点づけ、跳び箱運動「台上前転」の授業を分析の対象とした。児童の伝える活動を視点に体育科教育学及び一般教授学の知見を取り入れながら授業の質的な分析に努めた結果、これまでに分析した授業に比べ、技術ポイントに関する児童の発言や動作が数多く見られ、教材の特性から伝えるべき内容が明確になり、伝える活動が生じやすいのではないかと考えられた。児童自身が学習課題を明確にするために学習過程に集団思考場面を設け、そこで教師の問いかけと児童の示範や発言を通して技術ポイントを明らかにすることが有効であることは、これまでの研究結果と同様であった。加えて、教師から児童への「なぜ?」の問いかけが思考・判断を深め、児童自身が納得して課題を持つことができ、相互の伝え合いが活性化したと考えられた。特に児童の技術認識について「なぜ?」を問いかけることが児童の納得したうえでの課題意識を引き出すといった、教育方法として一般的に指摘されていることが体育科学習においても確かめることができた。この事例研究の結果は、クローズド・スキルを主とした他の授業において追認できるかを検証すると共に、授業における教師の「なぜ?」の問いかけの重要性を検討することが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに小学校体育科の授業を分析することにより、体育科授業において児童相互に伝え合う行為を重要な学習活動の一面として追認しながら、児童が教師や他者に伝える活動を活性化させるための指導の在り方を事例的に追究してきた。「伝える力」が発揮された学習活動の実態とそれを引き出す指導方法について次の点を明らかにした。すなわち、「伝える」ためには、児童自身が本時の指導目標に関わる自己課題を明確に持っていること、そのための学習過程の在り方として児童による「集団思考場面」を設けること、そこでの教師の発問、授業を通した刻々の評価活動、場づくりなど教師の活動が重要な役割を果たすことである。これまでの授業観察・分析の過程で、教材により伝え合いに違いがみられるのではないかと考えるに至った。体育科の教材は、知識・技能の習得において大きく「オープン・スキル」「クローズド・スキル」に分類され、それぞれの学習内容には特性の違いがあることから児童相互の伝え合いの内容も異なってくると考えられ、両者による「伝え方」の違いを明らかにする必要が生じた。 2021年度までの授業分析により「伝える力」の育成につながると考えられる学習過程や教師の活動を見出してきたが、対象とした授業がオープン・スキルの運動学習に偏っており、これまで明らかになったことが同様にクローズド・スキルの運動学習においても認められるかを追究することが求められた。しかし、2022年度に器械運動領域の授業を分析したものの、授業観察・収録が限定されてきたためにその研究課題が十分には果たされていない。多様な教材の授業分析によってクローズド・スキルの運動学習に児童の「伝える」活動及びそれを引き出す指導の効果を追認すると共に、運動内容による違いや共通点が明らかになれば、児童の「伝える力」の育成において、教材により重点の置き方を変えることも可能になる。
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今後の研究の推進方策 |
小学校体育科の普段の授業を観察・収録し、児童の「伝える力」の表出と、それを引き出す教師活動の実態を分析し、児童が伝える活動の質的な把握とその指導方法の追究に努めている。その研究結果として、児童の「伝える」活動を活性化するために、「集団思考場面」を設ける授業過程と教師の問いかけを媒介に児童自身の課題意識を明確にすることの重要性を確かめることができた。そのうえで、運動領域による学習内容の違いも活性化の要因になるのではないかと考えられ、オープン・スキルとクロースド・スキルの運動学習による違いに着目した。2022年度の研究結果からボール運動系と器械運動系の運動学習に児童の伝える活動の違いがみられたことを踏まえ、2023年度、授業観察・収録の機会が拡大できる状況になったことから多くの授業分析によってその検証を図りたい。器械運動領域の内容に加え、陸上運動領域の授業、さらに、他領域とは異質と考えられる体つくり運動領域の授業を対象に追究する予定である。また、教師の問いかけの重要性について、特に「なぜ?」「どうして?」を問うことによる児童の「伝える」活動との関連性を追究する。その結果から「伝える力」を育成する授業の指導計画に一定の知見を得ることを目指したい。
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