研究課題
基盤研究(C)
我が国は超高齢化社会を迎え、さらに国民の多くが慢性的な疲労を抱えている現代において、健康脆弱化をいかに防ぐかは重要な課題である。加齢に伴い易疲労化が進み、疲労回復性が低下することや、疲労による生体酸化が老化を促進すると考えられていることから、加齢および疲労による健康脆弱化と脳の構造および機能との関連を解き明かすことを目的として本研究を推進する。これまでの研究から加齢に伴う脳の皮質構造の変化が明らかとなってきたが、疲労が同様の変化をもたらすかは分かっていない。本研究では加齢および疲労、その両者の相互作用によってどのような脳の皮質構造および機能がどのように変化するかを明らかにする。
本研究では、ミエリンや神経突起を含むマルチモーダル脳指標(CM)と、年齢、疲労、認知機能などの被験者指標(SM)との関連について横断的MRI研究を行った。CMとSMを用いた正準相関分析(CCA)により、SMのCCA1の負荷は年齢およびセットシフトに関連する認知能力と高い相関を示したが、感情状態および疲労指数とは有意な相関を示さなかった。CMのCCA1の負荷は、ミエリンおよび神経突起密度と相関し、細胞外コンパートメントおよび皮質厚と逆相関した。 この所見は、脳がライフスパンを通して可塑的なシステムから安定的なシステムへと移行することを示唆しており、これが認知の結晶化を支えている可能性がある。
世界中で高齢化が加速している。中でも日本は2019年に世界に先駆け超高齢化時代を迎えている。これまでの研究から加齢はしばしば認知機能の低下や脳の萎縮と関連を示めされきている。しかしながら、大脳皮質を構築するミエリンや神経突起さらにはグリアなどの微細構造がヒトのライフスパンにおいてどのように変化するかはほとんど分かっていなかった。本研究では若年から老年までの横断的な脳画像データを用いて、皮質微細構造の加齢変化を明らかにすることで、ヒトの脳がライフスパンを通して可塑的なシステムから安定的なシステムへと移行する可能性を示した。
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