研究課題
基盤研究(C)
コレステロール摂取については、摂取量と血液検査値の関連を示す根拠がないことから、米国ではコレステロール摂取制限をなくす声明が行われた。しかし、疫学研究からコレステロール過剰摂取は脂肪肝を増悪させ、肝硬変や肝臓癌のリスクを上昇させることが報告されている。本研究では、動物実験と臨床検体の解析から、コレステロール過剰摂取が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の増悪と発癌に及ぼす影響を明らかにし、そのメカニズムを脂質代謝の側面から解明する。
本研究では、コレステロールの過剰摂取が人体(NAFLD)へ与える影響を解明するために、高コレステロール含有高脂肪食を用いてマウスを飼育し検討を行った。コレステロールの過剰摂取は肝内のCYP7A1の発現増加とCYP27A1の発現低下を誘導し、胆汁酸の代謝に影響を及ぼした。その結果、胆汁酸の分画、腸内細菌叢を変化させ、肝臓内の中性脂肪やコレステロールの沈着量を増加させることにより脂肪肝を悪化し、長期間の負荷により肝炎や肝線維化を増悪させ、肝癌を発生させることが示唆された。食事中のコレステロールの摂取制限を行うことは、非アルコール性脂肪性肝疾患の病態の悪化を予防するために重要である。
近年疫学研究や動物実験でコレステロール摂取により脂肪沈着の増強や肝炎、線維化の増悪が報告され、脂肪性肝疾患の病態進展におけるコレステロール代謝の重要性が認識され始めている。従来、コレステロールは動脈硬化性疾患との関連が強いため、心筋梗塞、脳梗塞のリスクをもとに管理目標が設定されている。また、食事からのコレステロール摂取量と血中コレステロール値の関連を示す根拠がないため、コレステロール摂取制限に対する意識が低下している。しかし、肝疾患ではコレステロール過剰摂取が肝硬変、肝細胞癌などのリスクを増加させる可能性が報告され、肝疾患をもとにコレステロール摂取制限について再検証する必要があると考えられる。
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