研究課題/領域番号 |
19K11752
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
高 ひかり 順天堂大学, 大学院医学研究科, 助教 (60338374)
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研究分担者 |
加賀 直子 順天堂大学, 大学院医学研究科, 助教 (80338342)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 高脂肪食 / 低出生体重児 / 発症前診断 / 先制医療 / 質量分析 / 低出生体重 / 非感染性慢性疾患 / 体質と環境 / メタボリック症候群 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では低出生体重仔に高脂肪食を負荷し、血中・肝臓代謝物やDNAメチル化の変動、タンパク質(酵素・ヒストンの翻訳後修飾など)を質量分析法を用いて解析する。この結果より、高脂肪食負荷による低出生体重仔へもたらすNCDsリスク因子を同定する。同定されたリスク因子の相関性をネットワーク解析により明らかにし、NCDs発症機序を解明する。NCDs早期発症リスクの抽出・診断法の確立により、近年増加を続ける低出生体重児のNCDs発症に対し積極的な早期介入を行うことが可能になり、健康寿命の増加および次世代の子らに対する負の連鎖を断ち切ることができる。
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研究実績の概要 |
エピジェネティック(遺伝子の塩基配列変化ではなく遺伝子発現のオン/オフ)変化は環境に左右されやすく世代を超えて伝播し影響をそのまま後の世代に及ぼす。低出生体重児は出生時すでに非感染性疾患(生活習慣の改善により予防可能な疾患)の発症リスクを持ち、その発症率は現代の富栄養環境下ではより高くなる。しかしながら、低出生時体重児がなぜ高脂肪食負荷由来と同様の疾患発症リスクを負うのか、その分子メカニズムについてはまだほとんど明らかになっていない。しかし、代謝物変化とエピジェネティック変化には密接な関係がある事は明らかになっている。例えばメチオニン代謝におけるSアデノシルメチオニンがDNAのメチル化やヒストンのメチル化に寄与しエピジェネティック変化を引き起こす。出生時低体重児が持つ体質と環境のミスマッチにより生じる疾患発症の分子メカニズム解明のため、代謝物の変化を観察しリスク因子を同定する。そこで我々は、高脂肪食負荷モデルラットを作製し実験を行っている。昨年度はラット肝臓組織に内部標準の入ったメタノールを加えホモジナイズし、クロロホルムと水を加え限外ろ過フィルターで処理後、水層(親水性代謝物)をキャピラリー電気泳動/質量分析で測定(CE /MS)した。今年度はクロロホルム層(脂溶性代謝物)を高速液体クロマトグラフィー/質量分析(LC /MS)によって網羅的に分析した。その結果、血清の実験において胆汁酸が高脂肪食負荷や低出生体重仔において大きく変動していたが、肝臓の脂溶性代謝物の解析からもその結果を裏付けるデータが得られた。また、胆汁酸の他にもリン脂質や興味ある変動を示す代謝物がいくつか見つかった。しかしこれらの代謝物全ての同定までには至っていない。今後、低出生時体重と高脂肪食負荷により変動した代謝物の中からリスクとなる代謝物を絞り、その物質の同定に力を入れて研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、高速液体クロマトグラフィー/質量分析(LC /MS)を用いて肝臓組織の脂溶性代謝物の網羅的分析を行った。しかし、今年度も業務に追われ自身の研究に費やす時間が持てなかったため、前年度までの遅れを取り戻す事ができなかった。そのためやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
LC/MSを用いた脂溶性代謝物の網羅的分析により、低出生時体重と高脂肪食負荷による変動のある多くの代謝物を見つける事が出来た。しかし、変動のあった代謝物の多くは量が少なく代謝物の同定までは至らなかった。今後、量を増やして分析を行い全ての興味深い代謝物を同定する。同定された代謝物からリスク因子になりうるかどうかを精査する。さらに、解析対象をタンパク質(酵素)や遊離ペプチド等に広げ、同定された代謝物からエピジェネティック変化につながる即ち遺伝子発現のオン/オフスイッチと密接な関係を持つ代謝経路を探索する。それらの代謝経路間の相互作用が、組織間コミュニケーションを如何に変化させるのか、またこれらの代謝物の変動が非感染性疾患と関連するホルモン分泌、免疫応答、インスリン作用、神経機能の調節とどのようにかかわっているのかそのメカニズムの詳細な解析を進めていく。分析したすべてのデ-タを総括し低出生体重児における体質と環境のミスマッチに起因するリスク因子を同定し、非感染性慢性疾患の発症前診断への応用をめざす。
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