研究課題
基盤研究(C)
本研究では、生活習慣病特異的なリン・ビタミンD代謝制御機構の解明と重症化に対する新しい予防・治療法の開発を目的として、健常者および透析患者の白血球、腎不全、糖尿病、急性炎症疾患のモデル動物の骨、腸管、腎臓、肝臓そして心血管組織を用いてリン感受性遺伝子群(FGF23、PTH、alpha-Klotho、Nrf2標的遺伝子、ビタミンD代謝酵素、時計遺伝子)の発現変動を解析すると同時に、リン制限食、リン吸着薬および25(OH)D3または1,25(OH)2D3投与による各遺伝子の発現感受性を明らかにする。
本研究課題は、生活習慣病疾患特異的なリン・ビタミンDの臓器間代謝制御機構の解明を行い、重症化および合併症予防法の開発を目的としたものである。本年度は、これまでに同定した食事性リンに応答性する遺伝子群が、糖尿病状態においてその応答性がどのように影響を受けるか解析した。(1)同定したリン応答遺伝子の中で糖代謝関連遺伝子において腎臓および肝臓における反応性の違いを検討した。その結果、糖代謝関連遺伝子のmRNA発現に対する食餌性リンの応答性は、主に腎臓で確認されるが肝臓では微弱な反応にとどまり、組織間でリン応答性が異なることが明らかになった。(2)生後6週齢雄性コントロールマウス、KK-Ay/TaJclマウス(以下、糖尿病マウス)を高脂肪食で、27日間飼育した後、リン含有量の異なるLP食(0.15%)およびHP食(1.5%)を7日間摂取させた。その結果、腎臓における糖代謝関連遺伝子のmRNA発現に対する食餌性リンの応答性は、健常マウスと糖尿マウスで異なることが明らかになった。このことから、糖尿病では、糖・インスリンに対する抵抗性だけでなく、食餌性リンに対する抵抗性も生じている可能性が考えられる。この課題を解明するためには、今後、リン・ビタミンD代謝調節因子であるFGF23やPTH、リン応答に関わる転写因子Nrf2など、詳細な検討が必要と考えている。今後、糖尿病における食事性リンに対する応答メカニズムを解明することは、リンを中心とした新たな糖尿病の栄養管理法の開発につながり、糖尿病におけるビタミンD代謝異常や腎症発症や進展予防に寄与できると考えている。
4: 遅れている
コロナ感染拡大の影響により計画通りの研究を遂行することが困難であった。
引き続き研究を遂行する努力を行い、糖尿病モデル、慢性腎不全モデルおよびLPS感染炎症モデルを用いてリン・ビタミンD代謝に関与する遺伝子群の同定と発現調節機構についての解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件)
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