研究課題/領域番号 |
19K11800
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
吉澤 一巳 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (00711532)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ラフィノース / 腸内細菌叢 / 短鎖脂肪酸 / がん関連疲労 / 担がんモデルマウス / シスプラチン / 疲労様行動 / グルコース / 糖類 / 疲労 / がん増殖能 |
研究開始時の研究の概要 |
がん治療に伴う副作用はがん治療の継続に大きな影響を及ぼすため、副作用を回避しながら治療することが求められている。回避すべき最も頻度の高い副作用は、疲労・倦怠感である。申請者はこれまでの研究で、シスプラチンによって誘発された疲労を実験動物で評価する方法を確立し、グルコースの摂取が疲労予防作用を示すことを見出したが、がん細胞の生存と増殖における糖質依存度は高く、がんの増殖能は亢進する可能性がある。 そこで本研究では、シスプラチン誘発疲労と糖類の投与による疲労改善作用のメカニズムを明らかにし、シスプラチンの副作用を回避しながらがん治療を継続する新たな栄養療法の提示を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、腫瘍自身あるいはがん治療(抗がん剤)により誘発される疲労様行動に対する栄養療法の有用性を検討することである。昨年度までにオリゴ糖の一つであるラフィノースの投与により腫瘍誘発疲労と抗がん剤誘発疲労のいずれも改善されることが明らかとなった。そこで今年度はラフィノースの抗疲労作用のメカニズム解明を目的に検討を行った。 実験には、マウス大腸癌由来細胞株(C26)を BALB/c 雄性マウスの尾静脈に投与した大腸癌肺転移モデルマウスを用いた。昨年度までの研究により、このがん転移モデルマウスの易疲労性には肝グリコーゲン量と血糖値の低下が要因の一部であることを見出している。一方、ラフィノースを5 %含有した飼料をがん転移モデルマウスに摂取させたところ、低下した肝グリコーゲン量と血糖値がいずれも改善していた。しかし、ラフィノースを構成するグルコース、フルクトースおよびガラクトースを合計 5 %含有する飼料の摂取ではがん転移モデルマウスの疲労様行動は改善されず、肝グリコーゲン量と血糖値の低下も改善されなかった。このことから、ラフィノース構成糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース)ではなく、ラフィノース自身による腸内細菌叢の変化が抗疲労作用につながったものと考えられた。そこで、ラフィノース摂取後のがん転移モデルマウスの盲腸内容物を採取し、腸内細菌叢解析および短鎖脂肪酸分析を行った。その結果、ラフィノースの摂取によって短鎖脂肪酸産生菌として知られているバクテロイデス属、プレボテラ属、ルミノコッカス属が増加していた。また、短鎖脂肪酸解析の結果、ラフィノースの摂取によりプロピオン酸と酪酸の産生量が増加していた。プロピオン酸は肝臓で糖新生や脂肪酸合成の基質として利用されるため、ラフィノースの抗疲労作用にはプロピオン酸産生と糖新生が一部関与するものと推察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度と同じく、コロナ禍の影響で研究環境が制限される状況は続いたが、ある程度は計画通りに研究を進めることができたと考える。担がんモデルマウスを用いることで本研究の目的である腫瘍成長に影響を及ぼさずに疲労改善を認める栄養成分を探索することが可能となった。引き続きラフィノース以外の栄養成分を用いて抗疲労作用と抗腫瘍作用の両面から検討を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、最終年度となる。担がんモデルマウスのエネルギー代謝や腸内細菌叢の変化に焦点を当てた疲労のメカニズム解析とラフィノース以外のオリゴ糖でも抗疲労作用が期待できるのかについて検証するつもりである。
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