研究課題/領域番号 |
19K11930
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60060:情報ネットワーク関連
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
森野 博章 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50338654)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 短時間予測 / ITS / V2X / Connected Vehicle / 渋滞緩和 / 車両間通信 / 機械学習 / 交通流制御 / 車両間通信による交通流制御 / 時系列予測 / エッジコンピューティング / 交通流 |
研究開始時の研究の概要 |
高速道路のサグ部など交通集中による自然渋滞が生じやすい箇所において,一部の車両が自動速度制御とセルラー通信機能をもちプローブ車両としてふるまうという前提で,従来よりも渋滞の初期状態を早期に検出し,その後に行う渋滞吸収運転と呼ばれる速度制御と組み合わせることで従来技術よりも大幅に早く渋滞を解消する手法を研究する.プローブ車両は最寄りの5G無線通信基地局内に設置されるエッジサーバに自車の位置と速度を定期的に報告する.サグ部周辺のエッジサーバは互いに連携して報告された複数の車両の位置・速度の軌跡を分析し渋滞の予兆を検出する.検出にはカルマンフィルタと機械学習による手法の2つのアプローチを研究する.
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研究実績の概要 |
高速道路のサグ部手前において,プローブカーから収集する車両速度の時系列データを入力データとし数十秒後の車両速度をLSTMによる多変量短時間予測により予測する手法の特性評価を行った.評価方法は交通流シミュレーションによる. 特に,入力データの次元数が予測誤差に与える影響を評価した.車両速度予測の対象とする車両自身の時系列データのみを入力データとする場合を次元数n=1とし,速度予測の対象車両に加えてその前方1つの領域,2つの領域,..を走行する車両群それぞれの平均速度の時系列データも入力データとする場合をそれぞれn=2, n=3…とした. 車両速度の予測誤差については,RMSEを指標として評価した結果,n=0の場合と比較しn=1,n=2では予測誤差が大きく低減すること,n=1とn=2では予測誤差に大きな差がないことを明らかにした.また,n>0の場合,速度予測対象車両から見て近い位置からi番目の前方車両走行領域(i=1,2,…)と速度予測対象車両の車間時間の値(Thiと表記する)も予測誤差特性に影響がある.現在時刻と予測対象の時刻との時間差(Tdと表記する) とTh1を等しい値に設定した場合に予測誤差が最小となることを明らかにした.次に,予測された速度が閾値を下回ると減速制御を開始し渋滞の軽減を図る手法について,同様に入力データの次元数nが特性に与える影響を評価した n=0,1,2の3通りで評価した結果, n=2, n=1, n=0の順で平均速度の向上効果が高いことを明らかにした.n=1とn=2では上述の通りRMSEで評価される速度の予測誤差には差がなかったが,n=2はn=1と比較し,時速30km/hの非常に定速で走行する車両の比率が低くこれが平均速度向上に寄与することが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題の提案時点では,提案手法の性能について「過去の個々の事例についてn台の車両の速度の時系列データを多次元データとして扱い学習させる.予測においても同様にn台の車両の時系列データを多次元データとして入力する.従来手法と比較して,判定精度(適合率と再現率)を維持しつつ,対象とする渋滞を初めて検知する時刻を1分以上早め,これにより渋滞発生箇所の平均車両走行時間を従来と比べ20%以上短縮させることを目標とする」と目標設定を行った.現時点で提案手法は検知時刻を30秒早め,平均車両走行時間は約15%の短縮を図ることができることを明らかにし,対外発表を行っている.平均車両走行時間の短縮について,おおむね当初の目標を達成したと判断する. また,手法の適用領域に関しては「考慮すべき事項として1) 追跡対象とする道路区間,2) 追跡する時間長 3)追跡する車両の台数 nと相互の位置関係 を設定する.渋滞吸収運転を実施する車両はACCを備えていると仮定し,その車両の比率を変化させて性能依存性を評価する.ACCの搭載率が変化すれば予測の参照データもまた変わる可能性がある.この点については渋滞をシミュレーションで発生させてそこから参照データを得る.」と記述した.このそれぞれについて検討済みであり, ACCの搭載率の変動以外に関しては成果の対外発表を行っている.搭載率変動の影響については既に成果を得ており,今年度中に発表予定である.以上から,おおむね順調に推移していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,全車両のうち制御に参加する車両(自動運転車両)の比率が機械学習の学習データと予測対象のデータとで異なる場合に,予測特性が維持されるかどうかを評価する. また,提案手法をエッジサーバに実装して運用することを想定したソフトウェアを構成する.当初の目標では「本課題ではサーバでの検知処理遅延と車両への通知遅延を合わせて1分程度の時間で処理を終えることを目指す」としており,処理時間をこの時間のオーダに抑えるために必要なハードウェアのスペックを明らかにする.
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