研究課題/領域番号 |
19K12002
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60100:計算科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
張 紹良 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20252273)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 大規模線形方程式 / 反復法 / Krylov部分空間 / Sonneveld部分空間 / 線形方程式 / 数値解法 / 大規模 / 計算科学 |
研究開始時の研究の概要 |
計算科学・データ科学に現れる超大規模線形方程式Ax=bに対して次世代数値計算アルゴリズムを開発する。研究手法として、申請者が開発したGPBi-CG法の理論(一般化積型クリロフ部分空間法)、および同じく申請者の研究グループが開発したBlock IDR(s)法の理論を融合した解法である「一般化積型IDR法:GPIDR(s)法)」(一般化ゾンネベルト部分空間法)を開発することで、2020年以降の超大規模線形方程式への対応を可能とさせる。
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研究実績の概要 |
計算科学・データ科学に現れる超大規模線形方程式 Ax =b に対する次世代数値計算アルゴリズムを開発する.研究手法として,申請者が開発したGPBi-CG法[1]の理論(一般化積型クリロフ部分空間法),および同じく申請者らが開発したBlock IDR(s)法[2]の理論(ゾンネベルト部分空間法)を融合した解法である「一般化積型IDR法:GPIDR(s)法」(一般化ゾンネベルト部分空間法)を開発することで, 2020年以降の超大規模線形方程式への対応を可能とさせる.[1] S.-L. Zhang:SIAMJ. Sci. Comput., 18(1997), pp.537-551, [2] L. Du, S.-L. Zhang et al., J. Comput. Appl. Math., 235(2011), pp.4095-4106. 本研究における学術的問いは 「線形方程式に対する従来法の性能を超える数値解法は開発できるか?」 であり,具体的な問いは以下の3点である. 1. IDR(s)法 の理論(ゾンネベルト部分空間)とGPBi-CG法の理論(一般化積型クリロフ 部分空間)の統一理論を構築できるか? 2. 統一理論からIDR(s)法の高速性とGPBi-CG法の 頑強性を備えたアルゴリズム (GPIDR(s)法:一般化積型ゾンネベルト部分空間法)を構成できるか? 3. 近年の科学技術計算で要求される大規模線形方程式での GPIDR(s)法の有用性を検証できるか?
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超大規模線形方程式の数値解法の開発と実問題への応用を目的とする.国産の数値解法であるGPBi-CG法の理論的根幹である積型クリロフ部分空間理論と,最先端の数理アルゴリズムであるBlock IDR(s)法の理論的根幹であるIDR定理(帰納的次元縮小定理)を統一する着眼点が独創的であり,統一された理論から従来法を凌ぐ高速・高精度・高安定解法を開発することが創造的である. 具体的には,IDR定理は行列1次多項式の積で構成されるという着眼点により,その多項式を積型クリロフ部分空間理論で用いられるLanczos多項式(数値計算の丸め誤差に対して頑強)を用いることにより「一般化積型IDR定理」を構築する. このことによりLanczos多項式内の係数の選び方により,従来のIDR定理が得られるという意味で一般化されている.さらにこの一般化積型IDR定理(高い視点)により,次世代の数値解法になり得る一般化積型IDR法 (GPIDR(s)法)を開発する. まず,2020年度から一般化積型IDR定理の構築を改善し,有限回の反復で線形部分空間の次元がゼロになることを証明する.これは導出される解法に対する収束性(有限回反復で解に収束するため)の理論保証となる. 次に一般化積型IDR定理に基づく解法を導出するが,生成される解法には多様性があるため,数値的に丸め誤差の影響を最も受けにくい解法を数値実験結果(フィードバック)に基づき明らかにする.さらに,行列関数の計算や行列方程式の求解への応用を検討する.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画の実現については,IDR定理の拡張(一般化積型IDR定理)が研究の根幹であり,論文[3]にあるように十分把握している.さらに一般化積型IDR定理を構築するために必要なLanczos多項式についてはGPBi-CG法[2]の研究から明らかであるため,一般化積型 IDR定理の実現性は高いと考えている. さらに,一般化積型IDR定理から導出される,(GPBi-CG法とIDR(s)法の融合として位置づけられる)GPIDR(s)法の導出に当たっては,積型クリロフ部分空間法の枠組みの中でGPBi-CG法を導出した経験[1],そしてIDR定理からBlock IDR(s)法を導出した経験[3]により研究期間があれば問題なく実施できると考えている. なお,近年ではシフト線形方程式という計算物理学や最適化問題に現れる専用の解法をIDR定理に基づき開発しており[3],解法開発の職人的研究センスは向上している状況である. [1] S.-L. Zhang: SIAM J. Sci. Comput., 18(1997), pp.537-551.【査読有】, [2] L. Du, S.-L. Zhang et al., J. Comput. Appl. Math., 235(2011),pp.4095-4106. 【査読有】, [3] L. Du, S.-L. Zhang et al., J. Comput. Appl. Math., 274(2015), pp.35-43. 【査読有】 ※L.Du 氏(現:大連理工大学・副教授)は,申請者(張:Zhang)の博士課程指導学生であった.
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