研究課題/領域番号 |
19K12098
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61030:知能情報学関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
齋藤 寿樹 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (00590390)
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研究分担者 |
川原 純 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (20572473)
吉仲 亮 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (80466424)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 列挙アルゴリズム / グラフクラス / 展開図 / アルゴリズム / 辺削除問題 / 列挙 / グラフアルゴリズム / グラフ / データ構造 / ZDD |
研究開始時の研究の概要 |
グラフは様々な現実問題を表現する離散的なモデルとして優れたツールである.特に幾何的特徴を持つグラフは,地理情報やセンサーネットワークなどの幾何データをはじめ,様々な実問題のモデル化として現れるグラフで,盛んに研究が行われている.フロンティア法は特定の性質を満たすすべての部分グラフをコンパクトに表現する ZDD と呼ばれるデータ構造を高速に構築し,ZDD に備わる演算体系を構築された ZDD に適用することで,多くの実問題が解かれてきた.本研究では,フロンティア法の拡張性を高めるための新たな技法を設計するとともに,その技法を適用した幾何的特徴を持つグラフに対する高速なアルゴリズムを開発する.
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研究実績の概要 |
本研究は幾何的特徴を持つ様々なグラフクラスに対して,ラベル付きおよびラベルなしのグラフを列挙するアルゴリズムを開発し,それらのアルゴリズムの高速化を行っている.2022年度は主に幾何的な特徴を持つグラフに対するグラフ同型性を考慮したグラフ列挙アルゴリズムと多面体の辺展開図の列挙アルゴリズムの開発を行った.
グラフ同型性を考慮した幾何的な特徴を持つグラフに対する効率的な列挙アルゴリズムの開発を行った.具体的には真区間グラフ,二部置換グラフ,補鎖グラフ,鎖グラフに対して,ZDD を用いて多項式時間のアルゴリズムを開発している.ZDD とは集合族を圧縮するデータ構造で,膨大な数のグラフ構造を高圧縮で表現することに成功した.これらのグラフクラスのうち,真区間グラフと二部置換グラフは 2n ビットでの対応の取れた文字列として,また補鎖グラフと鎖グラフは n ビットの文字列で表現することができる.これらの文字列とグラフは1対1に対応せず,対称性を考慮する必要がある.対称性をうまく扱うことにより,頂点数 n に対して,n の多項式時間で効率的に列挙可能であることを示した.
3次元の多面体を辺に沿って切り開いて2次元上に埋め込む展開図を考える.多面体の展開図は折り紙の基本的な構造として数学や工学などの分野で研究が進められており,代表的なものとして立方体には辺に沿って切り開くと11種類があり,それらは重なりを持たない.しかし,特定の多面体の切り開き方によっては展開図に重なりがある場合がある.これまでいくつかのアルキメデスの立体において重なりを持つ辺展開図が存在する/存在しない,ことが示されていた.本研究では,多面体に対する辺展開図を求めるアルゴリズムを開発し,それを応用することにより,すべてのアルキメデスの立体を含む整面凸多面体すべてにおいて,重なりを持つ辺展開の有無を示すことに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は幾何的な特徴を持つグラフに対するグラフ同型性を考慮したグラフ列挙アルゴリズムと多面体の辺展開図の列挙アルゴリズムの開発を行い,これらの研究成果は国内での研究会や査読付き国際会議で発表を行った.今後はこれらの研究成果をまとめ,国際論文誌へ投稿する予定である.今後もこれらの成果をさらに発展させることが期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究成果を発展させた拡張問題を扱っていく.本研究においてグラフ同型性を考慮したグラフ列挙アルゴリズムは拡張性が高く,これまでに頂点数だけでなく,辺数や最大クリークサイズなど,様々な制約を持ったグラフをわずかなアルゴリズムの変更で効率的に列挙できることを示した.今後は最大独立集合サイズや連結度など,他の特徴を持つようなグラフが列挙できないかを検討していく.
またグラフ同型性を考慮したアルゴリズムでは,列挙対象とするグラフが対応のとれたカッコ列と対応することを利用して列挙を行っている.すでにアルゴリズムを開発したグラフクラスでは同型なグラフは左右からの対称性のみを考慮すればよかった.しかし,同様にカッコ列との対応を持つ根付き木の列挙を効率的に列挙できるかがわかっていない.標準形となる根付き木を列挙するには,子の順序などを考慮しなければならないため,それらの情報をコンパクトに表現することは難しい.また根付き木の列挙が効率的に行えることに成功すれば,列挙対象を根付き木を特徴づけとして持つグラフクラスへの拡張が期待できる.こうした問題を解決するために新たな標準形の定義や根付き木に対する新たな性質の発見を目指す.
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