研究課題/領域番号 |
19K12175
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61050:知能ロボティクス関連
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
山崎 容次郎 香川高等専門学校, 機械工学科, 特任教授 (60259942)
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研究分担者 |
逸見 知弘 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (00413849)
滝 康嘉 香川高等専門学校, 電子システム工学科, その他 (00455180)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 人形浄瑠璃 / 文楽ロボット / 対数螺旋曲線 / 2自由度パラレルリンク / もみじ手 / 可制御半腱駆動機構 / 分散統合制御 / 歩容曲線関数 / 左腕機構 / 二峰性 / 移動機構 / 2次フィルタ / 動作生成 / 補間曲線 / リマソン曲線 / マクスウェル分布 / 予備動作 / バネ・ダンパーモデル / 人形浄瑠璃らしさ / 四節リンクアーム / パスカルの蝸牛形 / 人間機械協調 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,人々が容易に「文楽(人形浄瑠璃)」に触れ体験できる「一人で操作できる文楽ロボット」を開発する。すなわち,人形の情緒豊かな頭と右腕は人が操作し,左腕や足が頭と右腕の動きに合わせて自動で動く文楽ロボットを開発する。特に,パスカルの蝸牛形を用いて左腕を人間らしく動かし,また「人間らしい動きの評価関数」を導出する。その成果は,文楽の技術伝承や楽器との協演に寄与し,さらに人間共存型ロボットにも応用できる。
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研究実績の概要 |
本年度は,大別して,(1)脚機構の歩容制御と(2)「もみじ手」(女性の人形の手)の機構開発に取り組んだ。 (1)令和4年度に提案した歩行曲線関数による人形の歩容制御では足首を先端として逆運動学を解いていたため,足先基準に変えて再定式化した。そして,なるべく足裏が水平になり,膝を突き出すような動きになるように歩行曲線関数の定数調整を行った。複数の歩容を生成し,実験結果の動画解析で速度特性を比較するとともに,人形遣いの方にも意見を伺って有効性を確認した。さらに,歩行曲線関数を再定式化し,軌跡の丸みや歩幅・足上げ高さから定数を決定できるようにした。また,駆け足動作についても人形の撮影と動画解析を実施した。以上により,通常歩行,駆け足,イレギュラーな通常歩行の3パターンを対象とし,歩行曲線関数の定数や媒介変数の変化法を変えて,多様な歩容を実現した。 (2)人形のもみじ手は手首と指の第一,第二関節の3関節を有し,それらを対向した2本のひもで張力制御する劣駆動機構になっている。このままロボット化すると制御性が悪く,またロボットハンドで用いられる協調リンク機構を用いると意匠性に難がある。そのため,制御性と意匠性を両立し,小型軽量化が可能な機構が求められる。この問題に対し,基本的には関節が弾性ヒンジである可制御半腱駆動機構(CS-TDM)でありながら,腱の部分にポリプロピレンの薄板を用いることで腱を押して駆動することも可能な新型のテンドン駆動機構を考案した。関節剛性をヒンジの板幅を変え調整した試作機を作成し,手首と指が人形と同様の順序で動くことを確認した。 なお,一人で操作できる文楽ロボットは主遣い一人で操作するが,頭と右手の操作以外にもスイッチ操作が必要と考えている。本機構を右手にも応用すれば,主遣いはより簡単な操作が可能になり,スイッチ操作をする余裕を持たせられる見通しが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歩容制御については,年度当初に論文投稿を予定していたが,人形の脚動作の動画解析と脚機構制御時で足先端の基準点に不一致があったこと,歩容曲線関数の定式化が不十分であったこと,人形遣いの方に意見を伺った際に認識違いが発覚したこと等の理由から,見直しをする必要に迫られた。歩容制御全般について見直しを迫られたため,進捗が遅れ論文投稿も次年度に見送りとなった。また,もみじ手の新機構開発においても,当初行った人形のもみじ手の動画解析で,手首と指の第一,第二関節の動作順序の認識間違いがあり,試作や検証の日程に遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
人形の脚動作の動画解析と速度特性,及び文楽ロボット脚機構の協調制御について,電気学会C部門論文誌の特集号に投稿を予定している。また,次年度の令和6年度が最終年度になるため,集大成として左腕機構の制御などの研究成果についても論文にまとめると共に,ホームページで研究成果を公開する予定である。 一方,これまで題材としてきた人形「お鶴」は女児のため女性でありながら脚がある人形であったが,一般的な大人の女性の人形には脚がなく,足遣いは衣装の裾をうまく操って歩行や着席の状態を作り出す。そのため,今後,大人の女性の文楽ロボットを実現しようとした際には,まず衣装をどのように操っているのか分析し,動作の体系化や自由度配置の検討を行った上で衣装を操作する機構を開発する必要がある。この問題に対し,実際の機構設計に先立って,まず多様な観客に見てもらえるメタバース空間上に浄瑠璃人形を再現する。そして,浄瑠璃人形らしく,人間よりも人間らしく見える動きができるかどうかをメタバース空間上で検証し,実際の機構開発に資するデータを収集する。 さらに,もみじ手のために昨年度試作した新型テンドン機構は実際の人形とは異なるサイズであったため,今年度は実際の人形と同サイズのものを制作する。さらに左腕機構に搭載し,手首のひねりと合わせてサーボモータで駆動できるようにし,腕と手の協調制御を検討していきたい。 なお,研究協力先の徳島県立阿波十郎兵衛屋敷を訪問した際に,浄瑠璃人形を3次元モデル化して3Dプリンタで成形しているクリエイターについて情報提供していただいた。もみじ手の製作やメタバース空間上における人形のモデル化にあたり,連携していくことを検討している。
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