研究課題/領域番号 |
19K12259
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62030:学習支援システム関連
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
山下 浩一 常葉大学, 経営学部, 准教授 (30340110)
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研究分担者 |
小西 達裕 静岡大学, 情報学部, 教授 (30234800)
小暮 悟 静岡大学, 情報学部, 准教授 (40359758)
野口 靖浩 静岡大学, 情報学部, 准教授 (50536919)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 学習支援システム / プログラム視覚化システム / プログラミング教育 / 視覚化 / 教材開発 / オーサリングシステム |
研究開始時の研究の概要 |
プログラムの挙動の視覚化(PV; Program Visualization)を提供する既存システムの多くは,定められた視覚化方針でしかPVを生成できず,このことが授業へのPVシステム導入を妨げている。申請者らが先行研究で構築したPVシステムはこの問題を解消するシステムであったが,教師の提供したプログラムしか視覚化できず,また動的データ構造を視覚化できなかった。本研究では学習者が記述したプログラムと,動的データ構造を用いたプログラムを対象に,教師の説明意図を表現するための形式的手法を構築する。また,構築した形式表現を解釈してPVを生成するシステムを実装し,実授業に導入してその効果を評価する。
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研究実績の概要 |
(22-1) 我々がこれまでに構築してきたプログラム視覚化(PV)システムであるTEDViTは,教師が自身の説明意図に基づいて対象世界の描画を自由に生成できる特徴を持つ。ここで,対象世界とはプログラムの処理対象を論理的データ構造として表現したものをいう。この特徴はTEDViTの有意な学習効果を導く一方,PV生成に時間がかかることが問題となっていた。これに対し我々は,初学者向けの描画オブジェクトを自動的に配置することでPV生成における一部の作業を支援すること,ダイアログインタフェースによってPV生成をメニュー操作で実現すること,WYSIWYG PVエディだによってPV生成を視覚的に支援することの,三つのアプローチでPV生成コストの削減を試みた。評価実験の結果からはそれぞれのアプローチがPV生成のコスト削減に一定の効果を持つことが示唆され,我々はこれらを統合した支援の可能性について検討した。(雑誌論文1) (22-2) TEDViTはC言語のみに対応するPVシステムであるが,近年は初学者向けのプログラミングの授業でJavaが採用される事例が増えている。そこで我々は,TEDViTをJavaに対応するように拡張し,より多様な初学者向けプログラミング学習環境に適合させることに取り組んだ。既存の環境では,複数のクラスやメソッドが相互に関係し合うようなプログラムの全体像を学習者が理解しづらい傾向があるため,本研究ではオブジェクト指向概念モデルを採用してオブジェクト同士の関係やクラス同士の関係を視覚化できるようシステムを拡張した。構築したシステムはTEDViTと同様に,過多となりがちな視覚化情報を教師が自由に取捨選択できる特徴を持つ。評価実験の結果からは本システムがオブジェクト指向型言語を用いたプログラミング学習に一定の効果を持つことが示唆された。(雑誌論文2)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は,TEDViTを拡張し,広範なアルゴリズムを対象に,教師の意図を反映させた形式で,学習者自身のプログラムに基づくPVを生成できるようにしたシステムを構築することである。研究成果(22-1)は,教師の意図をPVに反映させるためのコストを削減する試みに位置づけられ,本課題の目的の一つに合致した成果と言える。PV生成のコストを削減するアプローチは独立に複数のものが考えられ,それらを組み合わせることによって削減効果が大きくなる可能性を示したことは,システム構築の方向性に一定の知見をもたらすものと考えている。この成果は国際誌Research and Practice in Technology Enhanced Learningに受理されており,国際的な評価が得られたものと考えられる。 研究成果(22-2)は,TEDViTをオブジェクト指向型言語に対応させる試みに位置づけられ,PVを生成できるプログラムやアルゴリズムの対象を大幅に広げることを可能としたものと考えられる。本成果ではプログラム・アルゴリズムの対象世界だけではなく,オブジェクト同士の関係やクラス同士の関係を視覚化する「オブジェクト指向概念モデル」の視覚化を可能としており,PVの表現能力が向上できたものと評価できる。また,初学者向けプログラミング教育におけるJavaの採用例の増加を考慮すると,システムを導入できる授業の幅も広げることが可能になり,本システムの想定する利用者の幅を広げることができたと考えている。 以上,システム構築の方向性の検討と,PV生成の幅を広げることの双方において進捗が認められることから,本研究は比較的順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果を発展させる形で,引き続きTEDViTが対応可能なプログラム,アルゴリズム,データ構造の拡充を進めるとともに,我々のシステムを導入する実授業における学習シナリオを検討し,必要な拡張をTEDViTに適用する。 これまで,主としてデータ構造の視覚化の拡充やコスト削減について研究を進めているが,プログラムやアルゴリズムそのものの視覚化については対象プログラムのソースコードをそのまま表示するだけの扱いとなっていた。しかし,これまでの我々の授業経験からは,プログラムコードの意味を抽象化してアルゴリズム的な理解につなげることにつまづく初学者は多く,TEDViTにはこうした学習者を支援する機能も求められる。我々はこの問題への対処として,学習者がプログラムコードの抽象度を自由に変更しながらプログラムの挙動を観察できる仕組みを検討している。ここで,プログラムコードの抽象度の変更とは,プログラミング教育の分野で古くから用いられてきた段階的詳細化とほぼ同一の考え方である。段階的詳細化の各段階を表示・非表示することによって,アルゴリズムの抽象度を変化させるとともに,該当するプログラムコードの領域や対象世界の変化の様子を視覚化することによって,初学者のプログラム理解をより手厚く支援できるシステムの構築を計画する。また,プログラムコードの抽象度の変更においても,学習者のプログラムを対象とした視覚化が可能かどうかについて検討を進める。 こうした支援は文科系学生などにも有効な支援と考えられるため,システムの効果を評価するための評価実験には情報系学生だけでなく文科系学生をも被験者としたものを実現したいと考えている。多様な学生を実験参加者として募集することには困難を伴うため,実現可能性は不透明ではあるが,システムの効果を多様な観点から評価したいと考えている。
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