研究課題/領域番号 |
19K12276
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62030:学習支援システム関連
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
浅羽 修丈 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (50458105)
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研究分担者 |
斐品 正照 東京国際大学, 商学部, 教授 (30305354)
西野 和典 太成学院大学, 経営学部, 教授 (70330157)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 事前学習 / バズ学習 / ソーシャルメディア / 学習の準備状態 / 動画 / 学習モデル / 質的分析 / 生活的概念 / 講義ビデオ / 実践的研究 / コア・モジュール / 思考の発散 / 試行実験 / 要求分析 / 仕様 / プロトタイプシステム開発 / レディネス / 共同学習 / VOD / 思考の発散・深化・収束 / フレームワーク / オブジェクト指向 / テキストコメント / 非同期 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,Web上の講義ビデオ視聴学習においても,複数の学習者が共同学習を行いつつ相互に刺激しあえるような状態を実現することにある.これまでの我々の研究で,複数の学習者が送信するテキストコメントを講義ビデオ画面上の右から左にスクロールすることができるシステムを開発し,学習実験を行った.その結果,上述の状態を実現するには,思考の発散,思考の深化,思考の収束という3つのステップを段階的に経る学習環境が必要という仮説に到達した.本研究は,この仮説を検証するためのシステムを開発し,実際の授業で活用できるシステムの提案と公開を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,オンライン・非同期・分散での講義ビデオオンデマンド視聴学習において学習者同士がテキストコメントを用いて議論する際に,思考の発散・深化・収束という3つのステップを経ることで,より高度な共同学習環境を実現することにある.これまでの研究では,事前学習においてこの共同学習環境を実現するための「プレ・バズセッション(以下,PBと略す)」を構想し,そのPBの学習モデルを構築した.また,PBのオンライン化を目指したプロトタイプシステムを開発してきた. 2023年度では,実際の授業で実践したPBで得られたデータを,構築した学習モデルに沿って分析することで,PBの学習効果の一部を明らかにした. 実践したPBでは,受講生を12グループ(1グループ4名)に分けて,授業テーマに関連した動画を視聴しながらMoodleのフォーラム機能を利用してグループごとにテキストコメントを用いて意見交換させた.その後,PBのねらいである生活的概念の想起があったか,新たに得た概念や再構築された概念があったかについて各学習者で振り返ってもらい,テキストベースで送信させた.この実践によって得られたテキストデータを質的分析手法であるSCATで分析し,その分析結果を本研究で構築した学習モデルに当てはめた. 2023年度では,12グループ中2グループまでの分析を終えた.その結果,①PBは受講生の学習の準備状態を高めること,②その準備状態は受講者の立場だけでなく教員の立場としての概念を想起・再構築することもあること,③キーパーソンやきっかけとなるコメントの存在により,グループによって学習の準備状態に差が生じる可能性があること,の3点を明らかにした.この成果の重要性は,構想したPBの学習意義を明らかにしただけでなく,思考の発散・深化を促すきっかけとなる要因について議論できるようになった点にある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,2023年度はオンライン・非同期・分散での講義ビデオオンデマンド視聴学習において学習者同士がテキストコメントを用いて議論する際に,思考の発散・深化・収束という3つの思考活動の全てを実現するシステムの公開版を開発し,ワークショップを開くなどして,広く公開する予定であった.現状では,学習活動を事前学習である「プレ・バズセッション(以下,PBと略す)」に焦点を絞り,思考の発散を支援するプロトタイプシステムの開発に留まっている.すなわち,思考の深化と収束に関するシステムの検証と開発,および,評価実験までは至っていない. その主な原因は,PBという新しい事前学習理論について提案するために,学習モデルを構築し,その学習モデルに実践データを当てはめて分析することで,PBの学習効果を明らかにすることに時間をかけていることにある.特に,PBの実践により得られるデータはテキストベースであり,その分析には質的分析が適している.PBの実践に参加した学習者が意見交換により投稿したテキストコメントと,PBの振り返りのテキストはともに数が多く,多大な時間と労力を要する. PBは,学習の事前に学習者の思考の発散・深化・収束を促進する理論であり,開発するシステムのベースとなる重要な理論であるため,慎重に議論を進めていることも時間を要している原因である. しかしながら,これまでの丁寧な質的分析と議論の成果は少しずつ現れ始めており,PBの学習効果について客観的なエビデンスから説明することができるようになってきている.これは,本研究において大きな研究成果といえる. このことを踏まえて,現在までの達成度を「やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」や「現在までの進捗状況」でも記述したように,現在は,プレ・バズセッション(以下,PBと略す)の思考の発散を支援するプロトタイプシステムの開発にまで至っている.また,PBの学習モデルを構築し,実際の授業においてPBを実践することで,実践データを収集することができた.学習モデルに沿って実践データを分析し,PBの学習効果について一定の説明ができるようになってきているものの,現時点では,全ての実践データの分析を終えているわけではない. 今後は,収集した実践データの分析をさらに進めて,PBの学習効果についてさらに検証を進めていく予定である.収集した実践データはテキストデータであり,質的分析手法により分析を進めることが妥当であると考えられるため,全ての実践データの分析を行うには膨大な時間と労力を要することが想定される.しかしながら,この分析は,PBの学習効果を客観的なエビデンスを基に説明するためには必要不可欠であり,その分析によって得られる知見は,本研究の目的である思考の発散・深化・収束という3つの思考活動を基にした高度な共同学習環境を実現するための指針となる. そのため,まずは収集した実践データの質的分析を進めて,PBの学習効果について検証し,開発するシステムの指針を示すことが,今後の研究の推進方策である.
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