研究課題/領域番号 |
19K12334
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 (2019, 2021-2022) 公益財団法人環境科学技術研究所 (2020) |
研究代表者 |
西村 由希子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線影響研究部, 技術員 (70837822)
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研究分担者 |
今岡 達彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, グループリーダー(定常) (40356134)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 細胞競合 / マイクロビーム / 低線量率放射線 / 放射線 / 乳腺 |
研究開始時の研究の概要 |
正常な細胞集団中の異常な細胞が選択的に排除される細胞競合現象は、がん抑制に関与している可能性が示唆されたことで注目を浴びている。乳腺は放射線発がん感受性であるが、ラット乳がんのリスクは低線量率ではかなり低くなる。そこで本研究では、ラット乳腺細胞を用いた培養系で、細胞競合現象を観察・解析する技術を確立し、放射線と細胞競合の関連に関する新しい知見を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
低線量放射線が細胞の集合体である組織に当たった場合、放射線が当たらない大多数の細胞と、放射線が当たった少数の細胞が共存していることになる。両者の間に競合が起こり、後者が敗者となり排除されることがあるとすると、放射線によるリスクが少なくなる可能性が考えられる。ラットの放射線誘発乳がんは低線量率では顕著に少なくなる。そのため本研究では、細胞競合現象をラット乳腺細胞培養系で観察・解析する技術を確立し、「低線量放射線は細胞競合を引き起こすのか」「遺伝子変異を持つ細胞と正常細胞の競合に、放射線は影響を与えるのか」という問いに答えることを目的とした。令和4年度は遺伝子に変異を持つ細胞と正常細胞を混合して培養し、両者の間に起こる細胞競合を観察する手法の開発を行った。具体的にはTp53遺伝子に変異を持ちCFP蛍光標識を発現する変異ラットと野生型ラットの乳腺上皮細胞をそれぞれ単離化して混合し、培養しながら1~3時間ごとに7日間のタイムラプス撮影を行った。その際、正常細胞のみでは競合が起こらないことを確認するため、蛍光標識を持たない正常細胞の一部に生細胞染色を行い、長期培養で追跡するための条件検討も同時に行った。生細胞染色は蛍光強度が低く、これまでのタイムラプス撮影で使用していた40倍連結画像撮影で観察・追跡することは困難であることが分かった。100倍多点撮影に変えることで生細胞染色した細胞とCFP発現細胞が混ざり合う様子が観察できるようになったが、撮影視野が狭くなりタイムラプス撮影中に視野外に標的細胞が移動してしまう場合もあった。今後は撮影法のさらなる改善を検討し、正常細胞とTp53変異細胞を混合培養した場合に変異細胞のみが排除される混合比率の検討も行う。それらの条件を確立させ、混合細胞集団に放射線照射を行った後に放射線が細胞競合に促進や抑制などの影響を与えるかどうかの問いに答える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Tp53遺伝子-/-の変異ラットは身体発達異常や発がんを起こしやすく、特にメスは7~10週齢程で多くの個体が乳がんを発症するなど、長期飼育・繁殖が困難だということが今年度の検討から分かってきた。Tp53+/-個体同士での交配は長期飼育・繁殖についての問題無いものの、実験に使用するp53-/-のメスが産まれる確率が8分の1となり効率が悪い。そのため、現在は比較的長期で飼育可能なTp53-/-のオスを使用して交配効率を高める工夫をし、やや遅れて「Tp53遺伝子変異を持つ細胞と正常細胞の競合に、放射線は影響を与えるのか」という問いに答えるためのデータ収集を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
CFP発現Tp53-/-ラットの乳腺細胞を用い、変異細胞が競合によって排除される条件を確立し、細胞競合が起こる条件下で放射線を照射することにより、細胞競合に変化を与えるのかを調べることで、「遺伝子変異を持つ細胞と正常細胞の競合に、放射線は影響を与えるのか」という問いに答える。
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