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メチル水銀毒性のセレンによる抑制:水俣病発生当時の環境・患者試料を用いた新規解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K12353
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分63030:化学物質影響関連
研究機関国立水俣病総合研究センター

研究代表者

坂本 峰至  国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 所長特任補佐 (60344420)

研究分担者 中村 政明  国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 部長 (50399672)
板井 啓明  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60554467)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
キーワード水俣病 / メチル水銀 / セレン / 環境試料 / ヒト試料 / 水俣病患者 / ラット実験 / 環境
研究開始時の研究の概要

本研究では、水俣病発生当時の未解析試料(メチル水銀発生源のアセトアルデヒド蒸留液、浚渫汚泥、汚染魚、廃液投与実験で発症させたネコの臓器、水俣病患者の臓器)を用いて新規解析を行うことで、各曝露パスウェイにおけるメチル水銀とセレンの動態を検討する。患者の大脳試料については、神経細胞死が好発している皮質と、その影響が小さい髄質の双方における両元素の化学形態同定と分布のマッピングを、放射光マイクロビーム蛍光X線分析とX線吸収微細構造分析により実施し、病態との関連を検討する。本研究によって、今日の低濃度メチル水銀曝露よる健康リスクにおけるセレンの役割解明に繋がる知見が得られると期待する。

研究実績の概要

本研究では、水俣病発生当時の環境と患者臓器の歴史的試料を新規に分析することで水銀濃度と連動して上昇したセレン濃度の実証を行い、水俣病発症におけるセレンの役割を考察する。急性患者の臓器における水銀(Hg)/セレン(Se)モル比を検討したところ、肝臓や腎臓より大脳、小脳でHg/Seモル比が顕著に上昇していることが判明した。そこで、大脳と小脳のHg/Seモル比の顕著な上昇が、水俣病において脳に特異的に傷害を引き起こす一因となることが示唆された。
本年度は、ラットにメチル水銀とセレノメチオニンを投与することで得られるセレンの保護効果とその結果生じるラットの脳中Hg/Seモル比の変動に焦点を当てた検討を行なった。Hg/Se のモル比=3となるように飲水にメチル水銀(15 ppm)と餌にセレノメチオニン (2.1 ppm)を調整し、それぞれ単独及び同時に8週間投与した(各群 n=8)場合、メチル水銀による体重減少と後肢交叉発症へのセレノメチオニンの防御効は認められなかった。一方、メチル水銀とセレノメチオニンをHg/Seモル比=1で投与すると、脳中水銀濃度はメチル水銀単独と同様であったにも関わらず、セレノメチオニンによる顕著な体重抑制と発症抑制が確認された。以上のことから、曝露するメチル水銀濃度に加えて、投与するHg/Seモル比がメチル水銀の毒性発現・防御に重要であることが示された。更に、メチル水銀とセレノメチオニン等モル投与群は、脳内水銀濃度が発症閾値を超える約20 ppmに達しても発症しないことが示され、セレノメチオニン添加による脳におけるHg/Seモル比の顕著な減少が、メチル水銀毒性 発症の抑制に繋がったと考察された。
これらの研究成果は、魚介類に含まれるメチル水銀のリスク評価には、共存するセレンの含有量とHg/Seモル比が重要性であることを示唆した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は、水俣病患者が摂取していたと想定される魚介類と水俣病患者の臓器、それぞれにおける水銀濃度、セレン濃度及びHg/Seモル比に関する初めての報告である。水俣病発生当時、水俣病患者は汚染魚介類の摂取によってメチル水銀とセレンの双方に曝露されていたことが推察された。一方で、患者の脳におけるHg/Seモル比は3を超えるという、異常に高濃度のメチル水銀に曝露されていたことが判明した。ラット実験では、メチル水銀の単独曝露で肝臓と腎臓のセレン濃度が上昇したが脳中セレン濃度は上昇はなかった。メチル水銀とセレノメチオニンの同時投与で、患者で観察されたような脳中セレン濃度上昇と肝臓や腎臓における顕著なセレン濃度上昇が示された。また、曝露するメチル水銀濃度に加えてHg/Seモル比が、メチル水銀の毒性発現・防御に大きく寄与することを見出した。本研究は、環境、ヒト試料、ラット実験と多方面にわたる検討を実施した。特に、ラット実験は申請時の計画に無かったもので、予定以上の時間を要することとなった。
参加を考えていた国際学会がコロナ禍で開催されないことが続いたが、2023年8月にBostonで開催されたInternational Society of Exposure Science (ISES) 2023 Annual MeetingにReevaluation of Minamata disease provides insights into the protective role of selenium against methylmercury toxicityのタイトルで口頭発表を実施し、有意義な質疑応答が出来た。
現在、論文執筆の最終段階である。

今後の研究の推進方策

本研究は、環境、ヒト試料、ラット実験と多方面にわたる研究を実施していることから、論文執筆に予定以上の時間を要した。しかし、動物実験の結果も出そろって、論文を書ける状況になった。現在、インパクトファクターの高い国際ジャーナルに投稿すべく、結果を図表に取りまとめ、必要な統計解析を実施している。加えて、必要な文献を収集し、本研究の重要性、解決されていない問題点、新たな発見等を強調し、本研究の社会への貢献を説明することで原稿の最終取り纏めを行っている。

報告書

(5件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 2019 実施状況報告書
  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023 2022 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Mercury and Selenium Localization in the Cerebrum, Cerebellum, Liver, and Kidney of a Minamata Disease Case2020

    • 著者名/発表者名
      Marumoto Masumi、Sakamoto Mineshi、Marumoto Kohji、Tsuruta Shozo、Komohara Yoshihiro
    • 雑誌名

      Acta Histochemica et Cytochemica

      巻: 53 号: 6 ページ: 147-155

    • DOI

      10.1267/ahc.20-00009

    • NAID

      130007961040

    • ISSN
      0044-5991, 1347-5800
    • 年月日
      2020-12-25
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 水俣病関連試料の再解析で明らかになったメチル水銀毒性防御におけるセレンの役割2024

    • 著者名/発表者名
      坂本峰至
    • 学会等名
      第94回日本衛生学会学術総会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Reevaluation of Minamata disease provides insights into the protective role of selenium against methylmercury toxicity2023

    • 著者名/発表者名
      Mineshi SAKAMOTO
    • 学会等名
      nternational Society of Exposure Science (ISES) 2023 Annual Meeting
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 水俣病患者臓器で上昇したセレン濃度の実証とラット実験による機序の検討2023

    • 著者名/発表者名
      坂本峰至
    • 学会等名
      日本毒性学会 生体金属部会 メタルバイオサイエンス研究会2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 水俣病の再解析で検討するセレン濃度上昇と意義2023

    • 著者名/発表者名
      坂本峰至, 丸本倍美, 原口浩一, 中村政明
    • 学会等名
      令和4年度メチル水銀研究ミーティング
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 水俣病再評価によって得られたメチル水銀毒性に対するセレンの保護的役割への新知見2023

    • 著者名/発表者名
      坂本峰至
    • 学会等名
      第93回日本衛生学会学術総会 シンポジウム
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] メチル水銀の胎児影響2022

    • 著者名/発表者名
      坂本峰至
    • 学会等名
      第49回日本毒性学会学術年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] メチル水銀毒性のセレンによる抑制:水俣病患者臓器の水銀とセレンの分析から得られた新知見2022

    • 著者名/発表者名
      坂本峰至, 丸本倍美, 原口浩一, 遠山千春, 中村政明.
    • 学会等名
      メタルバイオサイエンス研究会2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 水俣病患者臓器におけるセレン濃度上昇2022

    • 著者名/発表者名
      坂本峰至
    • 学会等名
      令和3年度メチル水銀研究ミーティング
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 水俣病における高濃度メチル水銀曝露に連動して上昇するセレン濃度:水俣病関連保存資料による検証2021

    • 著者名/発表者名
      坂本峰至
    • 学会等名
      令和2年度メチル水銀研究ミーテイング
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] 高濃度メチル水銀曝露に連動して上昇するセレン:水俣病関連試料と動物実験による検証2020

    • 著者名/発表者名
      坂本峰至
    • 学会等名
      第6回日本セレン研究会 生命金属に関する合同年会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] 水俣湾の埋立地に封じ込まれている高濃度水銀含有汚泥の化学形態別水銀と硫黄、セレンとの共存2020

    • 著者名/発表者名
      坂本峰至
    • 学会等名
      第90回日本衛生学会学術総会(誌上発表)
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書

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公開日: 2019-04-18   更新日: 2024-12-25  

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