研究課題
基盤研究(C)
近年、プラスチックごみによる海洋汚染と水圏生態系への影響に社会的関心が高まっている。プラスチック類の使用や廃棄方針を定め環境負荷対策を進めるには、その発生源を特定して新たなルール作りに資する知見・情報を蓄積する必要がある。そこで本研究は、「道路粉塵・路面排水」、「雨天時越流下水」、「水産養殖場」に着目し、マイクロプラスチックの環境発生源を解析するための調査研究を展開する。陸域と海域のマイクロプラスチックの発生源がそれぞれ高精度に同定され、水圏への流入経路と量的規模に関する知見が得られれば、行政等による有用かつ効果的なプラスチック負荷減対策の立案に繋がると考えられる。
本研究は、道路塵埃中マイクロプラスチック(MP)に含まれる添加剤をトレーサーとして、その発生源を高精度に判定可能な手法を開発した。100種類以上の市販プラ製品、道路塵埃、雨水、河川底質中をそれぞれ採取・分析し、各組成を比較した結果、道路塵埃中MPは赤色のPMMA製が多く、フタル酸ジシクロヘキシルやフタル酸ジ-n-オクチル等が検出された。これらは赤色の路面塗料からも検出されており、塵埃中PMMA製MPが塗料由来である可能性が示された。また、MP中有機添加物は点字ブロックや反射板のそれと類似していた。本研究は、プラ製品中の有機・無機系添加物がMP発生源のトレーサーとして有用であることを示した。
MPの環境負荷を減らすには、発生源を高精度に把握することが重要であるが、市販プラ製品は種類が多く、5 mm以下に微小化した「破片」の元の姿を予測する手がかりは無いに等しい。環境試料の微量分析が専門の研究代表者は、微小化したMPでも含有添加剤を測定可能な技術を有しており、それを活かそうと考えた。また、プラ製品は用途に応じて添加剤の種類が異なる点にも着目し、添加剤をトレーサーにしたマイクロプラスチックの起源推定手法の開発を試み、一定の成功を収めた。添加剤には有害性が懸念されるものも多く、本研究は「毒を持って毒を制する」形で展開した点に、独創性の高さと学術的意義が含まれているといえよう。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 5件) 備考 (1件)
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