研究課題/領域番号 |
19K12452
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64060:環境政策および環境配慮型社会関連
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
鈴木 龍也 龍谷大学, 法学部, 教授 (30196844)
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研究分担者 |
吉岡 祥充 龍谷大学, 法学部, 教授 (30210652)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | コモンズ / 入会 / ガバナンス / 里山 / 森林管理 / 2006年コモンズ法 / 部落有財産 / コモンズ法 / コモンズ評議会 / 森林 |
研究開始時の研究の概要 |
今日、入会権者等の権利の尊重を前提としつつも、多様なステイクホルダーが意思決定にかかわる新しい入会ガバナンスの枠組みの構築、そのための立法が求められている。本研究では、そのようなガバナンスを導入する立法を既に行ったイギリスの入会に関する実態調査、および日本における今日の里山的入会のガバナンスに関する実態調査を行い、そのような新しいガバナンスの日本への導入の可能性や導入のための条件等について検討する。
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研究実績の概要 |
日本における里山的入会管理の現状に関する研究として、東近江市の「百年の森づくりビジョン」の下で進められている地域ワークショップへの参与観察を継続した。それにより、この取り組みが入会林を含めた地域森林管理への地域住民の関心を高める上で多大の貢献をしているものの、真に地域住民主体での計画作成を進めるためにはさまざまな課題が存在していることが明らかになった。 加えて、奈良県洞川財産区の研究を行っておられる柴田和子氏、および静岡県池区の入会について研究しておられる廣川祐司氏をお招きしての研究会を開催した。 イギリスのコモンズ管理の実態に関する研究としては、2022年度に行った英国カンブリア地方での実態調査をもとに、当研究プロジェクトとしての事前の研究会での検討を踏まえ、中日本入会林野研究会2023年度研究発表会において鈴木が「イギリスにおけるコモンの権利(入会権)の法的構成とコモンズのガバナンス」を報告した。 加えて、2024年2~3月に英国のコモンズ管理に関する2回目の実態調査を実施した。具体的にはダートムア・コモナーズ・カウンシルの関係者、1985年ダートムア・コモンズ法の立法に関与した元行政官(現研究者)、さらにはオープン・スペース協会などからの聞き取りを行った。ダートムアでは2006年コモンズ法のモデルとなったコモンズ管理のあり方を1985年ダートムア・コモンズ法により導入しており、今回の調査では同法制定後のコモンズ管理の実情などについて調査し、ダートムア・コモナーズ・カウンシル(2006年コモンズ法でのコモンズ・カウンシルにあたる)が比較的良好に機能していること、しかしながら農業環境スキーム合意に基づく環境保護・農業支援の枠組みが環境保護の面において有効に機能していないことなどが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、イギリスのコモンズおよび日本の里山的入会のガバナンスの実態調査を行うことが研究遂行の2つの柱になっている。後者については2019年度から2022年度の全ての年度において、前者については2020年度と2021年度に1回ずつ計2回の実態調査を行うことを予定していたが、いずれも2020年度以降のコロナ禍の継続によりその実施が(少なくとも2022年度までは)著しく制限されることになった。 そのため、国内における調査は、2020年度以降は、行政が進める地域ワークショップに参加するという形での調査が可能となる東近江市での地域森林管理のための取り組みへの参与観察をメインに進めざるを得なかった。本年度においてはコロナ禍による調査の制約はほとんど無くなったが、新たな調査地における調査を行うのではなく、東近江市での調査を継続しつつ、他の入会研究者を招いての研究会を開催して調査の不足を補うこととした。 また、イギリスの調査については当初の研究計画の最終年度である2022年度に1回目の調査、そして2023年度に2回目の調査を実施することになった。この2回目の調査についてはできれば9月に実施したかったが、航空運賃やホテル代が為替の影響などで高騰していたため、大学の春休み期間である2月まで実施せず、様子を見ることとせざるを得なかった(もっとも、実施を2月まで遅らせても状況の改善はなかった)。 本研究の座標軸となるはずのイギリスについての調査が遅れたため、研究全体のまとめも遅れている。研究期間を1年延長した際には2023年度の9月頃に2回目のイギリス調査を行い、それをもとにして本研究全体のまとめを2023年度内に行う予定であったが、2回目のイギリス調査を2023年度末まで遅らせることとなり、本研究全体のまとめのために、研究期間を2024年度まで延長せざるをえなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を2024年度まで1年延長し、2023年度までに実施したイギリスの調査の検討、そしてそれをもとにした本研究のまとめの作業を行う。 イギリスにおける2回の実態調査により、イギリスのコモンズ管理に関して、コモンズ・カウンシルという新しいコモンズ管理の組織がどのように形成され、どのように機能しているかという点を明らかにするという当初の研究課題に加えて、コモンズにおける自然保護や農林業保護のための管理を効果的に行う枠組みの構築という課題の困難さを再発見するに至っている。したがって、2006年コモンズ法が用意したコモンズ・カウンシルの導入という処方箋を検討の糸口としつつ、今日におけるコモンズ的な組織が、既存の権利関係を尊重し、かつコモンズとしての強みを保持しつつも、社会的な変化に応じて自らにとっての利害、さらには地域社会や国民的な要請を自律的に判断して利用方法の変更などにかかわる意思決定を柔軟にかつ機敏に行っていくことができるようになるためにはどのような組織形態・組織原理の変更が必要とされているのか、さらにはコモンズ的な団体が外部的な組織とどのように連携し、組織化されていく必要があるのか、というようなコモンズ団体のガバナンス問題について、イギリスの法制度や実際のコモンズ管理の状況を勘案しつつ検討を進める。 加えて、日本の里山的入会の権利関係や入会地利用の実態、さらにはその歴史的変化についての検討を基礎に、イギリスにおけるコモンズ改革の正負にわたる成果を参照しつつ、日本における広い意味での入会地のガバナンスに関する制度的な対応のあるべき方向やその実装に向けた方策等について検討し、まとめる。
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