研究課題/領域番号 |
19K12477
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堀井 伸浩 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (10450503)
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研究分担者 |
森 晶寿 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (30293814)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 中国 / エネルギー / 環境 / 市場経済化 / 価格 / 排出権取引 / 環境規制 / エネルギー価格 / 経済的手段 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、①エネルギー産業の市場化および市場化の後退による価格形成機能の変化、更にはエネルギー価格の変化によるエネルギー消費、環境負荷、社会的コストの相互影響に関して、②環境税や排出権取引の環境改善効果に関する経年変化、それとエネルギー市場・価格の相関について実証分析を行う。 方法論は、主として①は産業組織論に、②は環境経済学に基づく分析を展開する。従来の中国の環境問題に関する分析はエネルギー市場・価格の機能に関する分析を加味した研究はあまり見受けられない。しかしEIの効果を分析する上で、市場の機能に関する分析を欠くことは出来ないし、市場の機能に関して分析するには産業の視点が必須である。
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研究実績の概要 |
本研究課題は元々の計画では2021年度が最終年度であったが、本プロジェクトの初年度後半に勃発した新型コロナウィルスのパンデミックにより、第2年度以降、計画通りの活動がほとんど遂行できていないというのが実情である。そのため事業終了年度を一年間延期したものの、本年度も引き続きコロナ禍が継続し、研究対象である中国国内はゼロコロナ政策の継続で入国管理が緩和されることがなく、結局研究課題の遂行に欠くことのできない中国での現地調査は実施不可能な状況が今年度も継続した。 本来の計画では、堀井が中国での現地調査を大々的に展開し、エネルギー産業の市場経済化の実態について得た情報に基づき先行して論文草稿を執筆、森の排出権取引市場に関わる研究にインプットを提供する予定であった。 本プロジェクトの最大の特徴である現地調査を通じた実態把握ができないという厳しい状況の中で、堀井の研究活動は引き続きインターネットを通じた情報収集という形にならざるを得なかった(文献すら満足に収集できない)。しかしさすがに2年間もネットを中心とした情報収集で逼塞することとなり、ほとんど進展がなかったというのが実情である。 森も第2年度に7省市の排出権取引のパイロットプロジェクトに関する分析をほぼ計画通り進めることができたが、現地調査を行い、計量分析の結果の考察にフィードバックする計画していた活動は今年度も全く行うことができなかったことで、これまた今年度はほとんど進捗がなかったという状況である。 以上のような制約がある中で、研究成果としては、研究プロジェクト全体で論文4本、研究報告8本(うち国際学会5本、招待講演3本)の成果公表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時点の計画では、初年度である2019年度は文献調査を中心に理論的な考察を深め、2020年度は中国のエネルギー市場経済化の進捗に関する最新動向と排出権取引制度の実際の運用状況について大々的に現地調査を実施し、実証分析を行うために必要な情報収集を行う予定であった。それらを受けて、最終年度に当たる2021年度は研究の取りまとめを行う予定であった。 しかしながら新型コロナウィルスのパンデミックによって中国が入国制限措置を導入し、それが結局第2年度はおろか、2022年度、更には事業延長を申請した2023年度においても継続され、一度も現地調査の実施に至らなかった。 本研究課題の特徴であり、独創性という点で価値ある点のひとつが、文献やインターネット情報では得ることができない情報・データを用いて実証分析を行うことであり、中国での現地調査はそのための非常に重要な手段である。現地調査が実施不可能な状況であったため、代替手段も模索したが、やはり十分な結果を得ることができなかった。この制約は堀井の研究の進捗に大きく影響し、国内の関連研究者からの情報収集に加え、中国の研究者とのオンラインでの情報収集なども行ったが、やはり企業などの現場での情報収集が行えず、隔靴掻痒の感があった。したがって今年度の研究経費の使用額は予定を大幅に下回るものとなった。 他方、森についても排出権取引価格と各省市の排出削減の関係について初歩的な計量分析を行った後に、計量分析の結果の考察を現地調査によって深める計画であったが、上述の通り、中国での現地調査が年間を通じて入国規制が解除されなかったために計画を執行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、とりわけ堀井の研究計画においては中国における現地調査は欠くべからざるものであり、研究計画で想定した成果を達成するには中国現地調査を割愛し、他の情報・データ手段で代替することは極めて困難である。したがって何としても中国現地調査を当初の計画通り実施すること、これが今後の研究の推進に向けた最重要課題である。 こうした判断に基づき、2022年度に1回目の事業延長を申請したが、当時は厳格な水際対策などゼロコロナ政策の見直し、ウィズコロナへの移行が世界的に進んでいる状況から2023年度は現地調査が可能になる可能性が大きいと考えていた。そのための研究経費を有効に活用させて頂くために使用せずに繰り越してきた。 しかし周知の通り、2023年度は中国がむしろゼロコロナ政策を強化したことで、厳格な国境管理は継続され、中国での現地調査はまたしても実施できなかった。昨年度の実施報告書で、「本音を言えば再度の期限延長を申請してでも本研究課題のアピールポイントである現地調査の実施を行いたいが、現実的には難しいかもしれず」と書いたが、今年度も特例で再度の事業延長をお認め頂いたことに深く感謝している。 実際のところ、現地調査に代わる方法として中国の研究者とオンラインインタビューなど行ったものの、現場の情報には到達できず、やはり直接現地を訪問しての調査の必要性を再確認した次第である。幸い、昨年12月に中国政府はゼロコロナ政策を完全放棄し、現在は完全に国境管理措置を撤廃、我が国の水際政策でも陰性証明などが求められなくなったことで、3年半ぶりに現地調査実施が確実に可能となったため、夏休み以降、集中的に実施し、年度後半に向けて研究成果の取りまとめと並行しながら進めていく。
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