研究課題/領域番号 |
19K12493
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 京都大学 (2022) 総合地球環境学研究所 (2019-2021) |
研究代表者 |
林 耕次 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 研究員 (70469625)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 狩猟採集民 / 定住 / サニテーション / トイレ / NGO / アフリカ熱帯雨林 / COVID-19 / 定住集落 / カメルーン / 遊動と定住 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、アフリカ熱帯地域において1950年代以降に定住したピグミー系狩猟採集民バカを主な対象として、トイレの概念や<し尿>に対する行動・意識・規範・慣習等の関わりについて検証する。それらの現状が、日々の行動や健康、衛生観、生きがいやQOLに関して、どのようにサニテーション価値として寄与しているのかを実証し、当該地域におけるサニテーションのコンセプト構築と具体的な理想モデルの提言に貢献する。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、本研究期間を一年延長したことで、新型コロナウイルス感染症パンデミック以来、約2年半ぶりにカメルーンへの海外調査を実施することができた。おもな調査、研究項目は以下の通りである。 1.定住した狩猟採集民バカのサニテーション:現地NGO Association Okaniとの協働で、東部州の地方都市ロミエ近郊に居住する定住した狩猟採集民(Baka)を対象としたサニテーションに関する現地調査を実施した。2019年以降、集落内でのトイレの建設を現地住民と進め、その後の使用状況等の経過観察をおこなった。調査者やNGO関係者の不在時にはトイレ建設や使用、維持管理は消極的であり、その要因について住民からも話しを聞きながら要因について再検討を行った。 2.COVID-19対応:調査地を含むカメルーン全域では、新型コロナウイルスの感染拡大に対する警戒感や意識が薄まっており、パンデミック以前の日常を取り戻しているようであった。他方で、コロナ禍を通じて日常生活における衛生意識がどのように認識され、実践されているのか、NGO Association Okaniの活動を通じて地方都市や農村地域の状況について情報を共有するとともに、今後の衛生意識を高めるための方法や実践事例について協議した。 3.研究成果:トイレ造りを通じた地域住民、NGO、研究者による共創の実践事例として、とくにコロナ禍におけるNGOの活動について報告書を共同執筆し、国際誌において刊行された。 上記を踏まえつつ、コロナ禍中の海外渡航・調査を断念せざるを得なかった期間が長期に及んだこともあり、「補助事業期間再延長」の申請を行い、令和5年度まで本研究を継続することになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
約2年半ぶりにカメルーンでの現地調査を再開することができた。 コロナウィルスの感染拡大の懸念は、カメルーン国内においてほぼなくなっているようであるが、他方で、一時的に意識が高まったと思われる衛生への関心と実践については、コロナ禍後も大きな変化は見られなかった。 主たる調査地であるカメルーン東部州ロミエ界隈においては、トイレ造りや維持管理がほぼ停滞した状況であり、その要因について住民らと話し合いを行った。NGOや行政主導によるトイレ造りの前例では、コンクリート製で、屋根にトタンを使うなど予算的にも大きくなるが、それらが「理想」的なトイレとしてモデル化されていることがひとつの要因としてあげられる。それには及ばなくとも、身近な素材でさほど多くの労力をかけなくとも設置、維持管理が可能なトイレの模索は引き続き継続する必要性がある。同時に、子どもたちを含むサニテーション環境・意識の向上による健康や経済的な利点について、浸透させる必要がある。すなわち、水場の整備やトイレの設置、それらの衛生的な維持管理のモチベーションをどのように高めて継続させるのかが大きな課題となる。 当初の研究計画において、トイレの設置やその使用状況については十分な浸透や波及効果が見られなかったものの、改めて現地調査を通じて課題点が明らかになった点については前向きに捉えている。そのため、再延長期間を見据えた4年目の進捗状況としては、補助事業期間延長に伴う全体的な視座より「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度も引き続きカメルーンでの調査を予定している。 令和4年度は、これまでの現地調査のデータを基にして関連する研究発表、論文執筆、報告書の執筆を行ってきたが、引き続き継続中のトイレ造りや使用実態にかかるテーマとした研究成果のとりまとめと成果の公表を進める。 本プロジェクトはサニテーションを主題としており、本研究期間中のコロナ禍を通じた衛生行動や意識が、当該社会の人びとにどのように受け止められたのかに着目することは重要な視座である。そのうえで、現地の研究対象である地域住民や協働関係にある現地NGOの実際の対応や、その後の変化などを引き続き注目しながら、日常生活や社会状況の中でのサニテーションにまつわる生活環境や生業活動などの実際について改めて分析・検討することで、狩猟採集民のサニテーションの全体像を描くことを目指していきたい。 具体的には、これまでのトイレ造りや水・衛生に関連する日常的な行動や意識についての記録に関連して、特に子どもの衛生感覚について着目して、国際的な基準や意識に対して定住した狩猟採集民の人びとがどのように衛生感覚や「きれい・きたない」という基準を持っているのか、子どもの成長や周辺の社会関係から探る。この調査については、英和4年度の現地滞在時においても予備的な調査を行って、好感触を得た。また、サニテーションの問題に関しては、女性の月経に関する基本的な情報が欠けていることもあり、NGO関係者の協力を得ながら、収集して問題点の抽出やその解決方法についても模索したいと予定している。
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