研究課題/領域番号 |
19K12531
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
水谷 裕佳 上智大学, グローバル教育センター, 教授 (90568453)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 米国 / メキシコ / ハワイ / 境界地域 / 周縁地域 / 国境 / 先住民族 / 境界 / 地域 / メキシコ湾 / 海域 / 海 / 相互協力 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、現代の米国メキシコ間の文化や社会のつながりについて、地上に引かれた国境線を挟んだ地域ではなく、海域に着目して調査を行う。具体的には、太平洋地域(米国島嶼部を含む)およびメキシコ湾地域の境界を調査対象とし、学際的に考察する。研究の目的は、(1)文献調査や文化人類学的な手法を取り入れた現地調査を通じ、領海や排他的経済水域等の設定によって生じた海上の地理的境界線が、海を超えて広がる文化や社会のつながり、そして物資や資本、人の移動や地域の相互協力にいかに影響しているかを明らかにすること、(2)地上の国境のみに着目して議論されがちな現代の米国メキシコ境界地域の全体像を明らかにすることである。
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研究実績の概要 |
2022年度前半も、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる世界的混乱が完全に収束したとは言い難い状況が続いた。年度の初めには、本研究計画における調査地の1つであるハワイにおいて、8月から9月にかけて現地調査を行うべく準備を進めた。しかし、日本からの旅行者がハワイで新型コロナウイルス感染症に罹患して帰国できず、高額の延泊費や復路の航空券購入費を自己負担するケースがニュース等でも報道されたため、渡航を見送った。その後研究計画の見直しと調整を続け、2022年度後半にあたる2月から3月にかけて、ハワイに3週間弱滞在して、現地調査を実施することができた。調査においては、オアフ島ホノルル市とカウアイ島リフエ市を中心とした地域にある図書館(ハワイ大学マノア校ハミルトン図書館ハワイ・太平洋コレクション)、博物館やアートギャラリー(ハワイ大学マノア校アートギャラリー、カピオラニ・コミュニティ・カレッジ・コア・ギャラリー)、公共施設(カウアイ・オーシャン・ディスカバリー、ハワイ日本文化センター、ホノルル・コーヒー・エクスペリエンス・センター等)、専門書を扱う書店(ナ・メア・ハワイ、ネイティブ・ブックス・ハワイ)等で資料を収集した。また、現地の研究者や専門家とも議論を交わした。本報告書執筆時の2023年4月においては、収集した資料や、議論の結果を基に、論文を執筆中である。また、ハワイ滞在中に、ローカルテレビやオンラインメディアを運営するオレロ・コミュニティ・メディアの番組に出演し、これまでの研究成果の一端を紹介すると共に、今後の研究に対する協力を呼びかけることができた。本研究課題の実施期間は、その大半が新型コロナウイルス感染症のパンデミックの期間に重なってしまい、現地調査も実施できないままであったが、上記の滞在期間に有益な資料を収集できただけでなく、今後の研究計画を練り直すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上の欄で述べた通り、2022年度後半には、米国ハワイ州のオアフ島とカウアイ島において、3週間弱の現地調査を実施することができた。新型コロナウイルス感染症のパンデミック期間中にも、オンラインのデータベースで資料を収集したり、文献購読を通じて先行研究の調査を行ったりすることはできたものの、やはり本研究課題を特徴づけるようなユニークな資料を収集することはできなかった。しかし、今回の現地調査を通じて、これまでに本研究とは関連がないように思えていた事項の中に重要な情報を見出したり、現地の研究者との議論の中で新たな角度から課題を見つめ直したりすることができた。具体的には、一次資料の中に、大陸部における米国メキシコ国境地域で生じた出来事とハワイの歴史を比較しながら論じた記述を発見したり、日系人を含む移民の体験やプランテーション農業の歴史を介して米国メキシコ国境地域とハワイ、さらにはカリブ海地域へのつながりを論じたりする重要性を認識した。さらに、研究代表者が専門とする先住民研究の観点からも、ハワイや太平洋地域、さらにはカリブ海まで含めた米国の地理的周縁地域における議論を深められる可能性を見出した。年度中の具体的な研究成果としては、昨年の報告書執筆時点で出版予定となっていた論文の刊行、専門書の一部となる論文の執筆(刊行時期未定)、そして上の欄で述べたメディアを通じた研究内容の発信といったアウトリーチ的な活動が挙げられる。2022年度に収集した資料については、論文として成果を発表する準備を進めている最中である。なお、新型コロナウイルス感染症パンデミックによって生じた重なる研究計画の変更を考慮して、研究期間の延長を申請した。延長期間となる2023年度中に、複数の論文に成果がまとめられる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
先に記した通り、この研究課題の基づく調査、研究は、当初2022年度末に終了する予定であったが、2023年度末まで延長されることになった。2022年度に続いて2023年度にも現地調査を実施して、研究に必要な資料を収集すると共に、成果を論文として出版するべく準備を進める。現地調査のための訪問先としては、2022年度末の現地調査で調査の手応えを感じた米国ハワイ州、もしくは米国メキシコ国境地域(米国アリゾナ州もしくはカリフォルニア州の南部)が候補地である。ハワイを訪問する場合には、図書館や博物館が多く集まるオアフ島ホノルル市に加え、追加調査で資料が収集できると考えられるカウアイ島リフエ市を主な滞在先とする予定である。アリゾナ州やカリフォルニア州を訪問する場合には、アリゾナ州トゥーソン市のアリゾナ歴史協会、カリフォルニア州サンディエゴ市のサンディエゴ歴史センター等で資料を収集する予定である。また、論文執筆や、学会、研究会での研究発表に加え、アウトリーチ活動として、研究成果の一端を一般の人々に紹介し、社会により広く還元する機会も増やしていきたい。一方、2023年度には新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる世界的混乱はさらに治まっていくと考えられるものの、他の要因によって国外への渡航が再度難しくなる可能性も消えたわけではない。よって、確実に研究成果を上げるべく、オンラインのデータベースを使った資料の収集や、オンライン会議システムを利用した聞き取り調査など、様々な調査方法を併用する。また、2023年度は最終年度にあたるものの、本課題の期間終了後にも持続的に研究を発展させることを目的として、人的ネットワークの拡大や、調査対象地域の拡大にも積極的に挑戦していきたい。
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