研究課題/領域番号 |
19K12531
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
水谷 裕佳 上智大学, グローバル教育センター, 教授 (90568453)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 地理的境界 / 文化 / 歴史 / ハワイ / アリゾナ / 米国 / 先住民 / メキシコ / 境界地域 / 周縁地域 / 国境 / 先住民族 / 境界 / 地域 / メキシコ湾 / 海域 / 海 / 相互協力 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、現代の米国メキシコ間の文化や社会のつながりについて、地上に引かれた国境線を挟んだ地域ではなく、海域に着目して調査を行う。具体的には、太平洋地域(米国島嶼部を含む)およびメキシコ湾地域の境界を調査対象とし、学際的に考察する。研究の目的は、(1)文献調査や文化人類学的な手法を取り入れた現地調査を通じ、領海や排他的経済水域等の設定によって生じた海上の地理的境界線が、海を超えて広がる文化や社会のつながり、そして物資や資本、人の移動や地域の相互協力にいかに影響しているかを明らかにすること、(2)地上の国境のみに着目して議論されがちな現代の米国メキシコ境界地域の全体像を明らかにすることである。
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研究実績の概要 |
2023年度には、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる世界的混乱の影響は、完全に治まってはいないもののかなりの落ち着きを見せた。そこで、米国メキシコ国境地域における調査を計画したものの、私が同地域での調査の拠点としている米国アリゾナ州では記録的な熱波が続いた。現地調査で訪問する場所には冷房設備がない場所もあり、健康被害や事故も懸念されたため、大学の夏季休暇期間にあたる時期の調査は延期を強いられた。そこで渡航先を変更し、本研究課題の調査地の一角を成す米国ハワイ州のハワイ島およびオアフ島に渡航して調査を実施した。ハワイ諸島の最も東に位置するハワイ島では、ハワイに駐在する国立アメリカ・インディアン博物館の職員であり、ハワイ先住民としての文化活動も実践するハレナ・カプニ=レイノルズ氏の助力を得ながら、島の東海岸の主要都市であるヒロ市の大学(ハワイ大学ヒロ校)や博物館(ライマン博物館)で文化や歴史に関する資料を収集し、太平洋における事象を地理的境界の概念を用いて考察する方法を模索した。オアフ島ではホノルル市を中心に、図書館(ハワイ大学マノア校ハミルトン図書館)や博物館(ビショップ博物館)等で調査や資料収集を行った。その中で、自身がハワイ先住民であるドキュメンタリー映画監督のキアラ・レイシー氏に面会した。そして、同氏が制作した、アリゾナ州内に設置されたハワイ州の刑務所内での先住民の文化活動に関する映画について議論を行なった。この映画の内容は本研究課題と関連したものであり、議論の成果の一部はシンポジウムで口頭発表すると共に、年度末には論文として公開した。なお、2023年度中はアリゾナ州においての調査が叶わなかったが、年度が明けて間もない2024年4月前半に現地調査を行うことができた。その内容や成果は来年度の研究実績として報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は当初の期間を延長して実施しているものの、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で海外での現地調査がままならなかった時期が長く続いたこともあり、申請時に目的として掲げていた(1)領海や排他的経済水域等の設定によって生じた海上の地理的境界線が、海を超えて広がる文化や社会のつながり、そして物資や資本、人の移動や地域の相互協力にいかに影響しているかを明らかにする、(2)地上の国境のみに着目して議論されがちな現代の米国メキシコ境界地域の全体像を明らかにする、の2つの目標を完全に達成するには至っていない。一方で、2023年度においては、本研究課題において重要な地域、即ち米国メキシコ国境地域の一角を成す米国アリゾナ州と、米国の領土と海域を論じるにあたって重要となるハワイ州の両方に直接関連する事例を取り上げて考察し、論文にまとめることができた。その事例に着目することは、本研究課題の申請時には全く想定していなかった。しかし、パンデミック中の文献調査を中心とした地道な研究活動や、様々な制約が課される中での現地調査を通じて、少しずつ知識を蓄積することができた。そして、2023年度に実施したハワイでの現地調査によって考察を格段に深め、口頭での研究発表と、論文の執筆に結びつけることができた。さらに、本報告書作成時点で未だ論文化できていないものの、過去数年間の研究を通じてある程度の資料収集と考察には至っているトピックがいくつか残っている。当初想定していたよりも進展の速度は遅いが、上に記した事例を含めて申請時に想定していなかった資料が着実に収集できている点を考慮して、自己点検の区分としては「やや遅れている」ではなく「おおむね順調に進展している」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は2023年度の時点で既に期間が延長されていたが、さらに期間を延長し、2024年度も継続されることになった。最終年度となる2024年度は、これまでに収集してきた資料の考察を進め、論文や著書として出版する準備を進める期間に充てたいと考えている。また、詳細は本報告書ではなく来年度の報告書に記載することとなる2024年4月初旬の米国アリゾナ州での現地調査においては、同州トゥーソン市に位置するアリゾナ歴史協会図書館の職員より、本研究課題に関連する資料の一部が既に電子化されており、インターネット上のデータベースを通じて入手できるという情報を得た。さらに、現地調査中には面会できなかった専門家から帰国後に連絡があり、オンライン会議システムを使って話を聞くことができる可能性も浮上した。2024年度は最終年度であるために時間が限られていることに加え、年度初めの時点での日本円と米ドルの為替レートや世界的な物価の上昇、予算の残額も考慮すると、再度現地調査を実施することは難しいと思われる。しかし、これまで収集してきた資料を基に論文や著書を執筆するに留まらず、インターネット上のデータベースやオンライン会議システムを活用して、新たな資料や情報を収集することにも努める。新たに得られた資料や情報は、本研究課題の実施期間中に考察を終えて論文化することは難しいとも考えられるが、本研究課題を発展させて次の課題につなげ、米国領土の地理的周縁地域に関する長期的な研究のために役立てる。また、本報告書作成時点では具体的な機会が決まっていないが、研究期間全体を通じて得られた考察を、研究者のみならず一般の人々に向けて口頭で発表することも前向きに検討する。さらに、本研究課題を踏まえて次の課題をいかに進展させていくかについても、随時検討する。
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