研究課題/領域番号 |
19K12538
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | フェリス女学院大学 |
研究代表者 |
上原 良子 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (90310549)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | フランス / 地域主義 / バスク / ペリフェリー / ヨーロッパ / 国境 / ボーダー / インド太平洋 / オクシタニー / 境界 / 辺境 / インド太平洋戦略 / 先端産業 / 航空機産業 / 港湾 / 地域アイデンティティ / 地域圏 |
研究開始時の研究の概要 |
フランスの国境地帯に位置するバスク、マルセイユ、リール地域の分析を通じて、越境的な新しい地域主義の誕生と国境の変容を解明し、21世紀型の共生・共益型モデルの可能性を考察する。従来これらの地域は、「辺境」と位置づけられてきたが、ヨーロッパ統合とグローバリズムの展開により、国境の開放性が高まっている。トランスフロンタリエと呼ばれる日常生活において国境を越える人々の存在の他、開放的かつ異なる国家の自治体間での行政連携、また国境による民族分断状況についても、国境を越えた一体化および地域再生の可能性が試みられている。これらはグローバル化の時代の新しい問題解決の可能性を提示するであろう。
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研究実績の概要 |
本科研の主要テーマの一つであるフランスにおける地域主義の再生に関して、日本政治学会2022年度研究大会において「ペリフェリーからの問い:フランスにおける地域主義の覚醒とバスク」と題する報告を行い、1970年代から1980年代のフランス領バスク地方における地域主義の展開を分析した。バスクはフランス-スペイン両国にまたがり独自の言語・文化を有するが、国境により分断された地域である。バスクの自律性を求める地域主義運動の要求と活動を通じて、多文化主義や差異の権利といったフランスのデモクラシーの限界と今日的課題でもある新しい論点の重要性を明らかにした。また68年5月後のオルタナティブ左翼と国家およびパリの既成政党との対立や、国家とテロリストとの関係、またテロ等の「暴力による民主主義」の是非等、当時多くの西欧諸国が直面した課題ををめぐり、政府、とりわけ権力にある左翼政党と運動との緊張関係から、統治のロジックと社会運動のロジックとの緊張関係を分析し、戦後デモクラシーが今日的なリベラル・デモクラシーへと変容したことを明らかにした。また同じくバスクの独立運動やテロに直面する隣国スペインとの関係において、運動に加え政府や政党レベルでも交渉プロセスが重層的に併存する一方、ヨーロッパ統合の進展により、バスクの統一国家ではなく、越境的ではあると同時に各々自立した空間を生み出したことを明らかにした。 新しい論点として、トゥールーズ等のフランスの航空機産業の分析に取り組み、先端産業の地方移転を通じて、辺境であっても、高度な研究開発や人材育成を可能とする大学-研究機関-先端産業のネットワークが生み出され、地域経済・社会の活性化に貢献し、また周縁地域であってもグローバル市場に直接接合されることにより、グローバル企業として飛躍する構図を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研の開始と新型コロナウイルス蔓延による自粛期間が重なり、当初予定していた現地調査による文書館史料を利用した実証的な分析を行うことができなかった。しかし予定を変更して、先端産業振興による辺境地域の経済的活性化および、テロの克服と観光振興という視点を加え、研究を進めた。全体として1年間の遅れ・延長はあったものの、研究発表、論文執筆等は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2023年度は主に成果発表を中心に進める。以下のテーマについて論文を執筆予定である。①1960年代以降のフランス領バスクにおける地域主義的なナショナリズム運動の歴史的展開について(共著として刊行予定)、②バスク・アイデンティティの記憶と観光(紀要に執筆予定)、その他を計画している。 これらを通じて、当初の予定である越境的共生・共益型モデルの分析として、国境により分断されたバスク地域における①EU-政府-運動のマルチ・レベルでの相互依存関係と自律的共存、②バスクの文化的特質を尊重した地域創生と政府・EUの関与を明らかにする。加えて次の課題として予定している①ヨーロッパ統合に伴う越境的社会・経済空間の新しい展開、②紛争からの平和構築の諸問題(テロリストの社会復帰問題、和解)等についても着手する。
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