研究課題/領域番号 |
19K12577
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
太田 隆之 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (50467221)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 観光のダイナミズム / 持続可能な発展 / 観光地 / 財政的基盤 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、観光都市の自治体財政に注目し、短期的ならびに中・長期的な観光需要の変動「観光のダイナミズム」が生じる中で、「持続可能な観光地」を実現するための観光都市自治体の財政的基盤を確立するための条件を明らかにする。事例として日本を代表する温泉観光地である静岡県伊豆地域の観光都市である熱海市、伊東市、下田市に注目し、今日に至るまでの各都市自治体の財政運営に注目し、歳出入の動向を検証する。一連の検討を通じて、上記の条件と評価される観光地づくりのための地域政策への示唆を示す。そして、観光地経営に認められる日本的特徴と可能性を明らかにし、観光地づくりに関する国際比較研究の参照点も得ていく。
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研究実績の概要 |
本研究は、観光地において中・長期的なタームで起こる観光需要の変動である「観光地のライフサイクル」仮説と、短期的な観光需要である季節変動が観光地と観光地自治体の財政に与える影響に注目し、その実態を明らかにするとともに、「持続可能な観光地」の実現に向けた観光地自治体の財政的基盤を検討することを目的にしている。2022年度は、前年度まで取り組んできた研究の成果を報告し、公表する機会を得た。まず第1に、過去40年間にわたる伊東市の財政分析を行い、その特徴と課題を明らかにした。伊東市は1980年代に取り組まれた日本の都市研究において日本を代表する「温泉観光都市」として挙げられ、財政分析がなされた都市である。研究代表者はその後の市の財政運営を「観光地のライフサイクル」を経験している観光経済の動向を踏まえて検証し、観光経済が成長していた時期は自主財源を核とした財政運営ができていたが、停滞すると地方交付税に依存していったこと、民生費が上昇することで観光振興が必要であるにも関わらず観光振興経費の規模が小さくなっていったことを明らかにした。加えて、観光客が減少しても市の人口もまた減少することで市財政が直面する観光地特有の財政需要の規模はさほど変わらず、自主財源が落ち込む中で対応が迫られている課題があることを明らかにした。この成果は日本地方財政学会の大会で報告するとともに、いただいたコメントを反映した内容を地方財政のテキストの中で担当した章として公表した。他、地方行政で進められるデジタル化をめぐる論争をまとめた英文論文が査読を経て論文集の1章として公刊された。加えて、自治体の窓口業務で導入されたデジタル化への対応をめぐる事例の調査を実施し、成果をオンラインで開催されたドイツ語圏日本研究学会の大会とドイツ・ボン大学主催の国際ワークショップで報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度もコロナ禍の影響を強く受けて研究スケジュールの大幅な変更を余儀なくされた。当年度はそれまでの研究成果を報告し、公表する機会を得た一方で、研究対象である事例地での聞き取り調査が十分にできなかった。前年度までと比較すると行動制約は緩まったものの、全国旅行支援の実施のタイミングであったり、宿泊施設をはじめとした観光地のコロナ禍での対応ルールの関係で調査先と調査のタイミングが合わなかった。更に、コロナ禍で利用に制限がかかることで、国会図書館など公共の図書館での資料収集も十分にできなかった。これまで実施してきたボン大学との研究交流はオンラインにより維持されたものの、成果報告が中心で時間をかけた討論と今後の研究への取り組みについての検討が十分に時間できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが変わることで、これまで課されてきた行動規制がなくなるなど概ねコロナ禍以前の状況に戻ることもあり、観光地での調査や資料収集を再開するとともに、研究計画で挙げていたボン大学の研究者らとの対面による研究交流をドイツに行って実施していきたいと考えている。そして、コロナ禍で集めてきた資料、データを活用した論文を執筆し、公刊を目指すとともに、2022年に国際学会・会議で報告した地方行政のデジタル化の論文の公刊も目指していく。
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