研究課題/領域番号 |
19K12597
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
森田 雅子 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (40249503)
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研究分担者 |
黒田 智子 武庫川女子大学短期大学部, 生活造形学科, 教授 (10223968)
三宅 正弘 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (50335783)
大井 佐和乃 武庫川女子大学, 生活環境学部, 助手 (60779221)
加登 遼 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 助教 (50849396)
松山 聖央 武庫川女子大学, 生活美学研究所, 嘱託助手 (10885205)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 聖地 / 甲子園 / 生活美学 / 応援文化 / 野球 / 聖地研究 / 生活領域間移動 / migration / mobility / スポーツ / 聖/俗 / 住民評価 / 生活文化 / 野球聖地甲子園 / 集団的表象性 / 阪神間モダニズム / コスモロジー |
研究開始時の研究の概要 |
従来聖地研究は、聖地の中核となるモニュメントの表象を象徴的意味の多重奏とみなし、巡礼者目線で多角的に分析する。巡礼者以外の地域住民の物語や記憶、生活文化の調査は手薄になりがちだ。本研究では現地調査・資料調査・ヒアリング調査を行い、各地の状況とも比較し、兵庫県西宮市の野球聖地甲子園の形成・継承の要件と可能性を住民の目線で評価する。
聖地甲子園立地について、現・中核都市西宮の生活空間の郷土史、象徴性、集団的表象性、の視点から住民目線で評価し、今後の課題を探る。その際、申請者の研究機関が甲子園ホテルに立地している強みを十二分に生かす。
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研究実績の概要 |
以下の6点が実績である。コロナ禍で多大な影響はあったが、アンケート実施とデータ入力を終了して、統計学的解析も漸く一通り処理できた。①甲子園地域の住環境に対する住民評価について30問のアンケート項目の回答をクロス集計などで年齢、居住地点、居住歴別に分析をほぼ完了し、報告をまとめ、刊行した。報告書の刊行成果について、西宮市長(2022年1月4日)や阪神電鉄(2021年4月28日、2022年3月11日)にヒアリングを行い、研究成果を共有した。武庫川女子大学教育研究社会連携室主催の第6回研究成果社会還元発表会、地元甲子園地域の大規模商業施設 ららぽーと開催の武庫女スマイルフェスで6枚、A2サイズの啓蒙ポスター展示を実施し、報告書刊行物を関連自治会会長に配布した(2022年2月)。②生活美学的・観光美学的観点から住民の生活行動を再検討した。旅や観光など人間のモビリティー(生活領域間移動)に対する動機付けの仮説を提示し-アンケート回答のうち、居住地域の生活質感の評価を反映する「想い」の詳細分析の一部を終えた。③聖地研究で 聖/俗の揺らぎについて観光美学的観点からの仮説を提示し、多面的な検証を実践した。④日本における野球競技の歴史、甲子園野球の神話性生成説、海外の多数のスポーツ競技の聖性に関する論考など集約統合し、生活美学の視点から象徴性再生産プロセスを俯瞰することを最終目的とする文書をまとめた。 ⑤さらに文献調査を通じて、新たに言語学者ソシュールの忘却に付された研究に着目し、地名の記憶性とブランディングの関係性を再構築し、観光美学に貢献した。⑥海外学術雑誌への論文投稿、あるいは英文著書刊行のための準備を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由は4つある。①アンケートのデータ入力が一応終結し、2021年春夏および2022年春は交流試合と選抜高校野球大会が実施された。フィールドワークをさらに進め、地元のステイクホルダーのフィードバックも促進したい。②旧甲子園ホテルと球場を結ぶ甲子園筋が水路(みずみち)に特異な地理的形態を可視化し、国土改良の偉業称揚のランドマークとして機能しているかを検証した。甲子園筋の甲子園球場に至る地域の象徴的連係機能は弱体化している。野球という球技を儀礼と捉えると、この儀礼の執り行われる領域の聖地性をうまく伝達しているか。球場の管理運営、支援チームのパフォーマンス、テレビやマスコミ報道、SNSは複合してメディア化効果は非常に高い。但しスポーツ観戦関連消費やリクリエイショナルなニーズも喚起しているが、球場を年に一度も利用しない地域住民はアンケート結果で39.8%に達する懸念材料であり、その無関心性についても考察が必要だ。③アンケート設問に、住環境評価、地域活動参加、野球に対する関心、移動軌跡および習性、生活行動サイクルに関する自由記述欄を多数設けた。まず予備的にテキストマイニングのプロジェクトをたちあげ、分析シミュレーションの検討を重ね、深掘りの解析に着手した。聖地やランドマーク共有については紛争地域での文化社会学的フィールドワークの結果、各宗派の聖地やランドマークの継承・破壊・転用は政治的優位を争う集団間の 鬩ぎあいを反映する現象であるとする (Robert M. Hayden et al. 2016)。 この考察を野球聖地にあてはめると、地域のランドマークの存在はランドマークとアイデンティファイし、愛着を感じる諸集団の存在が安泰の要因で、まず第一義的に地元に存在する諸集団の意識の涵養が肝要である。この点についての調査を進める必要がある。④英文で海外学術雑誌を含め、投稿を重ねている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の聖地研究は3点に集約する。①インタビュー、ワークショップ、テキストマイニンング、フィールドワーク、文献調査など並行して行い、多様な複合的視点も保つが、その中でもインタビューとテキストマイニングを主軸としたい。アンケートは30問、選択肢等181項目、自由記述欄21項目で構成されている。アイデンティティと住環境評価についてさらに詳細に分析をしていく。②また感染症対策で発令された緊急事態宣言が解除され久しいとはいえ、研究活動で充分協働できないかヒアリングなどが実施しづらい状況が続いている。困難な面もあるが、協力対象の地域住民に配慮しながら、むしろ一転してコロナ禍の聖地の利用状況を探り、ランドマークに対する意識を明確にする。③生活美学的観点からモビリティーと聖地の関わりを深化する為、旅行記・紀行文学における移動と旅行日程・旅程の意味を分析し、聖地の立地について理解を深める。
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