研究課題/領域番号 |
19K12610
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2023) 大阪府立大学 (2019-2021) |
研究代表者 |
伊田 久美子 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 客員研究員 (20326242)
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研究分担者 |
山田 和代 滋賀大学, 経済学部, 教授 (50324562)
中原 朝子 神戸大学, 男女共同参画推進室, 政策研究職員 (50624649)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | エイジェンシー / ジェンダー / 若年女性 / 生活の質 / 貧困 / 世帯内包摂の質 / 親同居 / 家族への包摂 / 自尊感情 / 親との関係 / 就労実態 / 世帯内分析 / 依存関係 / 権力関係 / 情緒関係 / 支え合い |
研究開始時の研究の概要 |
女性の貧困は今まで母子世帯、単身世帯等に代表される「標準」世帯からの「逸脱」に注目して論じられてきたが「標準」世帯内の女性の生活実態の解明は未だ不十分である。従来研究では世帯内依存関係への包摂は貧困リスクを軽減するという考えが前提にされてきたからである。 本研究は「人間開発」概念の基礎をなすケイパビリティ・アプローチの土台を構成するエイジェンシー(Ibraham, Alkire, 2007)に着目し、日本における測定・評価方法の提案およびそれを用いた調査を通じて若年女性の生活の現状と課題の解明を目指す。特に貧困の深刻化が懸念される学歴が高卒以下の15~34歳で親や配偶者とともに暮らす女性に焦点を当てる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、 従来研究において情勢に翻弄される脆弱な存在とみなされ、政策的観点からはその行動が統制や活用の対象とされがちである若年女性が、構造的制約の下で、自らの生活に関わる決定や選択を行う自由をどれほど行使できているか、実情を明らかにすることである。ケイパビリティ・アプローチ(A Sen)において中心的な役割を果たすエイジェンシーに着目する。エイジェンシーは合理的選択をする自由な能力ではなく、構造的制約と密接な関係がある(Kabeer 2021)、構造が作り出している格差がどのようにエイジェンシーに作用しているのか、現状を明らかにすることは、格差解消に向けた重要なステップである。同時に格差を作り出す構造を変革するのは当事者のエイジェンシーであり、エイジェンシーの発揮可能性はジェンダー格差解消に向けた重要な課題のひとつである。 本研究ではKabeer(1999)に従い、エイジェンシーを「目的を自ら設定し、実現に向けて行動できる力」と定義し、Donald et al. 2020に従い、a)目標設定、(b)目標達成能力、(c)目標に対する行動の3つの側面から調査設計を行い、オンライン調査による結果の分析を報告する。調査対象は35歳未満の大卒及び高卒の男女計2000名であり、特に女性が主要な分析対象である。エイジェンシーに資源(resource)である学歴や収入、居住地がどのように関連しているかを明らかにすることにより、先進国ではあるが男女格差がきわめて大きい日本女性のエイジェンシーの特徴を明らかにすることをめざしている。 コロナによる対面研究会の不足により進捗が遅れていたが、ここまで進めてきた①ジェンダー視点からのエイジェンシー研究状況のまとめ、②先行研究調査の項目の検討をふまえ、③アンケート調査票の作成、④パイロット調査の実施と調査票の調整を行った。以上を経て、⑤11月にオンライン調査を実施し、⑥データ分析作業を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現時点での知見として、収入、学歴などの資源についても、agencyに関連する項目についても、ジェンダー格差はかなり明確であり、自己決定や自己効力感、自尊感情はいずれも男性が女性に比べて有意に高い。その一方で先行研究の知見と同様に、主観的幸福感については女性が男性より有意に高く、その背景を慎重に検討する必要がある。ジェンダー意識については男性にくらべて女性が伝統的ジェンダー規範に対して批判的な傾向が強くでている。 その上で、居住地が大都市圏か、中小都市町村かによる違いがとくに女性において顕著であることがわかった。その違いは、学齢期居住地から現在の居住地への移動の有無によってもみられ、総じて移動者の方が移動しない者に比べてagency関連項目の点数が高い傾向が見られた。 分析作業はまだ途上であり、令和6年度中の完成を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中である調査結果分析を令和6年度をめどに完成させ、知見をまとめる。若年女性の動向は以前から人口動向の観点などから政策的関心を持たれてきたが、もぱら人口減少問題解決のための手段としての関心が向けられており、女性自身の意思決定や生活の質の向上への関心は希薄であると思われる。そうした女性自身の意思と生活への関心の欠如が結局は有効な政策提言を阻害しているのではないかと考える。本調査研究はこうした状況に対して新たな知見と視覚を提供することをめざしている。コロナにより進捗が大幅に遅れているが、令和6年度を最終年度として報告をまとめ、学会等における知見の発表をめざしている。
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