研究課題
基盤研究(C)
Si(111)7×7再構成表面の構造を全反射高速陽電子回折(TRHEPD)を用いて解析する。TRHEPDは,原子座標の3成分を独立に解析することができ,しかも、最表面から順に数原子層までのプローブ深さを視射角で調節して測定できる強力な手法である。まず00回折スポット強度の視射角依存性を「一波条件」と呼ばれる条件で測定し,表面に垂直な座標解析用のデータを得る。次に[-110]方位の周りと[11-2] 方位の周りで00スポット強度の方位角依存性を測定し,面内の2座標解析用のデータを得る。このときプローブ深さを視射角で調節する。最後に各測定結果を動力学的回折理論で解析して各原子の座標を決定する。
本研究では、最表面近傍の原子座標を高精度に決定できる全反射高速陽電子回折(TRHEPD、トレプト)を利用してSi(111) 7×7 再構成表面の構造を解析した。ノイズを低減するためのチャンバーの改良を行った。自動的な解析法を開発した。さらに再構成表面の超構造からの回折スポットが重なっているデータを解析するための方法も開発した。得られたデータから、これまでに提案されている2つの基本的なモデルを比較し、いわゆるDASモデルが正しいことを確認した。引き続いて、DASモデルの中でこれまで報告されてきた原子座標の正しさを調べ、再構成されたすべての原子の3次元座標のTRHEPDによる決定を行う。
物質表面の特性や機能は構成原子の種類と配列で決まるので、構造(原子配列)決定は表面研究に不可欠である。高性能半導体素子や先端的触媒においては、最表面の活用がますます盛んになっており、材料製造過程において表面の原子配列の制御が注目されつつある。TRHEPDは、様々な手段のなかでも、最表面から4原子層までに感度が高く、再構成表面の原子座標を3次元的に決定するには最適である。第一原理計算で測定されたデータを再現するのではなく、第一原理計算に頼らず、むしろ、それとつきあわせるための実験データを与える回折による構造解析法の中でも、表面感度の高いTRHEPDの利用は今後ますます重要になると思われる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (39件) (うち国際学会 7件、 招待講演 9件) 備考 (2件)
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