研究実績の概要 |
本研究では、10GPa級の超高圧下で単結晶中性子回折(構造、磁性)と電気分極を同時測定するための技術の確立を目的とする。さらに、省エネルギー記録素子 等の機能性材料としての応用も期待されているMn系マルチフェロイック物質にこれを応用する。未知の圧力誘起強誘電強磁性相を創生し、電気磁気交差相関性を 精密に検証することを目指す。 超高圧力の発生は、代表者が開発した中性子回折用対向ハイブリッドアンビル式高圧セル(HAC)を使用して行う。また、単結晶中性子回折実験については、JRR-3ビームホールT2-4ビームポートに設置された三軸型中性子分光器TAS-2を主に使用する。令和4年度は、本研究対象試料であるマルチフェロイック物質TbMn2O5の約0.6mm×0.6mm×厚さ0.2mmの微小単結晶試料について、5.0GPaまでの低温高圧力下中性子回折実験を実施し、明瞭な磁気反射シグナルの観測に成功した。その結果、低圧側で観測された(1/2+δx, 0,1/4+δz)の2次元格子非整合磁気秩序相(2DICM相)などが消失して格子整合磁気秩序相(ICM相)となり、それが加圧とともに(1/2,0,1/4)->(1/2,0,1/3)->(1/2,0,1/2)と変化することが明らかになった。ただし、4GPa付近まで最低温で(1/2,0,1/3+δz)の1DICM相が残るなど、単純ではない。令和5年度でにおいて、より高圧まで測定領域を広げること、および圧力変化をより詳細に測定することで、温度-圧力相図を完成させる。
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