研究課題/領域番号 |
19K12720
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90020:図書館情報学および人文社会情報学関連
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研究機関 | 尚美学園大学 |
研究代表者 |
樫村 雅章 尚美学園大学, 芸術情報学部, 教授(移行) (00338211)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2019年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 初期印刷本 / 人工知能 / 文字認識 / 貴重書デジタル化 / デジタル書物学 / 書誌学 |
研究開始時の研究の概要 |
西洋の初期印刷本のデジタル画像を利用した書誌学的研究を推進するための環境の整備に資することを目的として、近年実用化が急速に進んでいる人工知能(AI)の技術を、初期印刷本の文字を対象とする研究に取り入れることを意図した現状調査や試用を行い、得られた知見公開していく。また、現在入手が可能な初期印刷本のデジタル画像の品質などの状況を調査し、ここ数年例が増えている文系研究者による閲覧室での資料撮影による画像や撮影の際の環境の実態を把握して、よりよい画像を取得するための手引きとなるような情報の提供を行う。
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研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症の流行による教育研究活動への深刻な影響が本年度はようやく縮小し、年度の半ば以降は本研究のために時間を確保できるようになった。また、昨年度卒業研究を指導した学生が大学院に進学して研究協力者として活動に加わり、画像処理やAIの構築などをはじめとする作業を分担して進める体制が整った。これまでも、この学生とともにAI(人工知能)の技術を初期印刷本の活字認識に応用したシステムを独自に開発する取り組みを行ってきたが、急速に進むAIの実用化の現状や、本研究の本来の目的が文系研究者による初期印刷本の書誌学的研究の推進の支援であることを考慮し、本年度は誰もが利用できるクラウドサービスやツールを効果的に活用する方法の模索にも力を入れてきた。具体的には、深層学習を用いた文字認識サービスTranskribusや、AIによるくずし字認識のためのアプリMiwoとWebサービスKuroNetの状況把握や試用、オープンソースの文字認識アプリケーションTesseract-OCRのカスタマイズや文字認識エンジンの応用の方法などについての調査や試行を実施した。こうした活動の一部について、年度末に研究協力者の大学院生による学会発表を行った。一方、貴重書画像の品質の評価に関しては、IIIFに準拠したAPIを利用して図書館から取得した画像や、初期印刷本の研究者自身が図書館の閲覧室で撮影し提供を受けた画像、以前より所持していた初期印刷本の零葉からフラットベッドスキャナで取得した画像などの観察や比較を行った。また、閲覧室における撮影環境の調査に向けて、分光照度計の実機の試用を行った。本年度は多くの知見を得ることができたが、当初計画していた形での情報公開や具体的な研究支援にはまだ至っていないため、補助事業期間延長の最終年限となる来年度中にそれらを実現できるよう、活動を強化していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
過去3年以上にわたって新型コロナウイルス感染症の流行が社会情勢に悪影響を及ぼし続け、その間、授業のオンライン化や感染者対応など、教育分野や組織運営の任務を優先的に遂行する必要が生じて、本研究に時間を充てるのが困難になっていた。また、行動規制や感染への不安から、旅行を伴う現地調査の計画や実施ができなかった。状況が改善し、本年度半ば頃までに研究活動を推進するための環境が整ってきたが、それまでの大きな遅れを挽回するのに時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度になって時間の確保が可能となり、さらに大学院生が研究に加わって、本研究の活動を進めるための体制を整えられてはきたが、補助事業期間延長の最終年限となる来年度の1年間でこれまでの大きな遅れをすべて挽回するというのは極めて困難である。また、研究活動を再開できたところ、本研究を計画した時点から5年以上が経過する間に多分野でAIの実用化が大きく進展したことや、現地調査のために海外の図書館を訪問することが自分にとって以前ほど容易ではなくなっているといった状況の変化もあって、計画に実現できない部分があったり、実現する意味や価値も変わってきていることを認識した。昨年度までも、研究の全体像の見直しが必須であると考えてはきたが、本年度中の活動で得た知見や感触を踏まえて、いま着手できていることを補助事業期間の終了までにどこまで進められるかや、成果をどのように公開していけるかなどを改めて検討して目標を立てなおし、初期印刷本のデジタル画像を利用した書誌学的研究を推進するための環境の整備につながる活動を展開していきたい。そしてさらに、これから導入や購入を行うデジタルカメラ類や分光照度計、測色器などの機材や初期印刷本の零葉などの資料は、来年度中に活用して成果につなげるばかりでなく、補助事業期間が終了する来年度末以降に本研究の活動をさらに発展させることにも役立てていきたいと考えている。
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