研究課題/領域番号 |
19K12727
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
赤間 啓之 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (60242301)
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研究分担者 |
粟津 俊二 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (00342684)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 文理解 / 脳科学 / fMRI / 計算神経言語学 / 機能的連結性 / 機械学習 / 深層学習 |
研究開始時の研究の概要 |
脳のfMRI賦活情報から言語思考を予測する機械学習は、単語や単純な文に関しては可能であり、個人内では高度に有意な精度が得られている。しかし、1)個人差の克服と個人間モデリング、2)より複雑な文・文章への適用という面では課題が多い。本研究では個人プロファイルやメタ分析からの情報も入れて、特定の個人の脳内における意味理解の機微を計算可能なものとする。これは意味障害など言語疾患の症例理解にも重要な知見を与えるかもしれず、脳認知科学に新たな貢献をもたらしうる。将来的には、脳外科手術において影響を受ける言語機能も語用レベルで細かく推定できるようになる可能性を秘めている。
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研究実績の概要 |
研究代表者の研究室において、脳の機能的磁気共鳴画像法(fMRI)のデータを深層学習にかける方法の開発を進めることができた。未査読プレプリントではあるが、島根大医学部の協力により脳の血流動態反応の同調的賦活から構成される機能的連結性を計算し、そこから参加者の年齢を推定するリカレント深層ニューラルネットワークモデルを提案、刊行することができた。すなわち年齢予測の難易度が高い、主に高齢者を対象とした日本の「脳ドック」サービスの安静時の機能的連結性データを用い、年齢予測モデリングを行った結果、データ抽出方法、深層学習アルゴリズム、脳アトラスを変更したあらゆるタイプの方法論から、頑健かつ高度に有意な相関が得られた。年齢予測は、モデル化の達成度に差はあるものの、固有機能結合ネットワークに基づくごく少数の領域のみでも成功した点が特筆できる。 また同じく脳の機能的連結性関係では、Neuroscience Research 誌に共著で発表した論文の中で、Human Connectome Project (HCP)と睡眠時データセットに統合情報理論(IIT)を適用し、人間の意識の神経基盤を、実行制御、顕著性、背側/腹側注意などの主要な脳機能ネットワークからなるグローバルな相互接続構造に見出した。さらにHeliyon誌論文では、消費者脳科学において、賦活尤度推定(ALE)という手法に基づくメタ分析を行い、特にメタ分析的連結性モデリング(MACM)を駆使して、ブランドエクイティ(ブランド資産価値評価)の脳における神経基盤を明らかにした。これは、脳神経認知科学の分野に本研究のテーマである機能的ネットワークを導入した成功例であり、Neuromarketing Yearbook 2021の受賞に続き、Neuromarketing Yearbook 2023の受賞も決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ禍により、当初予定したヒトを対象とする脳機能画像撮像(fMRI)実験が行えなくなり、研究手法を変更することを余儀なくされた。しかし、ネットで全世界的に公開されている脳MRIデータを活用したり、他機関(島根大医学部)と共同研究計画を締結しデータシェアリングにより病院の脳ドックのデータを利用できたりして、本研究計画段階から構想していたデータの解析、アルゴリズムの開発では予想以上の大きな進捗があった。これらの手法はここ数年、世界的にも広く行われているアプローチであり、同時に多種多様かつ大規模なデータ処理を行うため、研究構想の段階ですでに用意されていたスーパーコンピュータの活用が必要であった。そのため東京工業大学のTSUBAME3.0を大いに活用、あるいは本研究室のワークステーションをフルに稼働させたりして、満足のいく結果が得られた。そして、計算技術の向上が得られ、直接実施される実験以外は、当初の構想通りの成果が上がり、また多種のデータセットを次々に利用し、計算にかけることで、予定より多くの数の論文が完成、出版され、また現段階では、査読中、あるいは投稿準備中である。残りの成果についてはまだ査読中のものが3本、投稿予定のものが3本残っている。特に、本研究の核心となる言語活動と関係する機能的連結性データの機械学習・深層学習に関しては、代表論文となりうる無意識の言語処理モデルに関する研究は現在査読中である。残り1年であり、査読中のものは公刊にたどり着ける可能性が高いが、その他については、チャレンジングな内容で査読に時間がかかることも予想され、そうした点を考慮し、近年注目を集める公開事後査読のシステムを取るオンライン学術雑誌に投稿する可能性も考慮している。そうした点を鑑み、おおむね順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今回の作成対象年度が研究計画の最終年度である。
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