研究課題
基盤研究(C)
アルツハイマー病(AD)と前頭側頭型変性症(FTLD)では、初期の臨床症状として時間認知の障害に関連した症状が特徴的に生じることが知られている。しかしAD、FTLDの時間認知に関する研究は数少ない。本研究では、AD例、FTLD例、および健常高齢者の時間認知能力とその能力に関連する神経基盤を比較検討し、① 正常加齢と病的加齢の違い、② AD例とFTLD例の違い、を明らかにすることで、最終的には時間認知障害の背景にある認知的・神経学的基盤の解明を目指す。
アルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease: AD)と前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia: FTD)は、脳の異なる部位に萎縮が生じる神経変性疾患である。ADはエピソード記憶障害、FTDは言語障害や行動障害が前景に立つことをそれぞれ特徴とする。一方、両疾患とも初期の臨床症状として、時間認知に関連した障害が生じることが指摘されている。本研究では、ADとFTDの時間認知障害の特徴と、その背景にある神経基盤を明らかにすることを目指した。今年度は、時間認知課題の課題条件や刺激の調整をおこない、実験プログラムを完成させた。具体的には、課題条件として時間推定条件とコントロール条件を設定した。両条件ともにパソコン画面上に円を呈示し、その円の上を1つのドットが移動して一周するタイミングでボタンを押すことを求めた。時間推定条件ではドットが移動している途中で円を消すことで、ドット移動の所要時間の推定が必要となる設定とした。一方、コントロール条件では円が消えない設定とした。課題作成にあたっては、認知症を呈する患者でも課題意図が直感的に理解しやすく、言語能力に極力依存しない課題となるように配慮し、試行を繰り返して完成に至った。加えて、認知機能検査の後方視的データを用いて、ADとFTDを呈する患者について、時間および場所の見当識(今日が何年何月何日か、いま居る場所はどこか)をたずねる項目における成績の違いと、その経年変化について検討した。
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